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ロイヤル忖度?流行語大賞に選ばれない「小室ワード」の謎

メディアゴン / 2021年11月6日 7時30分

ロイヤル忖度?流行語大賞に選ばれない「小室ワード」の謎

藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]

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「新語・流行語大賞」といえば、その年に登場した言葉で、その年に話題となったもっとも象徴的な言葉に対して与えられる賞である。自由国民社の主催で1984年からスタートし、2004年より現在の「ユーキャン新語・流行語大賞」として開催されている。

11月4日に今年2021年の「2021ユーキャン新語・流行語大賞」ノミネート30語が発表された。そのラインナップを見て、違和感を持った人は多いだろう。なぜなら、小室圭・眞子夫妻の騒動に関わるキーワードが一つも入っていなかったからだ。落語家・立川志らく氏も、コメンテーターをつとめるTBS「ひるおび!」で小室ワードがノミネートされてないことを疑問視し、ロイヤル忖度の可能性を指摘している。

いうまでもなく、2021年をもっとも象徴する話題・言葉といえば小室圭・眞子夫妻の結婚に伴う一連の騒動とそれに関連する小室ワードである。「小室圭」「眞子内親王」といった直接的な固有名詞を除いたとしても、小室騒動によって、はじめて我々が知ったような「新語」も多く、以下などは日々、メディアを埋め尽くしており、流行語のスペックは十分に満たしている。

*誤った情報
*複雑生PTSD
*KK
*law clerk(法務助手)
*不正受給
*解決金
*貸与ではなく贈与
*ロイヤル忖度
*ロイヤルパワー
*婚約内定
*結婚会見
*年収2000万円と600万円
*2月再受験
*家賃80万円

しかし、これら見慣れた小室ワードは何一つノミネートされていない。一方で、今年を象徴するもう一つの話題といえばコロナ禍であるが、こちらの方は昨年2020年に「3密」として採択されているだけでなく、今年も「自宅療養」「副反応」「変異株」「黙食/マスク会食」と4つもノミネートされている。

さすがに、小室ワードが一つもノミネートされていないことには立川志らく氏ならずとも「ロイヤル忖度」を疑う人は多いはずだ。「小室圭自体が(いわゆる)流行したわけではない」というスタンスから、ノミネートに入っていないことを正当化する意見もあるが、やはり釈然としない。過去にはポジティブではない騒動の関連ワードも多数ノミネートされている。

今年を彩る小室ワードの数々が一つもノミネートされていない理由としては、ご皇室を含めた政治的な問題をはらむ対象は選ばない、といったような文化的イベントとしての立ち位置があるのかもしれない。しかし、過去の受賞ワードには、政治的な問題に踏み込んだモノも多く、センスの悪さを感じるものこそあれ、権威への忖度など感じることはない。風刺的な意味合いも強い「大賞」なのだから当然だろう。今年のノミネートにも「ぼったくり男爵(=国際オリンピック委員会・バッハ会長)」といったかなり際どいワードが入っている。

もちろん、犯罪性を帯びたり、差別の助長に関わるような対象は選定しないという可能性は考えられる。例えば、過去に大流行したにも関わらずノミネートから意図的に外された流行語には、1995年に発生した「オウム真理教事件」の報道の中で頻出した「ステージ」「ポア」「サティアン」「ヴァジラヤーナ」「ああ言えば上祐」「オウム食」などの多くのオウム真理教用語がある。これらの用語は当時、ある意味「流行」し、あらゆるメディアを埋め尽くしたが、テロや大量殺戮犯罪をおもしろおかしく扱うことは、事件の正当化あるいは軽視へとつながりかねないという危惧から、全て候補として除外されたといわれている。

生活保護を意味する俗称「ナマポ」も、2012年にノミネート候補に選ばれたのの、差別的な利用をされかねいとして後に除外されている。確かに、反社会的な対象や差別問題を揶揄してると取られかねない言葉は、例えエンタメ解釈であれ「流行語」として取り扱うのは倫理的問題がある。もちろん、これを「忖度」とは言わない。

[参考]パックンにみる小室圭騒動のワイドショーコメンテーターの忖度

では、小室ワードがノミネートされなかった理由は何なのだろうか。

筆者はその理由が「ロイヤル忖度」にあるとは思えない。なぜなら、現在のメディアや世論の状況を鑑みても、小室夫妻に「畏れ(おそれ)」を感じて、あえて忖度をする必要性や強制力など感じられないからだ。また、流行語大賞ぐらいのことで、政治的な圧力をかけられるようなことがあるとも思えない。

むしろ筆者は、小室ワードがノミネートから外されることによって、一連の小室騒動が持つ事件性の大きさが暗示されたのではないか、と感じている。つまり「小室騒動が事件性のある洒落にならない話題」であるため、ノミネートから外さざるをえなかっただけではないのか、と思えるのだ。

一連の小室騒動は、単なる「民間人と内親王の駆け落ち騒動」などではなく、オウム真理教事件にも匹敵する、アンタッチャブルな事件として認識されたために、外されたのではないか。つまり、ロイヤル忖度を発揮して「畏れ多いから外した」ではなく、事件性があり社会問題としても「ヤバいから外した」のではないだろうか。

少なくとも、言葉の流行だけで考えれば、小室ワードが流行語大賞にノミネートされない理由は見当たらない。明らかなマイナスワードを省いたとしても、ユニークで目新しい流行語・造語に値する言葉が散見される。

例えば、「誤った情報」「家賃80万円」「解決金」「婚約内定」・・・といったあたりは「ぼったくり男爵」的な方向性で、ノミネートされてもおかしくはない印象だ。「law clerk(法務助手)」「年収2000万円と600万円」「2月再受験」のように、小室ワードによって日米の司法就労の仕組みの違いを理解した人も多いはずである。

「新語・流行語大賞」は過去のノミネートを見ても、およそ忖度などをしているイベントとも思えない。だとすれば、「(何か理由があって)意図的に外した」はずだ。過去に意図的にノミネートから外されたのは、オウム真理教事件や、そのクラスの事件である。ようは「洒落にならない案件」ばかりだ。つまり、「新語・流行語大賞」の基準では小室騒動を「オウム真理教事件クラスの事件」であると理解しているのではないか。

うがった見方かもしれないが、小室ワードを流行語大賞ノミネートから外すことで、「新語・流行語大賞」は期せずして小室騒動が「オウム真理教事件」クラスの歴史的な事件であることを表明してしまったように思えてならない。

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