意味がまったく不明の東京アラート -植草一秀
メディアゴン / 2020年6月17日 22時9分
植草一秀[経済評論家]
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新型コロナウイルスの新規感染者数が東京で拡大傾向を示している。感染と感染確認の間に約2週間のタイムラグがあるとされる。
4月7日に発出された緊急事態宣言。5月14日、21日、25日と段階的に解除されてきた。東京都の解除は最後のタイミングの5月25日だった。東京都はこのなかで6月2日に「東京アラート」を発令してレインボーブリッジや東京都庁を赤く照らした。その「東京アラート」が6月11日で解除され、6月19日からは営業自粛要請もほぼ解除される。緊急事態宣言の解除に伴い、人々の行動抑制が緩和されている。最近になって観測されている新規感染者数の増加は、その結果であると考えられる。
6月14日の東京都の新規感染確認者数は47人になった。行動抑制緩和の影響で新規感染者数が再び増加傾向を示している。それにもかかわらず、東京都は「東京アラート」解除、営業自粛要請解除を推進している。小池百合子氏のパフォーマンスに市民が振り回されている。
感染拡大抑止が必要であるなら、人々は行動を抑制する。人々が自らの行動を決定する際の参考データが提示されることは重要なこと。しかし、そのデータ提供は客観的なものである必要があるし、行動に関する指針は科学的根拠に裏付けられたものであることが求められる。とりわけ事業活動に対する行動指針は人々の所得環境に直結する重大な問題だ。営業自粛が長期化すれば所得を得られないだけでなく、各種経費が収入を上回り、事業の赤字状態が発生、長期化する。企業は倒産に追い込まれ、従業員は職を失い、生活の基盤を失うことになる。行政当局の安易な対応は許されない。
しかし、一方で感染拡大が深刻化すれば、多くの人命が失われる。医療体制が患者の増加に追い付かなければ、適切な医療が行われないという医療崩壊が発生してしまう。したがって、政府には感染拡大を防ぐために必要な措置を講じることが求められている。感染抑止と経済活動維持のバランスを適正に保つことが求められている。このような困難な事態に直面するなかで適正な行政運営を行うには、施策の正当性、客観性、合理性が強く求められる。
ところが、安倍内閣と小池都知事によるコロナ対策は「でたらめ対策」としか言いようのないものである。公権力の行使にあたっては、その権力が国民の厳粛な信託によるものであることを十分に踏まえることが必要不可欠だ。憲法が保障する基本的人権を侵害しない範囲内で慎重に行政を運営することが求められる。為政者が十分な根拠もなく、思い付きに近いかたちで主権者の行動を制限する、あるいは主権者に特定の行動を強制することは許されない。
そもそも、1月末には中国で新型コロナウイルス感染拡大が深刻な問題になっていた。近年、訪日外国人が激増してきたが、最大の訪日者は中国人である。安倍首相は中国でコロナウイルス感染拡大が深刻化するなかで、春節の休暇を利用しての中国人の訪日を要請した。日本でのコロナウイルス感染拡大を促進する対応を示していたのだ。ダイヤモンド・プリンセスの悲劇は安倍内閣の対応失敗がもたらした惨事である。
このときから指摘されてきたのが検査妨害の弊害だ。検査を実施しなければ感染の実態を掴めない。感染症対策の基本の基本を、安倍内閣はおろそかにし続けてきた。五輪開催強行と検査利権ムラの利権を守ることが優先され続けてきた。日本のコロナ対応は約2ヵ月遅れたと言える。
2月24日に専門家会議が提言を示し「瀬戸際の2週間」の言葉が使われた。この言葉は4週間以上にわたって使われ続けたが、この間に唐突な全国小中高の一斉急行要請も出された。しかし、3月19日の専門家会議を受けて、安倍内閣は全国小中高の学校再開を宣言した。人々の行動抑制は緩和され、再び感染者数の拡大が確認された。
この時点で安倍首相と小池都知事は五輪の20年7月開催をなお強行する構えだった。3月24日に東京五輪延期が正式に決定され、小池都知事は突然「感染爆発重大局面」と言い始めた。小池都知事は風見鶏のように朝令暮改を繰り返してきた。
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