<バカにできないネット情報>小池都知事の療養欠席から考える現職政治家の欠席問題
メディアゴン / 2021年7月7日 7時30分
水野ゆうき[千葉県議会議員(無所属)]
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テレビを持っていない、持っていたとしても見ない、という人が若者層を中心に激増している。ニュースならYahoo!ニュース、エンターテインメントならYoutubeで事足りるのだから、わざわざ決まった時間にテレビの前にスタンバイする必要はないのだろう。
しかしながら、Youtubeを含めたネットでの情報は、政治や社会問題をエンタメ化したものが多いことに驚かされる。それはむしろ、政治や社会問題自体が「エンタメのいちコンテンツに成り下がっている」と言えなくもない。マスコミ出身の政治家としては複雑な心境だ。
もちろん、ネット情報を「エンタメ報道」などとバカにしてはいけない・・ということもまた事実。ある意味、ネットという身近で柔らかいメディアを通して、じつはけっこう重要な情報が私たちのもとに届いている、ということうメリットもあるからだ。お堅い報道では案外と遮断されたり、忖度されて雲散霧消されてしまうことも多いからだ。
東京都の小池百合子都知事が過労により政務を離れたことに対し、賛否両論が渦巻いている・・・といったニュースも、そんなニュースの一つだろう。少し検索すれば、テキストから動画に至るまで、山のように情報が溢れている。そういったことから、「現職政治家の欠席はどういった扱いになるのであろうか?」と従来であれば想像もしなかったような論点に気づき、真剣に問題に思う人も少なくない。
話題の「小池百合子都知事の休養問題」は、何が問題で、どのような論点があるのか。意外と政治家たちは口をつぐむので(この件でブーメランを恐れる政治家は少なくないはず)、この際なので、現職政治家として筆者がわかりやすいく説明してみたい。既存メディアではほぼ扱われない情報なので、これもネットならではだろう。
我々議員がやむを得ず休養したり、政務を欠席する場合は議長に届け出を提出することとなっている。出産はもちろんのこと、病気や交通事情、親族の訃報など、その理由は様々であろう。ちなみに筆者は10年間議員職にあるが(市議、県議)、その間でマイコプラズマ肺炎に感染し、出席停止となり2日間だけ欠席をしたことがある。かかりつけ医によると不特定多数と接する仕事のため、おそらく施設等で感染してしまったのだろう、とのことだった。
この時は、マイコプラズマの感染力が高いという理由から自宅療養となった。その際に、県議会の社民党に所属する県議から地元我孫子市議へ筆者の欠席について理由を言わずに伝えられ、一部市議らにひどく指摘をされたことを鮮明に覚えている。まるでズル休みをしているかのように言われ、残念に思った。他方、共産党と自民党県議らからは心配の連絡があった。
その社民党県議からの心ない言動に筆者だけでなく、後援会や支援者たちも心を痛めたが、逆に言えば「税金を貰っている政治家が欠席する」ということは、それほど重みを持つし、嫌がらせをしようと思えば、いくらでも利用できるぐらいの、ある意味「怖いこと」「重要なこと」なのである。つまり、小池百合子都知事の1週間の療養も実は、「あら、お疲れですか? ゆっくり休んでくださいね」などと悠長に心配してすむような問題ではなかったりするわけだ。
[参考]<政党もYoutuberに負ける?>千葉県知事選挙で痛感する情報発信力の差
さて、これには後日談がある。筆者の病気療養による欠席を理由の説明することなく地元市議らに伝えたその社民党の県議は、現在半年以上、議会を休んでいる(2月議会、臨時議会、6月議会も欠席中)。一般質問も予算委員会もすべて質問を辞退している。欠席しているということは予算の採決等も一切加わっていないということだ。県議として、まともな仕事ができていないことは言うまでもない。
もちろん、理由はなんであれ、長期間にわたり議会を欠席しているということは大変な状態にあるのだろうし、自分がされたことは置いておいたとしても、心配ではある。しかし、立場が逆なら猛烈に筆者を批判するんだろうな・・・となんとも複雑な気持ちになる。なぜ、議員の欠席が問題になるのかと言えば、当然、税金が報酬として支払われているからである。
実は議員の長期欠席は各議会で度々議題に上る事項だ。最終的には政治家自らが出処進退を決めることとはなるものの、議会に出ることができないほどの長期欠席となれば、議会活動は一切できないのみならず、地域活動も行っているはずがない。それで職責を果たしていると本当に言えるのであろうか。さらに、欠席していても毎月、税金による報酬や政務活動費は振り込まれる。筆者が我孫子市議会議員であった頃も体調が芳しくない市議が議会を休まざるを得なくなり、自ら職を辞したことがあった。長期間政務ができない状態で長期間税金を受け取ることに罪悪感を感じるは当然だ。
この議論が表面化するようになったのは、平成28年に北九州市議会の議員が病気を理由に約2年4ヶ月間議会をすべて欠席しているにもかかわらず、その間の議員報酬と期末手当を全額受け取っていたという「事件」に端を発している。これが問題視されて以降、全国の市区町村議会において、長期欠席した場合に議員報酬等を減額する条例の制定や改正が行われている。
なぜ、このような条例が各地で制定されているかと言うと、長期間議会の会議を欠席した議員が議員報酬や期末手当を辞退または返還することは、公職選挙法に規定される寄付行為に該当するため禁止されているからだ。また、このような場合における議員報酬の支給等のあり方について規定した法律等も制定されていないことから、議員が疾病等の事由により、長期欠席することとなった場合の議員報酬および期末手当の減額を行う条例を新たに制定している。
政党に所属をしている議員であるならば、その政党からなんらかの助言はするべきであろうし、また議会としても、県民から負託された大事な議席を預かっているという責任としても、なんらかの取り決めをしなくてはならないはずだ。
県議会では各選挙区から選ばれて議会で議論を行うが、1人区や2人区であるとその一人が不在ということは、その地域の県民の声が県に届きにくくなってしまう。SNSが発達した今、議員の動きや情報を得やすくなった。自身の市町村から選出されている市議会や県議会、国会をウォッチすることは非常に重要である。本当に働く政治家を送りだすことは有権者の持つ重要な権利である。もちろん人間である以上、健康を害すことはある。ただ、我々は公職であることは忘れてはならないし、やむを得ず欠席する人を批判することもすべきではない。そのためには確固たる取り決めや条例が必要だろう。
病気療養におる出席停止で筆者が2日間欠席したことを触れ回った議員が、自分が半年も政務・議会を休んでいるというなんとも皮肉な騒動は、ネットニュースには最適なネタであるようにも感じる。事情はあろうが、スルーはできないし、かといって面白おかしい政治エンタメで終わらせて良いものではない。
これはこれで複雑な心境だ。
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