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広島を舞台にNFT短編アニメ映画『櫻姫物語』大浜監督が語る

メディアゴン / 2022年2月21日 9時47分

広島を舞台にNFT短編アニメ映画『櫻姫物語』大浜監督が語る

最近、急速に注目が集まっているNFTアート。デジタルアート作品のあたらしいあり方、デジタルコンテンツの新しい巨大市場のあり方としてアートとビジネスの両面から関心が高まっている。最近では、当初の投機的な目的から、作り手のコンセプトや活動方針をも巻き込んだ新しい芸術運動としてもその可能性が見出されている。

そんな中、東京ガールズコレクション創業者として知られる大浜史太郎(Jake Ohama)氏がNFTへの参入を表明し、話題を集めているが、その第一弾としてNFT連動の短編アニメーション映画『櫻姫物語(さくらひめものがたり)ー無条件の花ー(仮)』の制作が発表された。ファッション業界での成功者として知られる大浜氏がなぜ今、NFT連動したアニメーションを制作するのか。

本稿は監督を務める大浜史太郎氏とも親交のあるメディア学者・藤本貴之氏(東洋大学教授)を聞き手にプロジェクトの全容について初めて語ってもらった独占インタビューである。

* * *

聞き手:藤本貴之氏(以下、藤本)大浜さんは、初めて監督として短編アニメーション映画をつくるわけですが、そのきっかけや経緯について教えてください。

大浜史太郎氏(以下、大浜)僕は、いつもその時に浮かんだアイデアや日々のくだらない気付き等をメモや日記に書いています。その『日記ノート』だけでも、既に約180冊くらいあるんですね。2011年の東日本大震災の頃に、物語で何かメッセージを送れないかな・・・と考え始め、こつこつと最初は絵本向けの企画書を書いたり、物語として書き溜めてきました。その中の1つの企画が今回制作する短編アニメ『櫻姫物語(さくらひめものがたり)ー無条件の花ー(仮)』なんです。

2011年に東京ガールズコレクション(TGC)を含め、関連事業をいったん全て売却した後、国内や海外を旅する事が多かったので、その旅路の途中で入ったカフェやレストランでずっと書いてました。とくに印象的だったのは、ドイツのフェーマルン島からデンマークのロービュへ列車ごとフェリーに乗る列車の中でした。いろんなアイデアや企画案が頭の中に降りてきたのをよく覚えてます。

そのことをずっと知っていた僕の弟やSUNSPRING社の泉社長が「そのまま眠らしておくのはもったいないから、そろそろ作品として世に出しましょう」との提案がありました。それがきっかけです。その意味では、構想としては実はすごく長くて、たまたま今のこのタイミングで制作することになったわけです。

(藤本)大浜さんと言えば、TGCなどで『ファッションの人」という印象です。異業種からの参入ということになるのでしょうか?

(大浜)もともと僕はUSC(南カリフォルニア大学)の映画学部に入るためにアメリカに留学していました。USCって映画学では世界一難関の大学で、ルーカスやスピルバーグが建てたビルまであって環境は世界最高峰でした。しかしながら、とりあえずUSCに入れたのは良かったものの、僕は英語で脚本を書くのがどうも性に合わなくて、結局、卒業したのは国際関係学部でした。映画学部の単位を取るのはネイティブレベルの英語で、しかも気の利いた比喩やジョークを描く脚本力が必要でした。ある日先生に「僕は日本人だから、不利ではないかと。脚本を日本語で書いても良いか?」と尋ねましたが、先生が日本語読めないからダメだと断られました。当たり前ですよね(笑)。なので、もともと映画製作は最も興味のあるプロジェクトの一つでした。だから僕が今回、短編アニメ映画を作るのはとても自然な流れで、違和感とかはまったく感じていません。もとをただせば異業種という認識すらありません。もちろん、今回は日本の映画ですし。

[参考]東京ガールズコレクション創業者が創るNFT短編アニメ

(藤本)初監督作品です。不安や心配な事とかないですか?

