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「The W」と女性バラエティ戦国時代

メディアゴン / 2020年12月23日 7時30分

「The W」と女性バラエティ戦国時代

宮室信洋(メディア評論家)

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12月14日に、『女芸人No.1決定戦The W 2020』(日本テレビ系列)が行われ、吉住が優勝した。今回の大会はどこが注目できるだろうか。

女芸人の頂点を毎年決める戦いも他のお笑い賞レースと同様に、面白いと評価されるまでには番組放送開始時よりなかなか時間がかかる。今回、場が盛り上がったのはBブロックからだろう。Aマッソのネタは、バックスクリーンに現れる映像を様々に活用しながら漫才をするネタであった。映像を活用することは、わかりやすくなるというだけでも有効であり、映像を活用しながらの漫才は幅を広げるもの。

続くゆりやんレトリィバァは、『サザエさん』(フジテレビ系列)のカツオの真似をしながら「姉さんは大きな間違いをしているよォ」と話し続けるネタ。人によっては全く面白くないという感想もあるが、それが証拠か、笑いとしては非常に突き抜けたものだと言えるだろう。

ゆりやんは本大会の第1回優勝者なので勝ち上がるのは他より難しい。Aマッソのネタは画期的なものなので、ゆりやんが勝つのはいっそうに難しかったはずだ。しかしながら接戦にてゆりやんが勝利を収めたのは、素晴らしい一戦だったことを裏付ける。

続いて出てきた吉住が最終的に優勝したわけだが、この点審査方式は物議をかもした。勝ち抜き戦方式なので、最初に出てきた芸人が不利だという声もある。次に、優勝した吉住に焦点を当てていきたい。本大会の特徴は、これまで優勝者がテレビでよく活躍できているということ。大会自体のレベルが高く評価されているとは言い難いにもかかわらず、しっかりと活躍できている優勝者を輩出していることは面白い特徴だろう。

[参考]高橋維新の2020「M-1グランプリ」全ネタ評論

また昨今売れた女芸人といえば、ニッチェ、おかずクラブ、尼神インター、ガンバレルーヤなどがあるが、これらは1年位で交代するような売れ方。今のところ『The W』の優勝者は、ゆりやん、阿佐ヶ谷姉妹、3時のヒロインと、この流れから外れることができている。単純な女性コンビが優勝していないのも特徴的だ。コンビが輩出されないお笑い賞レースと言えば、『R-1グランプリ』があるが、こちらの優勝者はピン芸人ながらもあまり個性的とは言えないのではないだろうか。『R-1』のここ2回の優勝者はコンビ芸人の片方であったりもする。

女芸人の世界では男芸人のように漫才師が重要な地位を占めがちであるという傾向がまだないようだ。ここにおいてピンの女芸人が個性を活かしてバラエティーで活躍する余地があるように思われる。ここにおいて吉住は、前に出る精神もあり、引き続き、『The W』の優勝者のバラエティでの活躍が期待できると言えるかもしれない。しかし一方で、似たような女コンビ芸人が1年交代でバラエティーで活躍するような状況もある。

ここにおいて女性バラドルを中心とする女性タレントの活躍はめざましく、最近行われた女性タレント同士が笑わせ合いをする『女子メンタル』は女芸人の活躍の場を大きく奪う可能性を示した。優勝した峯岸みなみの攻守のバランスは素晴らしく、他にも金田朋子の攻めのボケ力は昨今の男芸人でも敵わないレベルだろう。

またフリもボケもしっかりこなした朝日奈央は『女子メンタル』以来仕事が増え、峯岸とともにバラエティー女王と呼ばれるようになってきたようにも思う。今後『女子メンタル』の注目はいっそう大きくなり、『The W』や女芸人がいかに対抗できるかが問われてくるだろう。

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