矛盾だらけ菅義偉内閣の終焉は近い -植草一秀
メディアゴン / 2020年11月27日 2時19分
植草一秀[経済評論家]
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菅内閣は新型コロナ感染症の感染拡大を推進している。最大の要因はGoToトラブルキャンペーン。人の移動と感染拡大は明瞭にリンクする。人の移動指数推移と新規陽性者数推移は約3週間のタイムラグを伴って連動する。
また、季節性も影響する。冬期は気温と湿度が低下する。室内換気も悪化する。このために、冬期に感染が拡大する傾向がある。日本における陽性者数拡大は必然の結果だ。菅義偉首相が「感染拡大防止に全力をあげる」と発言する意味が不明。「感染拡大推進に全力をあげている」と発言するべきだ。他方で、菅内閣は新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分している。極めて危険の大きい感染症として新型コロナ感染症を位置付けている。この区分に位置付けながら感染拡大を推進するのは「殺人行為」だ。
現状の運用は陽性者の隔離、全数調査、濃厚接触者追跡などを義務付けている。このまま進めば医療崩壊は確実だ。菅内閣は感染拡大防止と経済活動維持の両立が必要だと唱える。その理由から、GoToトラブルキャンペーンを中止できないという。しかし、そもそも、経済活動維持のためにGoToトラブルキャンペーンを推進することが間違っている。最大の理由は、巨大な国家予算の配分が公正でないこと。新型コロナ感染拡大で経済には重大なダメージが生じている。そのダメージは旅行と飲食に限られていない。
また、GoToトラブルキャンペーンは主に旅行と飲食をターゲットとするものだが、旅行と飲食でダメージを受けている事業者に対して、均等に恩恵を施すものになっていない。GoToトラブルキャンペーンの利用者も利益を享受するが、利益をまったく享受できない者が多数存在する。巨大な国費を投じる事業の公平性が保たれていない。旅行関係の事業者がコロナの影響で苦境に直面したが、GoToトラブルキャンペーンによる利益供与には著しい偏りがある。1泊4万円の宿泊に対する利益供与が最大になるため、この価格帯での宿泊サービスを提供する事業者に利益供与が集中している。
これらの事業者は、これまで値引き販売していた価格を定価に引き戻し、さらにサービス内容を微修正して、実質値上げを行って、GoToトラブルキャンペーンに合う商品を提供している。この結果、コロナ以前の収益を大幅に上回る濡れ手に粟の利益を享受する事業者が続出している。
その一方で、コロナ不況にあえぐ一般市民はGoToトラブルキャンペーンの利益供与から完全に取り残されている。自殺者も急増している。政府が真っ先に手を差し伸べなければならない人には完全な無策で、政府と癒着する事業者、富裕層にだけ巨大な利益を供与する施策は健全な施策と言えない。安倍内閣の下で特定事業者に利益を供与することによって見返りを求める利権官庁と利権政治屋が主導して、このような筋の悪い施策が策定された。経済産業省、国土交通省の利権体質が生んだ産物だ。
他方、新型コロナ感染症を第2類相当指定感染症に区分していることがコロナ騒動拡大の主因になっている。日本では当初から新型コロナの検査が十分に行われてこなかった。日本のコロナ対応は大失策だった。
東アジアにおけるコロナ被害が軽微に収まったことで九死に一生を得たが、東アジアの被害が深刻であれば日本の被害は突出して甚大なものになったと考えられる。
安倍内閣は感染抑止よりも五輪開催優先のスタンスを示した。そのために、1月28日に第2類相当指定感染症に区分しておきながら、感染抑止の強い措置を取らなかった。いま、菅内閣は新型コロナを第2類相当指定感染症に区分したまま、GoToトラブルキャンペーンを全面推進している。
「感染拡大防止に全力をあげる」と言いながら、外国人の入国制限緩和、訪日外国人の公共交通機関利用制限緩和などの措置を検討し始めている。すべてにおいて支離滅裂。この支離滅裂が菅内閣を早期に退場に追い込む主因になるだろう。
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