(大浜)あまりないです。むしろ、ワクワクしています。どんなプロジェクトでも、企画の立ち上げは全てやることは同じだと思っています。実は、もともとキャラクターやゲームなどである程度の実績はあります。以前、girlswalker.comの編集長だった時代には「花宵ロマネスク」や「オレンジハニー」などの恋愛アドベンチャーゲームがPS2でゲーム化してます。約1300万枚以上売れた美容シートマスク「美肌一族」は、もともと僕が仕掛けた「悪女占い」での毒舌キャラクター診断の転用です。結果的に深夜ですが、テレビアニメ化までされました。

(藤本)なるほど、アニメなどの分野でのコンテンツ展開は既に経験をお持ちなわけですね。大浜さんといえば、東京ガールズコレクションや神戸コレクションなどのファッション分野という印象が強いと思いますので、今回の件で意外に感じる関係者の方も多いかもしれませんね。ところで、映画産業はコロナ禍で休館や入場制限が響き、全体的に厳しい状況が続いています。この厳しい環境からどう発信してゆく予定ですか?

(大浜)2007〜2008年頃にLA初のセレクトショップ「kitson」の上陸を手掛けました。これはもともと米国ロサンゼルスで大不振のブランドの再生事業として請け負いましたが、日本でロゴのイメージを刷新して、ほんの仕掛けの工夫をしただけで、約9ヶ月で130億円前後ものセールスを市場全体で記録しました。ブランディング的にこれが、良いのか悪いのかの議論はここではさておき、何かを立ち上げる時の基本は全て同じだと考えています。だから市況の良し悪しはあまり関係ないと思います。その時代に合わせて、新しい工夫や味付けをすれば良いだけなので。

あとは、市場にリリース(発売)したものがどうなるか、です。野球に例えるならば、一塁打になるのか、二塁打なのか・・・または三塁打とかホームランになるのか、くらいの違いの感覚です。「1つのコンテンツを、マルチソースで展開」する事が信条なので、全くこだわりはありません。今回は、短編アニメ映画を作るというよりも『櫻姫物語(さくらひめものがたり)ー無条件の花ー(仮)』プロジェクトという『カルピスの原液』を作るようなものだと例えられます。それをジュースにするのか、アイスやお菓子にするのか・・・くらいのつもりで楽しんでいます

(藤本)今回の舞台はなぜ広島なのでしょうか?

(大浜)僕は不思議と広島との縁があります。東京ガールズコレクションも、知らない人は多いかもしれメッセージは「ランウェイの先には広島がある。日本の祈り」がコンセプトでした。歴史的に見ても広島は「日本の転機」ですし、僕にとっても広島は『ターニングポイントの象徴』です。日本は戦争に敗けはしましたが、結果的には世界的に見て最も安全で穏やかな平和な生活を勝ちとって享受している。つまり「敗けて、勝った」という視点から見る事もできます。

人生では誰でも避けては通れない、苦悩や挑戦というのは必ずあると思います。その最もシンボリックなのが『HIROSHIMA』や『NAGASAKI』なのではないかと。この2つの都市は世界に勇気を与えられる非常に稀有な都市です。どうせならそんな都市から世界へ何かメッセージを送りたいと考えました。

(藤本)ところで、今回の『櫻姫物語(さくらひめものがたり)ー無条件の花ー(仮)』プロジェクトは、NFTと連動させた試みであると聞きました。いま、このタイミングで世界的なブームとなっているNFT(non fungible token)と連動させる狙いはなんですか?

(大浜)NFTは決して新しい技術ではありませんが、ブレイクしたのは昨年の2021年です。私自身、TGCをはじめ、今までブームというのは何度も経験したり、創り出しても来ましたが、NFTは少なくとも、これから3年〜4年はバブル的に拡大してゆくものであると思います。もちろん、バブルはやがてはじけますが、それで終わるのではなく、その間で落ち着き、NFTというあり方そのものが社会全体に浸透してゆくと思います。

プロジェクトの企画や仕掛けって、『タイミングが命』です。早すぎてもダメ、遅すぎてもダメ。今年から来年は、始めるタイミングとしてはちょうど良い頃合いなのかなと思っています。その嗅覚は、僕が長年培ってきた『勘』だともいえます。人それぞれ意見は違うとは思いますが、僕はそう見ています。

(藤本)今回制作する短編アニメ作品で、NFTとの組み合わせを選ばれた理由はなんでしょうか? 大浜さんと言えば、東京ガールズコレクションの印象が強いので、ファッション展開かと思っていたのですが。

