テレビ東京「共演NG」の成り立ちを推測する?
メディアゴン / 2020年12月21日 7時30分
メディアゴン編集部
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企画者の名ばかりが喧伝されてしまったのはドラマ『共演NG』(テレビ東京)にとって不幸なことであったのではないか、と全6話を見終わって思う。
懇意のドラマプロデューサーから、
「『共演NG』は業界人は先読みできて面白いと思います。ドラマ外野の人でなければ躊躇する企画。一般視聴者がどこまで面白がれるかは疑問」
とのメールが来たので、定額制動画配信サービスParaviでの後追い視聴で見た次第。
日本一小さな在京キー局・テレビ東洋(略称:テレ東)が社運を懸けて、大人の愛を描く大型恋愛ドラマ『殺したいほど愛してる』を制作する事になった。作品は大物実力派俳優の遠山英二(中井貴一)と大物人気女優の大園瞳(鈴木京香)が出演する大人の恋愛ドラマ『殺したいほど愛してる』。世間の話題は内容よりもこの2人が「共演NG」なことにある。2人は、25年前に共演した大ヒット恋愛ドラマ『愛より深く』で実際に恋愛関係へと発展したが、遠山の二股が発覚したことで破局。それ以来、公然の共演NGとなってしまっていたのだ。
仕掛けたのはNetflixなどで活躍するショーランナー(すべての実権を握る現場総責任者、アメリカのドラマ現場で生まれた職種である)の市原龍(斎藤工)。製作総指揮・脚本・広報の一切を仕掛けるいわば黒幕である。
さて、ここまでの設定があれば、コントなら後は役者の芝居で転がって行くと思われる、優れた設定である。だが、この設定は業界の黒い裏側にもふれるものであるし、触れなくては、軟弱なコメディになってしまうという危険をはらんでいる。面白さが危険に勝って、番組が成立することはないテレビ界である。だから、なりふり構わず、売り上げを上げたいテレビ東洋(テレ東)でなければ、この企画は着地しない、と大抵の業界人なら理解するだろう。テレビ東洋と、テレビ東京のアナロジーがこのドラマに真実味を与える。
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では、なぜ、「『共演NG』=劇中劇としての『殺したいほど愛してる』」は、テレビ東京の連続ドラマとして成立したのか。その背景を推測してみたい。
製作著作は「共演NG製作委員会」であり、テレビ東京本体ではない。製作委員会とは、制作資金調達の際に、単独出資ではなく、複数の企業に出資してもらう方式のことである。通常この製作委員会には、テレビ局、広告代理店、製作会社、スポンサー、芸能プロダクション、商事会社などが名を連ねる。責任を分散するのはもちろんだが、収益も出資比率によって分配される。これまで番組と呼ばれていた物はコンテンツと名を変えてマネタイズされてきたので、この製作委員会方式は今後ますます増えるだろう。
通常、テレビ局で最も権限があるのは、番組の着地を決定し、予算配分を決める編成局である。しかし、『共演NG』での編成局の関与は着地を追認するなどの小さなものであろう。恐らく営業局が編成局の頭越しにまとめた企画である。ドラマ中でも編成局の人間は主要な登場人物にはならない。編成が強大過ぎると、製作現場の創作意欲を削ぐことになるが、弱すぎるのも、テレビ局の存在意義を問われることになる。
『共演NG』の演出を担当したのはCX系列のフジクリエイティブコーポレーション(FCC)である。演出家は大根仁氏、フリー。脚本は樋口卓治氏、バラエティ番組出身である。樋口氏は、バラエティ番組の裏側も熟知しているので、脚本にはその当たりのネタも描き込まれている。
芸能リポーターの横暴ぶりも描かれているが、今ここは業界と持ちつ持たれつなので、このような修羅場は起こりえないだろう。きちんと芸能を評論する力を持つ芸能ジャーナリズムというのは今はないと断言しておこう。
中井貴一と鈴木京香は措いておき、『共演NG』のなかですばらしい芝居をした人を2人挙げておく。
昭和から平成にかけて時代劇俳優として人気を博した出島徹太郎役を演じた里見浩太朗。コントで良くやる時代劇口調が抜けないで現代劇に出てしまった俳優を演じるが、ぎりぎりのところでコントになるのを止めているのはさすがである。
毒舌のアシスタントプロデューサー・楠木美和を小島藤子は得な役をもらった。ドラマ好きで情熱家で自分に正直で、という与えられた役をのびのびと演じていた。使いたくなる女優さんだ。
最後に、日本ではほぼ存在しないショーランナーを市原龍を演じる斎藤工。『共演NG』を成立させた目的は何か、それがサスペンス調で描かれるが、欲張りな物語である。
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