必達目標は法改悪と黒川検事総長阻止 -植草一秀
メディアゴン / 2020年5月16日 10時42分
植草一秀[経済評論家]
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「#検察庁法改正案に抗議します」
多くの人々が声を上げている。コロナで国民が危機に直面するなか、安倍内閣が審議を強行している。まさに不要不急の法案提出だ。
野党が欠席する中、自民党は来週中の衆院通過を目指している。委員会採決を強行する構えだ。安倍内閣が法案採決を強行するなら崩壊の序章になるだろう。検察庁法改定案は、黒川博務東京高検検事長を恣意的に検事総長に引き上げるための法案だ。本年1月、黒川弘務東京高検検事長の勤務延長が閣議決定で決まった。
黒川氏は本年2月7日に定年を迎えて退職することになっていた。ところが、安倍内閣は閣議で黒川氏の定年延長(勤務延長)を決定した。これは国家公務員法の特別規定を活用したもの。しかし、検察官には国家公務員法の定年延長規定は適用されないという過去の政府答弁が存在した。安倍内閣はこの規定を知らずに閣議決定した疑いが濃厚だ。この矛盾が指摘されると、安倍内閣は解釈変更を口頭決裁したと、誰もが分かるウソで切り抜けてきた。
「息を吐くようにウソをつく」安倍内閣ならではの対応だ。
現在の稲田伸夫検事総長は本年7月に就任2年を迎える。稲田氏が慣例通り2年で退官すれば黒川氏を検事総長に引き上げることができる。黒川氏を恣意的に検事総長に引き上げるために1月の脱法勤務延長が決定されたと見られている。黒川氏は森友・加計事案が捜査されていたときの法務事務次官である。虚偽公文書作成、背任などの重大犯罪で財務省、近畿財務局が刑事告発された。
事実は明らかであり、証拠も十分に揃っている。安倍内閣の巨大犯罪として立件することが検察の責務だったが、検察はすべての事案を無罪放免にした。検察審査会に審査が申し立てられたが検察審査会も強制起訴しなかった。検察審査会の運用も恣意的なものである。
これらの不正において安倍内閣の守護神として行動してきたのが黒川弘務氏であると見られている。安倍内閣は黒川氏を検事総長に引き上げることによって、安倍内閣のすべての犯罪行為をもみ消す体制をより強固なものにしようとしている。検察庁法改定案は恣意的に決定された黒川氏の勤務延長という脱法行為を事後的に合法化するためのものである。
安倍内閣が提出した法案は、検察官の定年を一律で65歳に引き上げるとともに、63歳になったら検事長・次長検事・検事正などの幹部には就けない役職定年制を導入するのに加えて、定年を迎えても、内閣や法相が必要と認めれば、最長で3年間、そのポストにとどまれるとするもの。ただし、法の施行日は2022年4月とされている。この法律を通してしまえば、黒川氏に対する超法規的な勤務延長が事後的には法律に沿うものとなる。事後的なアリバイ工作だ。
この考えに基づいて法改定が画策されている。
現在の稲田伸夫検事総長が65歳の定年を迎えるのは2021年。稲田氏が7月に検事総長を退官しなければ、8月まで定年延長された黒川氏は検事総長に就任することができない。恣意的な人事に抵抗して稲田氏が検事総長を退任しないという選択肢は残されている。しかし、その場合には新法を念頭に置いて、再度、黒川氏の勤務延長が行われる可能性が高い。
法改定はこの可能性を視野に入れたものだ。勤務再延長を正当化するために法改定が強行されようとしている。最大の問題は内閣が検察の行動を支配しようとしていること。検察は行政機関であるが、現職の総理大臣であっても犯罪を摘発し、立件する責務を負う。検察が名実ともに政治権力の支配下に置かれれば、もはや検察の機能発揮はあり得ないことになる。コロナのどさくさに紛れて、このような悪法制定を強行しようとしていることが問題なのだ。
検察が適正に機能していれば安倍内閣などとっくの昔に消滅している。甘利明氏、下村博文氏、森友、加計、桜など、すべてが重大犯罪として摘発されているべき事案だ。刑事司法の不当支配が、安倍内閣が不当に存続している最大の理由である。黒川氏を不自然に勤務延長させたことで、この事実に対する国民の認識が一気に広がり始めている。
安倍自民党は廃案に応じるべきだ。採決を強行する場合には野党は物理的に徹底的な抵抗を示すべきだ。安倍内閣が強行突破しようとするなら日本の主権者はこの内閣の即時打倒に向けて蹶起しなければならない。
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