(大浜)僕は、物語って、究極のNFTだと考えているんです。いわば、Non Fungible『Tale』。他のどれとも変えのきかない独自性が、この『tale=物語』の分野にはあります。よく考えてみてください。『竹取物語』や『源氏物語』なんて、1000年以上にもわたって現代社会にまで生き残っています。他に代わりがない、『非代替性』そのものです。

インターネットやNFTは、正直言って30年後にどうなっているかさえ分かりませんが、人の心を打つ物語やエピソードは半永久的に続いていく。ならば、それを組み合わせるのは僕にとっては必然でした。また、物語はたいてい特定の地域が発祥で、地元密着型です。これこそが『究極のNFT』の醍醐味であり、生き残れる確率で見たら安全性も断トツです。

幾つか例をあげると、僕がつくった「東京ガールズコレクション」は17年続いてます。僕がパリへ向かう列車の中で考えた「Cosme Kitchen(コスメキッチン)」は、日本で初めて立ち上げたオーガニックコスメのセレクトショップとして代官山から始まりもう18年です。毎日放送と特別共催として始めた「神戸コレクション」は誕生から20年を超えました。日本国内の90%以上の企業が10年以内に淘汰されている現実を考えれば、これは驚きの数字です。地元経済の密着型のエコシステムに変貌したお祭りは、生き残れる確率が非常に高いのです。

(藤本)日本国内で考えると、NFTへの誤解は多いと思います。子供のiPadで書いた落書きが何千万円にもなって投機的に転売されたり、朝目を覚ましたら自分のメモ書きが高額になっていたり・・・といった話がかりが注目されがちです。その意味では、「NFT=投機」の印象が非常に強いです。その意味では、まだまだ『非代替性』というNFTの真意というか真価に対する認知度や理解が深まっていないようにも思います。

(大浜)いつの時代でも誰でも理解出来ることはすぐに模倣されます。なかなか世間では理解されないないからこそ大きなチャンスがあります。つい10数年前から始まったビットコインなどの代表的な暗号資産(仮想通貨)などもさんざん『怪しい』とか、そのうちFRB(米国中央銀行)とかに禁止される・・・と言われ続けながら、暗号資産は誕生してから数十万倍、数百万倍になりました。もう一度強調して言いますが、数百万倍ですよ!? ビットコインの今後は分かりませんが、ここまで来ると、この新しい流れに乗らないこと自体が、一生のリスクになってきます。

暗号資産やNFTは、冷静に考えれば実に不可思議で、もはや一般的な常識や理解は超えてます。一方で、100%完全に理解する必要もないのかなとも思います。だって暗号資産のプロと言われてる人たちでさえ、いつも手探りですし、本音は誰も理解できていないのですから(笑)。誰もこれからの金融の世界やデジタルアートの行方は分かりません。だから大切なのは、新しい分野にも少し保険をかけておくこと。試しに買ってみたり、投資してみることです。とりあえず行動にうつしてみることですね。結局、たったこれだけのことを出来た人たちが、後々に大きな差になって現れるのだと思います。

[参考]<実録TGC:第1回>東京ガールズコレクション創業者が語るTGCからNFTへ

NFTには単なるデジタル鑑定書のような側面もあります。ただし、所有者や本物である事は証明できても、コピーや模倣品の抑制にはならない。だから、NFTそれ自体に価値があるのではなく、「NFTを有効活用できる人たちのプロジェクトに価値がある」ことをきちんと理解しておく事ですね。それならリスクも最小限に抑えられるはずです。どうせ選ぶのなら、仮に損したとしても満足度の高いプロジェクトであれば、それほど後悔もしません。そういうものを選ぶと良いと思います。自分がワクワクできるプロジェクトや賛同できるプロジェクトを選べたら最高ですよね。NFTにどんな体験が付加価値としてあるのか。十分に創作の過程を楽しめるなら、体験の質や満足度が高くなります。最上の体験は、いつでもお金で買える訳ではありませんので。

(藤本)NFTはよく分からない、怪しいし、危ないのでは?と不安やリスクを気にする人もいるかもしれません。どう思われますか?

