五輪招致委の森武藤独裁制に変化なし-植草一秀
メディアゴン / 2021年2月21日 2時19分
植草一秀[経済評論家]
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東京五輪組織委は何も変わっていない。東京五輪組織委の最大の問題はこの組織がオリンピズムの根本原則から逸脱した非民主的な組織であるということ。森喜朗氏が女性蔑視、女性差別発言で引責辞任に追い込まれた。しかし、最後まで森喜朗氏は自己正当化に終始した。引責辞任しながら記者会見で説明責任を果たすことさえ放棄した。
後任会長選出に際して「透明性のある選出プロセス」を掲げながら、選考委員会メンバーを非公表、検討委員会討議内容を非公表というギャグのような対応を押し通した。スポーツ報知は組織委の非民主的な議事進行について委員の声を紹介した。
「組織委は森会長、武藤事務総長ら一部の方が、ほとんどのことを決めて、理事はその決定事項を会議で聞かされているという流れ。せっかく、様々な分野から集まってきているのだから、もっと意見の交換をすることが必要だと思う」
森喜朗氏は2月3日のJOC評議委員会で「女性が入ると会議が長くなる」、「組織委の女性はわきまえている」と述べた。会議で上層部が提示した提案にケチをつけるなということなのだ。NHK番組に出演して、政府の施策に対する市民の批判の言葉を紹介したところ、「いちいちケチをつけるもんじゃない」と言い放った自民党幹事長がいたが、これと同じ構図。組織委会長森喜朗氏と事務総長武藤敏郎氏らが密室で決定する。組織委会合は密室で決定したことを追認するだけのお飾りと化してきた。後任会長選出も初めから結論は保持されていた。
その初めから決まっている結論を導くために密室の「選考検討委員会」が設置された。オープンな議論を行う予定はもとよりなかった。橋本聖子氏は森喜朗氏直系の議員。森氏、武藤氏の言いなりになるロボット会長が創設されようとしている。
その橋本聖子氏にパワハラ、セクハラ問題がつきまとう。2014年のソチ五輪で日本選手団団長を務めていた橋本氏が、閉会式後に開かれた飲酒を伴う打ち上げパーティーで「高橋選手に抱き付いてキスをした」と報じられた。2014年8月20日発売の「週刊文春」が報じたもの。現場写真もネット上で流布されている。
キス強要であれば刑事事件に発展する可能性もある事案だった。東京五輪組織委員会のイメージは地に堕ちている。その修復は不可能な状況だ。組織委員会の最大の問題はオリンピズムの目的を正しく理解していないこと。
オリンピズムの根本原則
1.(前略)その生き方は努力する喜び、良い模範であることの教育的価値、社会的な責任、さらに普遍的で根本的な倫理規範の尊重を基盤とする。
2.オリンピズムの目的は、人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである。
4.スポーツをすることは人権の1つである。 すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。(後略)
森喜朗氏は「コロナがどんな形でもかならず(五輪を)やる」と述べた。この発言がオリンピズムの根本原則に反することは明白。
「人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てること」がオリンピズムの目的と明記されている。「世の中がどうなろうと五輪を開催する」との姿勢は、オリンピズムの目的を全否定する暴言だ。この森喜朗氏が自分自身の責任について説明責任も果たさずに辞任した上で、自分が影響力を及ぼせる人物を後任会長に据えようとしている。
東京五輪組織委員会の姿勢に日本の主権者全体がNOを突き付ける必要がある。残念ながら東京五輪開催の気運は完全消滅したと言うほかない。
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