<国会の信頼性?>欠席常連議員・居眠り議員はガーシーを懲罰できるのか?
メディアゴン / 2023年1月25日 7時30分
藤本貴之[東洋大学 教授・博士(学術)/メディア学者]
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当選後、国会を欠席し続けるNHK党のガーシー参議院議員。1月23日に招集された通常国会にも登院しなかったとして、与党・自民党はガーシー議員への懲罰を提案した。懲罰には、「除名」「登院停止」「議場での陳謝」「戒告」があり、一番重い「除名」ともなれば議員の身分を失う。
自民党は、このまま欠席が続けば、「国会の信頼が損なわれる」と判断したのだという。しかし、この報道を見て、「おい、お前らが国会の信頼などと言えるのか?」と違和感を感じる人は多いはずだ。
まず、近年多発している議場での「居眠り」などの不誠実な態度の問題。地方議会を含め、最近この話題は多いが、見聞きするたびに、我が国の政治の信頼性が著しく損なわれているな、と痛感させられる。従来であれば黙認されていたことなのかもしれない「居眠り」も、今は国会中継に映ったわずかな映像が切り抜かれ、SNSで拡散され、すぐにその不誠実が暴かれる。
他にも、昭和を代表する宰相である故・田中角栄氏が、1986年7月に第38回総選挙でトップ当選したものの、1990年の解散までの4年間、一度も登院しなかったことは有名だ。脳梗塞が原因で身体・言語障害が残ったことが登院できなかった理由であるが、いづれにせよ、一度も登院はしていない。これはどうなのか?
海外では、コロナ禍においてオンライン国会の議論も進んでいるが、事情があればオンライン参加可能性も議論されてしかるべきだ。今日、大学ですら「出席していれば単位がもらえる」というかつての遺習は根絶している。出席と活動実態や生産性、誠実さが無関係であることが明白であるためだ。それが知的行動であればなおさらだ。「登院している=仕事をしている=国会の信頼」は成り立たない。
もちろん、事情や許可なくオンラインにしたり、オンラインですら顔をださないようなことがあっては問題だが、NHK党はそのようなことは一言も言っていない。国会に出席したくない、と言っているのではなく、出席の方法として「物理的登院」しか許可されないのか? ということを問うているに過ぎない。オンライン登院が許されれば、間違いなく、ガーシーは日本一活動的な国会議員になっているはずだ。
国会議員としての仕事や活動実態は「物理的登院」によって証明されるのか? その根拠は? 我々一般有権者にはとうてい理解ができない。実際、登院しても議場で居眠りをしているような議員に対して、私たちはなんの信頼をよせていないではないか。
[参考]<芸名?自称?>日本最後の「助教授」成田悠輔氏の謎
週刊誌「フラッシュ」の調査によれば、2022年1月から6月に開催された第208回通常国会本会議に欠席率として以下のようなデータがある。
・山崎正昭(自民党・参)欠席率53.1%(32回中17回欠席)*元参議院議長
・北村誠吾(自民党・衆)欠席率51.5%(33回中17回欠席)*元閣僚
・島村 大(自民党・参)欠席率28.1%(32回中9回欠席)*元政務官
・伊波洋一(無所属・参)欠席率21.9%(32回中7回欠席)*元首長
・河野太郎(自民党・衆)欠席率18.2%(33回中6回欠席)*デジタル大臣
・江﨑鐵磨(自民党・衆)欠席率15.2%(33回中5回欠席) *元閣僚
ワースト上位2名の欠席率は五割を超え、3位も3割近い欠席となかなかのものだ。
一方で、庇うわけではないが、上記議員たちの欠席の理由は定かではないものの、彼らが国会議員として活動をしていないのか? 信頼を損なってはいないか? と問われればなんとも言えない。登院せずとも成果を出している可能性も高いので、「他に何もしてないクソ議員は他にいくらでもいるだろう」と言いたくなるからだ。
そもそも数値だけで言えば、ガーシー議員が3月に帰国して登院を開始した場合、会期である6月21日まで欠席をしなければ、上記のワースト議員の欠席率よりも低い数値となるだろう。その場合は、上記議員にも懲罰は提案されるのだろうか?
一方で、ガーシー議員は滞在しているドバイから情報やメッセージを無数に発信しており、「頻繁に国民に情報を発信している」ということは間違いない。その姿勢はさておき、「何をしているかわからない居眠り議員」と比べれば、確実に活動実態はあるし、動きも国民に可視化されている。
登院すればどのような発言や活動をするかも、本人だけでなく、NHK党・立花孝志党首からも繰り返し伝えられており、居眠りとか、消息不明とか、議員ができない病状とかではないことは明らかだ。あれだけ有名なのだから、逃げることも隠れることもできない。
欠かさず登院していても、なんの発言も、国民へのメッセージも届けようとしない議員に比べれば、ガーシー議員に活動実態はあると感じるの筆者だけではあるまい。
もちろん現行法令・ルールによって、ガーシー議員の態度が責められるべきであることは間違いないので、それを庇おうとは思わない。しかし、ガーシー議員を攻め、裁こうとしている側と日本の国会の仕組みにも、大いに問題があるのではないか。
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