かけがえのない命奪うPCR検査妨害の罪 -植草一秀
メディアゴン / 2020年4月26日 19時32分
植草一秀[経済評論家]
***
女優の岡江久美子さんがコロナウイルスによって亡くなられた。謹んで哀悼の意を表したい。発熱があったが待機を命じられたという。その間に容態が急変して急逝された。
安倍内閣のPCR検査妨害が重大な惨禍を招いている。この事実を指摘すると御用人が大挙して批判を浴びせる。愚かなことだ。
安倍内閣の最大の誤りはPCR検査妨害を実行し続けていること。専門家会議は「クラスター対策」という破綻が明白な対応に固執している。失敗が明らかであるのに方向転換しないことが悲劇を拡大する。能力のないリーダーに率いられて被害を蒙るのは罪なき市民である。「専門家会議」とは「利権漁りと愚策立案の専門家」会議なのだろう。何の専門であるかを明記するべきだ。
PCR検査を徹底強化することの目的は二つ。
第一は感染者を特定・隔離することによって感染拡大を防ぐ
第二は高齢者や基礎疾患等を有する者が感染すると重篤化リスクが高いことを踏まえ、こうした人々の感染を早期発見すること。
国民の命と健康を守ることを優先するならPCR検査を抑制するという判断が生まれるわけがない。
私は2月24日付ブログ記事「安倍内閣が人の命より重視しているもの」に次のように記述した。
「新型コロナウイルスの日本国内での感染が拡大している。国内での感染者数発表値が抑制されている最大の原因は安倍内閣がPCR検査実施を抑制しているからと考えられる。感染の疑いがある人が医療機関でPCR検査を求めても、検査を拒絶するケースが多数存在する。検査を実施して陽性反応を確認しない限り、感染者数にカウントされない。感染者数の発表値を抑制するためにPCR検査を実施しない方針が採られている可能性がある。本末転倒だ。検査が実施され、感染が確認されなければ感染者の行動を制限できない。検査を受けられず、感染が確認されなかった感染者が各地を旅行して感染が拡大する。検査を広範に実施して、感染を早期に特定できれば、感染者の行動を制限できる。」
「中国の疾病予防センターで対策に当たっているチームは、2月11日までに新型コロナウイルスへの感染が確認された4万4672人について分析したデータを発表した。発表によると、感染者のうち軽症が80.9%、重い肺炎や呼吸困難など重症が13.8%、呼吸器の不全や敗血症、多臓器不全など命に関わる重篤な症状だったのが4.7%だった。」
「全体の致死率は2.3%だが80代以上では14.8%であったほか、心臓など循環器に持病がある人の致死率は10.5%だった。軽症の比率が8割ではあるが、重症、重篤な状況に陥る確率が2割もある。とりわけ、高齢者と心臓などに疾患のある人の致死率は高い。国内でも20代女性が重篤な状態にあることが報じられており、軽く見ることは許されない。」
「高齢者や心臓疾患などを有する者、乳幼児への感染を防止するための最大の努力が払われなければならない。いま必要な対応が三つある。第一は、検査態勢の拡充だ。第二は、徹底的な情報開示だ。第三は、高齢者、各種既往症のある人、乳幼児、低年齢者へのケアである。医療機関において感染が拡大する恐れも高い。院内における消毒対応の徹底も強く求められる。」
民間検査機関を活用すればPCR検査を一気に拡大できる。しかし、加藤勝信厚労相はPCR検査を感染研-地方衛生研-保健所-厚労省の検査利権ムラで独占することを優先した。同時に検査抑制は感染者数を少なく見せるための方策でもあった。厚労省、厚労相、利権と愚策の専門家会議は、まさに「国民の命よりも自分たちの利益」を優先している。
このために多くの罪なき市民が犠牲にされている。
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