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<加藤厚労相の言葉>言い訳だけの政治家は人を救えない

メディアゴン / 2020年5月8日 20時56分

<加藤厚労相の言葉>言い訳だけの政治家は人を救えない

両角敏明[元テレビプロデューサー]

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安倍総理大臣は加藤勝信厚生労働大臣を罷免すべきです。加藤厚生労働大臣はこれまでの不作為と能力不足を謝罪し、議員辞職すべきです。

5月5日こどもの日、BS-フジ「プライムニュース」に出演した加藤勝信厚生労働大臣はPCR検査の目詰まりのひとつと言われる「37.5℃/4日以上」の相談ルールについて以下のように弁明しました。加藤トークは冗長ですががまんして読んでいただきたい。

「我々が作ったのは37.5℃を超えて4日間たったら必ず行ってください、そこはカットラインではなくて、例えばこのくらいの風邪なら大丈夫だよと言って3日4日たってしまう。でも今回はコロナウィルス感染がありますから強い倦怠感があれば待たずに行ってください、高齢者はなおさらですと申し上げてきたんですが、それがどこかでカットラインになってしまった。そうじゃないんですとさんざん言ってきたんですけど、なかなか我々の努力不足で浸透していなかったということがあります。」

加藤勝信厚労相の言葉はイリュージョンです。聞いているとふわーっと音が通り過ぎ、語られた内容、その痕跡すらも空中に消えて行きます。もっともらしい長広舌を読み返してみれば、それは出来ないことの言い訳にすぎないことがわかります。そして「どこかでカットラインになってしまった」という言い訳はウソです。3月に50代の父親を失ったご家族の言葉がそれを言い表しています。

『もしあの時すぐに検査をして入院ができていれば・・・どこかの偉い人たちが一生懸命考えた基準によって父や家族は犠牲になっている』 (TBS Nスタより)

2月17日に厚労省は都道府県や保健所に「37.5℃/4日以上」という「相談の目安」を通知します。これにより、基本的にこの条件を満たさなければ相談センター(保健所)へ相談することもできなくなりました。相談センター側は「37.5℃/4日以上」ルールに加え、厚労省通知により基礎疾患や重症化の怖れ、肺炎の兆候などを勘案して相談者を絞ります。結果として厚労省通知によるカットラインをクリア出来るのはきわめてわずかな相談者だけになります。

発熱者のほとんどがはじかれる事態に批判の声が高まり国会も加藤厚労相にせまりました。そのたびに加藤厚労相は長広舌のイリュージョン答弁でその場逃れをくり返してきました。言い訳で状況は変わりません。相談センターへの電話がつながらない、お母さんとお子さんが高熱が続いてもPCR検査をしてもらえない、などという声が溢れると、3月中旬、加藤厚労相は新たな通知を出したと釈明します。しかし「37.5℃/4日以上」ルールは放置、変わらぬ事態に怨嗟の声がますます高まります。そして4月下旬から使い始めた新たな言い訳が冒頭の「いつの間にかカットライン」という「国民の誤解」論法です。加藤厚労相はこの屁理屈を5月5日のBS-フジまで使いながら、その舌の根も乾かぬ翌朝、「37.5℃/4日以上」の相談ルールを見直す、と表明しました。謝罪もせずに、どのツラ下げて、です。

見直すのは結構です。ですがこれまでの長い月日、強い強い国民の批判にもかかわらず加藤厚労相はただ言い訳をくりかえし、命にかかわる重大な誤りを放置しました。行政に瑕疵はあります。ある程度の許容範囲を持たなければ官僚は仕事が出来ますまい。しかし空疎な言い訳をくり返し、長期間の不作為により多くの重症化や命を落とす国民を生んだ大臣の責任はきわめて深刻です。ある開業医はテレビで「傷害あるいは殺人と言いたくなるような・・・」と表現しました。加藤大臣が責任から逃れることなど許されようもありません。

加藤厚労相の非はこれだけではありません。羽鳥真一モーニングショーでジャーナリストの青木理氏は2ヶ月半たってもPCR検査を増やせない政府を「無能と言うしかない」と断じました。まさに加藤厚労相こそ無能と言うべき状況が続いているのです。

