<ホンマでっか!?TV>欽ちゃんと明石家さんまはそっくりだ
メディアゴン / 2021年3月6日 7時30分
高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]
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2月24日放送のCX『ホンマでっか!?TV』を見た。カメラは、5、6台以上使っていると思うが、引きを撮らないので、出演者の位置関係が分からず、ちょっとイライラする。どこに誰がいるのかそれを教えてくれると見ている人は安心する。位置関係は人間関係だ。
さんまさんは自分のトークの文法を駆使して、快調にスタジを回し、笑いをとっている。マツコはいなくなったが、コメンテーター陣には心理学者の植木理恵、脳科学者の中野信子が揃い、ここに哲学者の池田晶子(故人『14歳からの哲学』著者)が加われば、脳科学、心理学、哲学それぞれ、3人の巫女が揃って壮観だなあ、などと思う。
トークの間に情報が入るのがこの番組のウリだが、笑いに情報を掛け合わせる手法の番組に、筆者は少し飽きている。今は流行なのだろう。みなそういう番組ばかりだとも言える。筆者と同じ時間、テレビ界にいてテレビ局をリタイアした友人にこの話をしたら「お前はまだテレビが好きなんだなあ」と言われた、友人はもうテレビに興味がないらしい。
さて、本稿でしたいのはさんまさんに関する昔話である。
『欽ドン!良い子悪い子普通の子』(CX1981〜1983)は全盛の頃、毎回視聴率30%越えをしており、フツオ(普通の子:長江健次)、ヨシオ(良い子:山口良一)、ワルオ(悪い子:西山浩司)の子どものコーナーのコントを書いていた筆者は40%も狙えると思っていた。(結果は最高39.8%)
その末期、これまた全盛期の明石家さんま(当時31歳)がゲストでやって来て、学生服姿で欽ちゃんとコントで初共演した。さんまさんは、居間を所狭しと暴れ回り、会場は大爆笑。その動きの速さは欽ちゃんを置き去りにするほどだった。当時の筆者は「イヤな予感」がした。
この時のさんまさんとほぼ同じ32歳だった時の欽ちゃんは、『コント55号のなんでそうなるの?』(NTV)で、坂上二郎産さんを相手に浅草演芸場で2m(と思えるほど)飛び跳ねていたいた。その頃の欽ちゃんは、可愛くて女の子にモテて、運動神経が良くて、芝居が出来て面白い。つまり、三拍子揃っていた。『良い子悪い子普通の子』の頃は、46歳で、三つの美点が薄くなっているのを自覚しており、その美点を、可愛い長江健次、芝居の出来て笑いがとれる山口良一、運動神経抜群の西山浩司に割り振って、3人ひと組で、一人の萩本欽一をつくろうとしていた。
そこにやって来たのが1人で三つの美点を持っている。全盛期の自分とそっくりの(と思ったかどうかは、筆者の推測である)明石家さんまだった。
収録がおわって大将は(欽ちゃんをスタッフはこう呼ぶ)主要なスタッフに静かな声でこうおっしゃった。
「おれを、つぶす気か」
もちろん、さんまさんと共演させたことを指している。チャップリンを思い出した。どの映画だっただうか、登場した犬が見事な演技を見せた。爆笑のシーンが撮れた。しかし、監督チャップリンはその犬のシーンを全部カットした。同じ映画の中に自分より面白い存在があることは決して許さなかったのだ。
[参考]M-1決勝進出のお笑いコンビ・見取り図が売れる条件
欽ちゃんは、さんまさんのことを「今どきの芸人には珍しく『受け』が出来る」と、よく褒める。
欽ちゃんの笑いは『フリ』『オチ』『フォロー』で出来ている。この『フォロー』の部分が前段で言う『受け』である。「大抵の笑いは『フリ』『オチ』『フリ』『オチ』の繰り返しで出来ているが、ここに『フォロー』=『受け』を入れることで笑いは倍加する。さんまさんは人のトークを聞いて、スタジオにひっくり返ることがある。あれが『フォロー』=『受け』のひとつである。
『フリ』『オチ』の繰り返しはまた、『ボケ』『ツッコミ』『ボケ』『ツッコミ』の繰り返しとも同じである。『ボケ』た後に「いいかげんにしろ」と『ツッコミ』をいれたらそれで終わり。それ以上話は続けられないので違う『ボケ』を用意せねばならず、話がぶつぶつ切れる。笑いが寄せる波のようにだんだん大きくはならない。
だから、欽ちゃんの『フリ』『オチ』『フォロー』においては、『フリ』は指示だと言える。『オチ』は笑いだが指示をどう『コナす』かである。当然次に来るのは『フォロー』でなければならない。この、『フォロー』のあとに『ツッコミ』を入れてはいけない。繰り返すが『ツッコミ』をしたらそれで終わり。『ツッコミ』ではなく『落トシ』になってしまう。「言ったらおしまい」なのである。それから、『ツッコミ』が単なるの「指摘」であってもいけない。「発見」ないし「展開」でなければならないとも欽ちゃんは言う。だから、欽ちゃんの『フリ』『オチ』『フォロー』は『フリ』『コナし』『フォロー』と言い換えた方が分かりやすいかも知れない。
で、これを教えたわけでもないのにこともなげに出来るのが明石家さんまだと欽ちゃんは言うのである。
以上でしたかった昔話は終わり。ところで、筆者が一番好きなさんまさんの番組は『さんまのお笑い向上委員会』である。
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