テレビ東京「ジャルジャルンルン気分」意欲的な企画に残る課題
メディアゴン / 2020年11月27日 7時30分
![テレビ東京「ジャルジャルンルン気分」意欲的な企画に残る課題](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/mediagong/mediagong_31179_0-small.jpg)
高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]
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11月23日祝日の昼0時からテレビ東京で放送されたテレビ愛知・吉本興業製作著作の特別番組「ジャルジャルンルン気分」。55分間、全部コントで、しかもプロの演者は2人だけで通してやろうという意欲的な企画である。
まず褒めたいのは、この企画を通したテレビ局の勇気である。なんにしろ、チャレンジングな企画が少なくなっている昨今のテレビ業界の中で、その希有さが賞賛されるべき番組である。
公式ホームページには以下のようにある。
「キングオブコント王者ジャルジャルの人気コントキャラが街中に!一般人に溶け込み変幻自在のコントを仕掛ける!ハマる事間違いナシ…最も見てみたい奴らの卓越コント集!」
後藤淳平と福徳秀介のジャルジャルはネタ作りに大変情熱を傾けるユニットだと聞く。売れると、ネタ作りをやめ、フリートークでお茶を濁す芸人が多い中、このネタの量産ぶりは、何物にも代えがたい彼らの生きる道である。それらコントから生まれたキャラクター「タメ口レポーター」や「角刈り高校生」がロケコントに挑戦した。
すでにあるキャラクターの設定を違う状況の設定に放り込むわけだ。元々計画されたコントで動くキャラクター設定だからこそ面白いのに、敢えてそれを捨てるのだから、元のコントに倍する面白さがないと、何をやっているのか分からなくなる難易度の高い挑戦だ。
それを情報番組風の包装紙で包む。まず、この包装紙は残念ながらありきたりである。受けなかったロケコントを、キャスター部分で救うという試みで、よくこの方法は使われてきた。だが、エンドロールに企画・ジャルジャルと出すからには、もう少し考えても良かったのではないか。アメリカのコント番組で、倒産寸前のテレビ局のコント番組という設定を見たことがあるが、この設定はいろんな場所でギャグにつながっていた。
[参考]<上から目線の辛口批評>テレビ朝日の『お助け!コントット』
キングオブコントの決勝にかけた「どんなヤジにも屈しない新人歌手」が、生歌を披露するコント。生歌ではヤジが飛ばないので、歌えなくなる。こういうときは見る方に疑問を差し挟ませないようにすることが必要だ。なぜ、生歌ではヤジが飛ばないのか、それがちっとも分からない。マネジャーが飛ばせばいいではないか。
前にも言ったかも知れないが、このネタはストーリーが前に進まない。さらに、エスカレートもしない。同じことを繰り返しているだけである。同じことを繰り返すコントを、かつての浅草の軽演劇コントでは「天丼」と呼んだが、「天丼」は繰り返すだけではない。繰り返す度に前に進む、エスカレートする、三回目の繰り返しの時には変える、などの決まりがあった。
考えるに、後藤はひとつのパターンのボケしか出来ないのではないか。
寿司屋にきた「タメ口レポーター」も同じ所をぐるぐる回る、メリーゴーラウンドだった。メリーゴーラウンドも回転寿司も同じものだけが回ってきたのではつまらない。
けん玉の世界一周に100万円を掛けてチャレンジする後藤。この時は後藤は失敗するのであるが、失敗する芝居をする時は、「失敗する」を演じてはならない。「成功する」を演じて、失敗するのである。
ジャルジャルの大きな課題は、芝居の巧拙だ。どこか、大阪の小劇団にでも客演して、芝居をやってみるというのはどうだろう。ジャルジャル目当ての客はたくさん入るだろうから小劇団も嬉しいだろう。芝居がもう少し上手くなれば、ドラマの仕事もたくさん舞い込んでくるに違いない。コントファンとしてはドラマには行かず、コントで踏ん張って欲しいけれど。
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