[参考]<安倍首相、腹を括くって戦え>コロナに強権も忖度も通用しない

1月半ばに最初の日本人感染者が現れて以来4ヶ月です。この間、クルーズ船対応では初動に遅れ、3000人を船内に留め置きます。厚労省は1日に100件程度のPCR検査しかできず、船外隔離施設の確保も出来ませんでした。結果船内集団感染により多くの方が亡くなります。この過程で、加藤厚労相が行政能力、政治力を発揮することはありませんでした。

感染が市中に拡がっても、今もって市中感染率の調査すらできずにいます。2月末に安倍総理が「かかりつけ医が必要と考える場合はすべての皆さんがPCR検査を受ける能力を確保する」と意気込んだものの、加藤厚労相は総理の指示を実現できていません。

4月6日、総理が「PCR検査能力を現在の倍の2万件に増やす」と踏み込むも、これも実現できていません。そればかりか、なんと加藤厚労相はバカなことを言い出します。「処理能力を2万件に拡充するが2万件検査するとは言っていない」(国会4月30日)まさにごはん論法の権化らしい言い逃れですが、これは安倍総理の顔に泥を塗り、そもそも2万件の検査をしないなら、なんで能力を2万件に増やすのか、と非難を浴びます。

PCR検査については、検体採取用綿棒、遺伝子抽出試薬、遺伝子増幅器、検体採取要員、運搬スタッフ、検査技師、保健所職員など、今もってありとあらゆるものが不足していると言われ、厚労相はどれも解決できていません。この状況下、安倍総理は会見で「PCRに本気で取り組んでいるのか」と厳しい質問を直に浴びて前代未聞の赤っ恥を曝しました。

さらに京大IPS細胞研究所の山中伸弥教授は安倍総理出演のネット番組で、全国の大学や研究機関には多くのPCR検査機器やスタッフが存在し、総力を結集すれば総理の言う2万件はおろか10万件の検査も可能と発言しました。日本には大量PCR検査が可能な全自動検査機が数千台あり、これが活用されていないのです。理由は、旗振り役がいないから。厚労大臣が旗を振らずにいったい誰が振るのでしょうか。

PCR検査ばかりではありません。加藤厚労相はマスクはおろか、医療機関に十分な医療防護具を用意することも出来ません。そればかりか3月はじめに専門家会議が必死に訴えた保健所財政、人員体制の強化も実現できず、空き病床確保目標も未達成です。その補完策である宿泊療養施設に関する方針も最初は自宅療養に積極的で腰が定まらず二転三転、結果自宅療養が増えてしまう状態です。

人工心肺、エクモなどの器具も操作する人員も不足のまま。担務の休業補償助成金は中身も悪評なら煩雑な手続きに非難囂々。あげくの果てに地方自治体との意思疎通も改善できず、基本中の基本データである陽性率をはじめPCR検査結果の即日集約もできていないと指摘されるに至っては、いったい厚労省は何が出来るの?状態です。加藤大臣は地方に責任、と言いたげですが、責任があるのは加藤厚労大臣です。

感染症により、残念ながらたくさんの尊い命を失い、今も重症に苦しむ方々がおられます。それでも私たちは欧米のような爆発的感染からは逃れています。これは日本政府が国民を救っているのではなく、日本国民が政府を救っているような気がします。1月以来、政府の醜態を見せつけられてはそうとしか思えません。

しかし必ずやってくる次の感染拡大には、国民の力だけでなく、政府や政治家に力がなければあまりに危険です。いま司令塔不在の日本では厚生労働大臣の力量が重大な鍵となります。言葉のイリュージョニストにすぎない加藤勝信氏にその力がないことはこの数ヶ月の振る舞いや実績で明らかです。

台湾には衛生福利部長(厚労大臣相当)の陳時中氏という司令塔がいます。彼は全権をもって素早く大胆で合理的な施策を尽くし、記者の質問がすべて終わるまで毎日説明を尽くして国民の信頼を得ていると言いいます。

韓国では政府・中央防疫対策本部長の鄭銀敬(チョン・ウンギョン)氏が司令塔としてITを駆使し、大量のPCR検査を実施するなど、国民から強い信任を得ています。彼女は髪を洗う時間を惜しんで短くカット、白髪も染めず、何時間寝ているかという記者の問いに「1時間は寝ている」と答えたと言います。

もし安倍総理大臣が対策に本気になっておらず、加藤氏が罷免されないのなら、加藤氏ご自身でご自分を大臣の座から消し去るイリュージョンをお願いします。そして、代わりに司令塔にふさわしい人物を舞台上に出現させていただきたい。切にそう願います。

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