横浜市長選についての考え方-植草一秀
メディアゴン / 2021年8月22日 21時48分
植草一秀[経済評論家]
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同じ問題は次の衆院総選挙でもいくらでも起こる可能性がある。当選者が一人だけしか出ない選挙。現実の立法や行政は選挙結果に左右される。選挙で勝たなければ現実の立法や行政を変えることはできない。
横浜市長選は8月22日に投票日を迎える。この選挙で菅義偉氏が全面支援している小此木八郎氏が落選すれば菅義偉氏はさらに窮地に追いつめられる。菅義偉氏は大失政を積み重ねて国民の支持を失っているにもかかわらず地位に恋々としている。五輪開催を強行し、その勢いで衆院を解散して総選挙を乗り切り、自民党総裁を続投し、首相の地位に居座ることを画策してきた。
ところが、想定通り、五輪開催強行でコロナ感染が爆発した。緊急事態宣言は9月12日まで期間が延長され、オリパラ終了後の9月解散が極めて困難になっている。9月12日で緊急事態宣言を解除し、自民党総裁選が告示される9月17日までに衆院を解散する可能性は細々と残されているが、感染拡大が続くなかでの解散・総選挙は国民のさらなる批判を集めることになる。9月解散は困難と見られ、次期衆院選の前に自民党総裁選が実施される可能性が高まっている。自民党総裁選は9月17日告示、9月29日投票の日程が有力視されている。8月26日に日程が決定される。
この状況下で菅義偉氏のおひざ元の横浜市で菅氏が全面支援する小此木八郎氏が敗北すれば、次期衆院選前の自民党総裁交代論が一気に勢いを増す。菅暴政に終止符が打たれる。この意味で8月22日の横浜市長選が持つ意味は大きい。衆院選前に自民党総裁選が実施されれば菅氏が再選されることはかなり困難な情勢。地位に恋々とする菅義偉氏は何とかして自民党総裁選の前に衆院総選挙を実施する方策を探っている。唯一の可能性として指摘されているのが衆院の任期満了選挙を実施する方策。
衆院任期満了は10月21日。公選法の規定により、任期満了選挙は「任期が終わる日の前30日以内に行う」こととされているため、最も早い日程は9月26日投票ということになる。したがって、菅義偉氏が任期満了選挙の投票日を自民党総裁選の投票日に先立つ9月26日に設定し、自民党総裁選前に衆院総選挙を強行する可能性が残されている。ただし、この場合も、コロナ感染拡大下で衆院総選挙が強行されることになり、国民の強い批判を浴びることになる。
菅暴政で国民の命と健康が重大な脅威に晒されている。菅コロナ大失政で現実に医療崩壊が発生。多数の国民が自宅に放置されたまま命を失う悲劇が繰り広げられている。一刻も早く、菅内閣を退場させて、世直しを図らなければならない。
このなかでの横浜市長選。
候補者の主張に耳を傾けると田中康夫氏への市民の期待が大きいことが分かる。田中康夫氏の当選を実現できるなら、それが最良であると考えられる。しかし、選挙情勢では田中氏が当選圏内に支持を広げているとは判断しがたい。このような局面で市民がどのように行動するのかは非常に悩ましい部分がある。山中竹春候補は立憲民主党の推薦を得、共産党の支援も得ている。立憲民主党と日本共産党の共闘により自公候補を打倒して勝利を得ることには大きな意味がある。
しかしながら、候補者選定過程が不透明であること、山中氏のパワハラ疑惑が報じされるなど、問題点が指摘されている。このために、横浜市の有権者も判断の困難さに直面していると見られる。本来は、自公政治を打倒しようとする勢力が話し合いを重ねて、最良の候補者を一人に絞り込むことが重要である。当選者が一人しか出ない選挙で、反自公の陣営が複数候補を擁立すれば、投票が分散して共倒れになるリスクが増すからだ。
今回選挙では自公の与党サイドが複数候補を擁立しているために、現状でも野党候補に勝利の可能性があるが、本来は、野党陣営の統一候補を擁立することが望ましい。こうした諸問題を残しているが、現状の選挙情勢から判断する限り、小此木候補の落選を確実に実現するために、山中候補に投票を集中させ、この選挙での野党勝利を確定することが望ましいと判断している。田中康夫氏に対しては次期衆院選での当選を実現するよう主権者が尽力することが望まれる。
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