ウィルスより有害ダメな政府と太鼓持ち -植草一秀
メディアゴン / 2020年12月2日 23時51分
植草一秀[経済評論家]
***
大相撲11月場所は大関の高景勝が優勝決定戦で小結の照ノ富士を押し出しで破り、2度目の優勝を果たした。2横綱2大関が休場する異常事態の下、高景勝が大関の重責を果たし、見事に優勝を決めた。
小結の照ノ富士は本割で高景勝を浴びせ倒しで破ったが、優勝決定戦で敗北し、3度目の優勝を逃した。勝利した高景勝は優勝インタビューで、優勝を決めた瞬間に感無量の表情を見せたことについて、
「1人では優勝できなかった。調子が悪い時でも懐で守ってくれた千賀ノ浦親方、おかみさんはじめ、皆さんのおかげで結果を残せた」
と語った。
敗れた照ノ富士は優勝を逃して悔しいとしながらも、今場所について、
「悔いはまったくない。決定戦では悪い部分がでてしまった。体が高かった。」
と冷静に敗因を見つめていた。高景勝、照ノ富士ともに大きな怪我に見舞われ、厳しい局面を克服しての現在の状況だ。とりわけ照ノ富士は大関に昇進後に怪我に見舞われ、序二段まで番付を下げた上での現在の快進撃である。3度の手術で洋式トイレに自力で座れないほどの状態だったといい、引退を決意したことが何度もあったそうだが、伊勢ヶ濱親方に説得されて現役続投を選んだという。
両名とも話す言葉が謙虚で、強者の風格を示している。横綱白鵬と天と地の開きがある。天が与えた試練が人間を大きく育てる姿が示されている。高景勝にしても照ノ富士にしても困難を克服してきた者が示す風格が備わっている。相撲は単なる格闘技ではなく相撲道というひとつの「道」である。腕力と傲慢と怠惰が幅を利かす風潮に大きな一石を投じたと言える。
さて、GoToトラブルキャンペーンが文字通りのトラブルに迷い込んだが、主因は菅義偉首相の支離滅裂にある。報道特集の金平茂紀氏は「馬鹿な大将敵より怖い」というある財界人の言葉を紹介したが、この言葉が現実化している。政府は新型コロナを第2類相当指定感染症に区分した。その後、追加措置を決定し、一部の取り扱いは第1類感染症に準拠したものになっている。
1類と規定されているのはエボラ出血熱やペスト。
2類は結核やSSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)
3類はコレラや細菌性赤痢
菅内閣が新型コロナを第2類相当と区分していることは、この感染症を最大の警戒を要するものと位置付けていることを意味している。この前提に立つなら、政府が取り組むべき第一の課題は感染抑制、感染収束である。経済活動を維持することは重要だが、優先順位としては、まず感染抑止が優先され、このことに支障が生じない範囲での経済活動維持ということになる。
GoToトラブルキャンペーンをもっとも積極的に推進してきたのが菅義偉氏である。GoToトラブルキャンペーンを全面展開してきたことは、取りも直さず、新型コロナの感染を日本全国に拡散することを意味する。そしていま、順当に日本全国に感染拡大が進行している。
人の移動と新規陽性者数推移に明瞭な連動関係が観察される。注意が必要なのは人の移動がタイムラグを伴って新規陽性者数確認につながること。タイムラグは約3週間と判断される。GoToトラブルキャンペーン全面推進がタイムラグを伴って新規陽性者数の急拡大を生んでいる。
このことについて、
テリー伊藤氏は「『Go To キャンペーン』だけが悪者になっているような気がする」と発言、
杉村太蔵氏は「『Go To トラベル』で救われた命もかなり多いんだろうなというのが僕の考え。菅総理もおっしゃっていましたけど、旅先で感染した方は4000万人の利用者に対して176人だった。」
と述べる。
こうした太鼓持ち要員に画面を占拠させているのが現在の御用メディアの実態だ。安倍内閣はGoToトラブルキャンペーンを全面推進する際に東京都を除外した。この運用を指揮したのは菅義偉氏であると見られている。都道府県に区分してGoToトラブルキャンペーンの運用を支配してきたのは政府である。どの地域のGoToトラブルキャンペーンを一時停止するのかを決めるのが政府でなければ整合性が取れない。支離滅裂菅内閣は発足直後から窮地に追い込まれている。
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