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裏表対決『オモウマい店』と『ウッチャン式』を比較してみた

メディアゴン / 2021年11月28日 7時30分

裏表対決『オモウマい店』と『ウッチャン式』を比較してみた

高橋秀樹[放送作家/発達障害研究者]

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テレビを録画や配信で見る人が多いので、世帯視聴率は指標にならないと誤った発言をする人が最近多いが、これは明らかに間違っている。ちょっと考えればすぐわかることだが、世帯視聴率の多寡は、明確に支持率の指標のひとつなのである。

現在、テレビ局は全世代に見て貰う必要はないと考え、コア視聴率と呼ばれる13歳から59歳の購買力の有る層に番組を見てもらうよう内容をシフトしているという。それはそれで営利企業の方針だから構わないが、違う視点に立つと、番組の人気というのは世帯視聴率に現れていると考えるのが妥当だ。

その世帯視聴率で、毎週第10位くらいをキープしているのが『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(中京テレビ)である。同工異曲のバラエティ番組の氾濫の中で、この地位を築いているのは珍しいことだ。一体何故か。

名古屋の放送局はどこも、大阪にも、東京にもないあっと驚く番組作りをする傾向があって、筆者はたいへん好もしく思っている。自分でもかつて『お笑いマンガ道場』という番組を構成して、これは全国放送に育った。

[参考]<フジ「新しいカギ」>お笑いで「ふつう」と「またか」はNGだ

さて、『オモウマい店』はかんたんに言うと美味しい店を全国で探してロケVTRを見せる番組だ。そんな番組なら、今まで星の数ほどあった。ではナゼ人気なのか。際立つ特徴が2つあった。

(1)VTRにナレーションついていない。うるさい芸人リポーターがいない。VTRはディレクター自らもカメラを持って撮影し、対象の食堂のおっちゃん、おばちゃん店員アルバイトにも自らインタビューする。ナレーションは感じてほしい方向に視聴者を誘導できるテクニックで、これを上手に書く構成作家は重宝される。僕も『世界まるごとHOWマッチ』で小倉智昭のハイスピードナレーションを書いていたが、この手法で随分つまらないVTR を面白くしたとの自負がある。この番組のようにナレーションがないと、取材対象の素がストレートに伝わって、今どきはすごく新鮮だ。見る方にも、これまで作為ある番組ばかり見せられてきたとの感慨が出てくる。


(2)VTRを見たあとに感想を言うスタジオ部分がない。ヒロミがMCで、バイきんぐの小峠英二が進行という役割分担だそうだが、ふたりとも特に仕切ろうとはしない。他におしゃべり係として、的場浩司、SHELLY、乃木坂46・梅澤美波が参加していたが、彼らは皆、ワイプの中でしゃべるだけなのである。

初見で喋っているからだろう「みんな食べるよねえ」など、同じフレーズが繰り返されてしまうが、VTRの中でしゃべりっぱなしなので、編集されることもない。ロケVTRだけで番組を作ろうとすると編成マンに判で押したようにスタジオ部分を作れ、タレントを入れて華やかにしてくれ、と口やかましく言ってくるものだ。それが時に不必要であることよく分かる番組が『オモウマい店』だ。

この『オモウマい店』と対象的な番組を真裏でTBSが放送していた。『ウッチャン式』だ。芸能人が普段とは違う組み合わせで初めてのことにチャレンジし、計算が立たないロケ『ウッチャン式』を内村光良らがスタジオで見守るドキュメントバラエティであるそうだ。見ていて嫌なところがまったくないのが特徴の司会・内村光良が真ん中に座り、川島明、高山一実、濱口優、別府ともひこ、山崎弘也らコメント上手のタレントが囲む。コメントは的確。このところ、ひな壇形式が流行っていたが、コロナの影響か、この番組は昔に戻ったようだ。

「狩野英孝×が~まるちょば」の式では、狩野が憧れのパントマイムを本気で習得!高校で公演するという企画だった。だが、狩野がすでに心得があるのがミエミエで結果は見えている。それをさもどうなるが先がわからないとナレーションがあおる。つまり今までよくあった番組だった。

筆者は両番組とも見逃し配信で見たが、リアルタイムなら『オモウマい店』を選ぶ。だがおそらく『オモウマい店』は、先に飽きる。飽きた頃にまだ『ウッチャン式』の命脈が保たれていたらチャンネルを変えるだろう。

『オモウマい店』と『ウッチャン式』ではスタッフに必要な能力が全く違う。『オモウマい店』のディレクターに必要なのは「人柄」と「取材力」だ。一方『ウッチャン式』のディレクターに必要なのは「企画力」と「演出力」だ。

ところで、企画を考えることもナレーションを書く必要もなく、リサーチャーがいるほうが役に立つ番組『オモウマい店』で、構成作家はどんな仕事をしているのだろう。筆者の経験は話せるが、今どきのテレビは作り方もずいん変わっていることだろうなあ。

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