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NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の脚本はやはりすばらしい

メディアゴン / 2020年5月16日 11時5分

NHK連続テレビ小説「ひよっこ」の脚本はやはりすばらしい

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

***

再放送中の2017年度上半期放送のNHK連続テレビ小説『ひよっこ』の脚本がすばらしい。

作者は岡田惠和(おかだよしかず)さん。1959年生まれだから筆者の4歳下である。もちろんシナリオライターとしてすでに一家を成した方だから、筆者のような同業者(笑いが主のコント作家である筆者を同業者と言うのはおこがましい?)に、褒められてもちっとも嬉しくないかも知れない。

しかも、3年前の作品である。だが声を大にして褒めたい。筆者もこういう台本をコントで書きたかった。(今は書く体力も才能も枯渇してしまったが・・・)

コロナ禍で、家に居るので『ひよっこ』の夕方再放送を毎日見ているが、嵌まってしまった。見逃せない。とくに、5月11日(月)の回は見事だった。

舞台は昭和41年(1966年)頃の赤坂の洋食屋、すずふり亭とその裏にあるあかね荘。赤坂には、こういう洋食屋がたくさんあった。「蜜蜂」「エリート」ちょっと高級なのは「いそむら」今もある「津々井」etc.一ツ木通りから、一本裏に入って乃木坂・六本木の方に向かえばあかね荘のような木造アパートも目立った。あこがれの住処だった。今は東京ミッドタウンになってしまった。

[参考]放送作家も思わず笑った「蛭子能収がクズ」な理由

すずふり亭のホール係、谷田部みね子(有村架純)は、同じあかね荘住民の島谷純一郎と両思いになったばかりである。佐賀で代々製薬業を営む大企業「島谷製薬」社長の長男。経済学部で、ゲーム理論(新しい!)を勉強する慶応ボーイである。

ふたりの淡い恋模様に住民達の姿がシンクロする。島谷は一生懸命自分の学問の話をするが、みね子には理解不能である。「分からない」と心の声が飛ぶ。

「分からない」声を飛ばしたのは、みね子の幼馴染で同級生の助川時子(佐久間由衣)の稽古でのカットバック。女優目指して小劇団に所属している。理念ばかりのこんなアングラ劇団も無数にあった。目指すはつかこうへいか、早稲田小劇場か。そのワセショウの大スター白石加代子があかね荘の管理人立花富を演じる。富は元赤坂芸者だが、筆者はTBSの社長の道楽で放送していた「赤坂踊り」のADだった。

あかね荘3号室の住人で、漫画家志望の青年は、坪内祐二(浅香航大)と、新田啓輔(岡山天音)。漫画家・藤子不二雄に憧れて、富山県高岡市から上京。つぼ田つぼ助としてコンビを組んで、マンガを書いている。もちろん売れないが、目を付けたのはみね子の恋愛物語を原作とすることであった。つぼ田つぼ助はみね子に頼む「がんばって下さい。ハッピーエンドにして下さい」裏を知らないみね子は訳が分からない。

同じあかね荘の住人が有楽町のオフィスレディ、久坂早苗(シシド・カフカ)こんなキャリアウーマンの走りがいたいた。全共闘運動の流れで、「女性は男の奴隷ではない」と主張するウーマンリブ。学園祭の定番ミス・コンテストを男が女性を美醜で評価するのは女性差別だとして、中止に追い込んだりした。今はフェミニズムとかジェンダーとか言うのか。

みね子と島谷の2ショットシーンに流れる曲は和田弘とマヒナスターズ&田代美代子のデュエット「愛して愛して愛しちゃったのよ」はの楽曲。1965年のヒット曲である。

これだけの要素を詰め込んで、破綻がない。改めてすばらしい脚本である。

因みにオープニングタイトルに登場するピンクと赤のバスは筆者のふるさと山形交通(現・ヤマコー)のボンネットバス。いまも動態保存されている。ちょっぴりふるさと自慢。

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