<オダギリジョー脚本・演出・編集>連続ドラマ『オリバーな犬』はセンスを押し付ける雑貨屋か?
メディアゴン / 2021年9月30日 7時30分
高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]
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NHK「オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ」の脚本・演出そして編集まで務めるオダギリジョーは1976年、昭和51年生まれの45歳。先日、第2回放送を見たが、このドラマは45歳オダギリジョーの「ほら私のセンスは、カッコいいでしょう」を主張するドラマになっていた。
街に「できては消える雑貨ショップ」がある。興味本位で中に入ってみると、店主が世界中を回って集めてきたと思しき小物が飾ってある。筆者はたいてい「ほら、どうかしら、私のセンス?」という、思いが怒涛のように伝わってきて辟易とする。2ヶ月経つと雑貨屋は消えている。閉店。筆者には、それら雑貨屋と同じ匂いを『オリバーな犬』に感じるのだ。
このセンスのことをドラマでは「世界観」と言ったりする。「世界観」とは「世界とはこういうものだ、その中で人はこう生きるものだという、世界・人生に対する見方」のことだが、人生の隠喩でありたいとか、そんな七面倒臭いことではなく、「フィクションにおける世界設定」と言う意味で使われる。ということなら、筆者は『オリバーな犬』の世界観に入っていけないのである。
ならば、見なければいいという反論が直ちに予想されるが、「あまり見たくない理由を書く」ことがこの評論の主たる目的なので、やむを得ず見るのである。
[参考]<オダギリジョー脚本・演出・編集>連続ドラマ『オリバーな犬』に危惧
まず、このドラマは見る人を笑わせることを目的としているのかどうか判然としない。なぜ判然としないか、笑わせる目的で作っているシーンが面白くないからである。きっとコメデイを目指してはいないのだろうと結論せざるを得ない。スーパーボランティア役の派手ないでたちを、志茂田景樹かと突っ込む。志茂田の全盛は1992年頃、平成4年だ。実に29年前である。アラフォー以上であれば誰もが知る直木賞作家タレントだった。しかし、そんな志茂田景樹を20代の人は誰も知らないだろう。
ニュースによく登場する「バールのようなもの」と言うフレーズを不思議がるシーン。みんなバールを知っているのかとつっこむ小説を最初に書いたのは、パスティーシュ作家の清水義範。小説「バールのようなもの」が文庫になったのは1998年(平成10年)。23年前。20歳の人には一周回って知らない話だからパクリでよいのか。世界観が古くさ過ぎはしないか。
今回笑ったギャグは一つだけあった。オダギリジョー扮するキグルミ警察犬オリバーが、捜索先のポールダンスに夢中になり、目を離したスキにポールダンサーと一緒に回っている。それを引きで撮った画。これはいいギャグだ。だが、ポールダンスって。筆者が初めてポールダンスを見たのは、1980年頃、ニューヨークのいかがわしいクラブでのことだが、ポールダンスシーンを取り入れることがこのドラマの世界観なのだろうか。
ヤクザと半グレの対立、警察。ありきたりすぎないか。3話終了なのに、2話になっても、まだ謎の伏線張り、少し謎が解決して見る人を驚かせないと飽きられないか。展開が前に進まな過ぎないか。ハリウッドの脚本家エージェントなら韓国の『パラサイト』の脚本は受け取っても『オリバーな犬』の脚本は受け取らないだろう。「話は?!ストーリーは?!まだ動かないのか」それも世界観のひとつですか。こういう世界観好きでしょ?だけの演出では、このドラマは街の雑貨屋のように消えてゆくような気がする。
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