(大浜)今のNFTの状況をインターネットの黎明期に例えるなら、ちょうど1998年〜2000年頃に似ています。NFTそれ自体に価値があるのではありません。NFTをどう活用できるのか、NFTにどんな体験やボーナスが付いているのか、活用方法や『NFTを使ったプロジェクト』にこそ価値があるのです。結局、NFTをどう使うのか、どう展開していくのは、プロジェクトを統括する人のビジョンや実行力、そして納品力です。優れた起業家ならたいてい始める時の実行力はあると思いますが、きちんと一度掲げたことを最後まで納品できるかは別の才能なのだと思います。

日本では誤解されている人も多い印象ですが、子供の落書きでも巨額で売れる・・・といったようなデタラメ投機がNFTの本質ではありません。だからもしNFTを、買ってみたり、投資したりするのであれば、どんなビジョンとどんな実績があるのかを総合的に見極める必要もあるのではないでしょうか。そのプロジェクトが何故始まるのか、フィロソフィー(哲学)や背景まで見るのは大切です。そうすれば、かなりリスクは軽減できます。

(藤本)アニメーションや映画コンテンツとNFTの相性はどう考えていますか?

(大浜)僕は、NFTとアニメーションや映画などは、非常に相性が良いと感じています。物語や映画のプロジェクトがNFTと相性が良いと感じる理由は、本人が望めばエンドロールや出版物に参加者や投資した方々の名前やニックネームを記録として残せることではないでしょうか。

納品物を自分の目で見て確認ができます。しかも、何度でも半永久的に楽しめるし、プロジェクトが産まれて成長していく姿を見守れるし、時代を超えて受け継がれていく。形を変えて、あらゆるビジネスに転用できる。ひょっとしたら、いつかディズニーがやってきて、世界中で映画化さたり、テーマパークのアトラクションになるかもしれません。想像するだけでも、ワクワクしませんか?(笑)

(藤本)今回の短編アニメ映画とNFTとの具体的な連動について教えてください

(大浜)いろいろとプランはあるので、ここでは語りきれませんが、ひとつ特徴的なことで言えば、日本初の『デジタル献花プロジェクト』というコンセプトを立てています。日本の広島からのデジタル献花を、世界へ発信するグローバルプロジェクトにしていければ良いなと。短編アニメ映画の中で描かれるデジタルアートを通して、広島への献花や、広島県内の桜の木の植樹や保全の振興に貢献していきたいと思っています。

最初は広島から始めますが、いずれ全国各地、世界の各都市へ波及させていきたいです。また本作の各シーンで描かれる美しい桜や花々、そして登場人物のキャラクターをNFTでプロモーション展開していきます。アニメーション映画を構成するさまざまなパーツをNFTでデジ タルコンテンツ化させる予定です。また、NFTで成立した収益の一部は、広島市への寄付や広島県内 の桜の木の植樹や保全の活動をしているNPO団体に貢献したいと考えてます。今回のプロジェクトはどれだけ多くの人に育ててもらえるのかがキーポイントになるのかなと思っています。

(藤本)なるほど、あくまでもグローバルな文化活動の枠組みがあって、そのこにビジネスとしてNFTが組み込まれている、というわけですね。短編アニメを作成して、それをNFT化して高額で転売しようとしてるんだな・・・と誤解してしまう人は多そうですが、これもNFTへの理解と認知が十分ではない日本では致し方がない・・・という感じでしょうか(笑)

(大浜)僕は、インターネットの黎明期に、日本で初めて携帯ネット通販で洋服を売ろうとした時も、東京ガールズコレクションを始めようとした時も、いつも最初は周囲からは理解されにくく、「ん〜?よく分からない・・・」「荒唐無稽だ」「こんなの無理だ」と散々言われてきました。しかも、その分野の専門家たちからです。しかし、それでも諦めずに、とにかく初志貫徹して取り組み続けた結果、いずれも成功するできました。だから、今回のプロジェクトも、周囲の皆さんが最初は理解しにくいのは折り込み済みです。だからこそ、このプロジェクトも、また上手くいくのかもしれません。だから、期待せずに、そっと見ててくださいといっておきます(笑)

(藤本)いいえ期待して、じっと見ています(笑)。それでは本日はありがとうございました。

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