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<注目の医療系スタートアップ>マイクロCTC検査を投資家が絶賛する理由

メディアゴン / 2024年3月10日 11時0分

<注目の医療系スタートアップ>マイクロCTC検査を投資家が絶賛する理由

岡部遼太郎(ITコンサルタント)

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近年、「ピッチコンテスト」という言葉を目にするようになった。

ピッチコンテストとは、スタートアップ企業家などを対象にして、投資家などが審査員となり、事業計画をプレゼンテーションして競うイベントのこと。優勝者には賞金が出たり、出資を検討されたりと、スタートアップ起業家にとってのメリットも多い。通称「ピッチ大会」とも呼ばれ、日本では、2000年代に入り続々と登場している。

ピッチコンテストを開催する代表的な団体の一つである一般社団法人日本スタートアップ支援協会が2024年2月に開催した「The JSSA TOKYO Pitch Award 」は、投資家などが200名、大企業から200名、スタートアップ400名の計800名ほどが参加した、国内ピッチコンテストとしては国内最大級であるという。

本大会で最優秀賞を受賞したのは株式会社セルクラウド・代表取締役の中島 謙一郎氏。国内最大級のピッチコンテストで最優秀賞を受賞するような会社の事業企画とは一体どのようなものか? 起業家・投資家ならずとも興味があるところだ。早速調べてみた。


(一般社団法人日本スタートアップ支援協会代表理事・岡隆宏氏、株式会社セルクラウド代表取締役社長・中島 謙一郎氏)

同社の事業内容は、マイクロCTC検査を活用したがんリスク検査サービスの提供である。わかりやすく言えば、「これまで1日がかりで行なっていた『がん検診』を、所要時間5分、たった1回の採血で全身のがんのリスクが明確にわかるマイクロCTC検査を提供する」というものだ。

例えば従来のPET/CT主体の全身がん検査や、MRI主体の全身がん検査も実は苦手な部位や足りない部位が沢山あり、本当に全身をくまなくチェックするためには胃や大腸の内視鏡の追加などで、所要時間も9~10時間くらいかかり、時間・コスト・身体的負担は大きい。世論調査では、がん検査をうけない一番の理由が『うける時間がない』となっていることからもわかるように、これが障壁となって、なかなか普及しなかった。一方で、マイクロCTC検査では、たった5分で全身のがんリスク検査が出来るという。

このサービスがいかに衝撃的であるかは、2022年に起業した同社が、昨年末段階で10億円を超える資金調達に成功しているということからも明らかだ。なるほど、こういった事業企画がピッチコンテストで入賞するのだなと痛感させられた。

実際に投資をしている人にも話を聞きたいと思い、セルクラウド社への投資に参画しており、IPOコンサルティングを強みとする総合型アカウンティング・ファーム※のAGSグループ代表で、公認会計士で税理士の廣渡嘉秀氏に話を聞いた。(※年間で上場する企業の実に4分の1はAGSグループがコンサルティングを行っている)

* * *

 【利き手:岡部遼太郎(以下、岡部)】廣渡さんは投資会社・税理士法人の経営者として厳しく企業を観察していますよね。そんな中でセルクラウド社への投資を決めた理由は何ですか?
 【廣渡嘉秀氏(以下、廣渡)】一言でいいますと、セルクラウド社が提供しているがんリスク検査「マイクロCTC検査」に大きな可能性と魅力を感じたからです。
 【岡部】実は私も中島社長のプレゼンを聞いて驚きました。誰でも中高年になるとがんへの不安が高まり、検査が頭をよぎります。しかし、時間的にも身体的にもリスクの多いがんドッグには腰が重いです。しかし、わずか5分、1回の採血で完了するなら、行きたくなりますよね。
 【廣渡】マイクロCTC検査の「簡便さ」と「信頼感」は、これまでのがんリスク検査サービスよりも圧倒的に高い。たった5分で全身のがんリスク検査が出来るのであれば、中高年は受けない理由がない。しかも、マイクロCTC検査は科学的な根拠や実績も十分なので、国内でサービスの拡大が容易に想像できます。例えば、従来のがんリスク検査は全て間接的ながんの傾向値を測るだけでした。こんな遺伝子の人はがんになりやすい、こんな因子が増えている人はがんの可能性が高い、などのリスク指数を表すだけで「あなたの診断結果は、『E判定』です」のような結果が提供されます。なんとも曖昧です。それに対し、マイクロCTC検査は、「4mlの血液中にCTC(血中循環腫瘍細胞)が1個検出されました」といったように、具体的な腫瘍細胞の個数を明示してくれるのです。がん細胞そのものが検出されるので、『体のどこかにこの元になっているがん細胞があるんだ』と、受けた方にとっても検査結果に対して圧倒的な納得感があるのが特徴です。さらに、世界有数のがんの治療・研究施設の米国MDアンダーソンがんセンターが開発した特異度(がんでない人が陰性となる正確性)が94%を超えている抗体を利用しているというから驚きです。この絶対的な信頼性が投資決定の最大の理由とも言えます。
 【岡部】思わず投資したくなる案件ですね。
 【廣渡】しかも、国内の検査医療や予防医療というのは、日本ではまだまだ新しい分野なので、イニシャルコストに対して、伸び代が大きく、我々投資家としても、今後飛躍的に伸びてゆく会社であると期待できます。今後の可能性という点も投資先としては重要です。市場の観点からみても、予防医療やそのサービスに関する現在の世界の市場規模は、年間3,257億4,000万米ドル、日本円で71兆8,844億円と推定されています。今後ますますの成長が見込まれていて、2029年までには5,907億6,000万米ドル(88兆7921億円)にまで至るとの予測です。これは世界の半導体市場とも同レベルの規模ですからね。しかも、超高齢化社会である日本では特に強烈な拡大が期待されます。

* * *

文部科学副大臣も出席する、国内最大級のピッチコンテスト「The JSSA TOKYO Pitch Award」で最優秀賞を獲得したのがセルクラウド社の展開するマイクロCTC検査である、ということはなかなか象徴的だ。インタビューに答えていただいた廣渡氏によれば、国内でのベンチャーキャピタルによる投資先に占めるヘルスケア領域の割合は、この5年間で、3%から17%に増加し、投資金額も11%から27%へと大幅に増加。ヘルスケア領域は「景気の影響を受けにくく、収益力が高い投資先」であると言う。

廣渡氏は「数年後には、がんリスク検査は仕事の合間に受けるもの」ということが新常識になるというセルクラウド社の提言にも強い可能性を感じたという。

なるほど、このような事業がピッチコンテストで入選し、多くの投資を集めるのだな、と思わず納得させられた取材だった。

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