<日本を美容医療大国に>業界を牽引するカリスマ医師に聞く(1)美容医療の信頼性
メディアゴン / 2024年5月29日 7時0分
岡部遼太郎(ITライター)
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脱毛や脂肪吸引、二重まぶた手術、審美歯科など、美容を目的とした美容医療が急激に成長している。プチ整形やアンチエンジングなど、「美容整形」の言い換えもあるだろうが、肉体的、精神的な生活の質(QOL:Quality of Life)を高めることを自己投資と考え、自由診療であるにもかかわらず、そのニーズは年々高まり、国内での市場も急拡大している。
美容医療と言われると、医学の世界では外科や内科といった分野に比べると傍流のように扱われていることはよく知られている。日本の美容医療の草分けである高須クリニックの高須克弥院長でさえ、美容医療の道に進む際には「病気ではない人間にメスを入れるな」と家族から糾弾され、勘当寸前になったという有名な話がある。
一方で今日、美容医療の市場規模は4000億円を超えており、医療分野の中で急速に成長している分野になっている。4000億円がどういう規模か。これは、日本のがん医療の市場規模が1兆2000億円といえばわかりやすいかもしれない。国民病と呼ばれる「がん」の医療市場の三分の一に迫る市場なのだ。ちなみに、インフルエンザ治療などのワクチン市場は600億円であることを考えれば、美容医療がいかに巨大な医療市場であるかがわかるだろう。
もちろん、医師の組織規模でもその傾向は顕著だ。有名医大の形成外科の医局に所属している医師の数は多くても200人程度とされる。しかし、その整形外科の一分野にすぎない美容医療がその組織規模も大きく上回ると言われる。大手の美容整形クリニックチェーンでは、300人、400人といった巨大な医師組織を有しているからだ。これは言い換えれば、多くの優秀な医師が美容整形の分野に結集していることを意味している。
国内での成長が著しい美容医療。「日本を美容医療大国に」という声も聞こえているが、課題や問題も少なくない。我が国の美容医療はこれからどこへ向かうのか。日本の美容医療で急成長を遂げたことで注目を集める一般社団法人AND medical groupの代表医師を務める河合成海医師に聞いた。
(以下、インタビュー)
* * *
<「治す」と「高める」の美容医療>
インタビュアー・岡部遼太郎(以下、岡部):美容医療の分野の急成長が注目されています。かつては韓国やタイなどでの「整形ツアー」などが注目されていましたが、日本国内でも本格的な普及と浸透をしているという印象です。
河合成海医師(以下、河合):そうですね。日本もいよいよ美容医療大国へと歩みを進め始めている、というのが現場の専門医としての実感です。一方で、日本人は医療に対して非常に高いクオリティや安全性を求める国民性ですから、信頼できるクリニックや実績のある医師のニーズが急激に高まっています。
岡部:美容医療にはトラブルも多いと聞きます。
河合:しっかりとしたクリニックであれば、大きなトラブルに遭うことはないでしょう。安易な選択が患者様にとって取り返しのつかない後悔へと発展する・・・ということだけは、美容医療従事者として絶対に避けなければなりません。美容医療は、私たちの生活をより豊かにするための、いわばQOL医学です。「治す」だけではなく「高める」ことも目的ですから、患者さんの求める要求はすごく高いんです。
岡部:「治す」と「高める」ですか。
河合:「治す」とは加齢による不安を取り除いたりする、いわゆるアンチエンジングなどの医療です。「高める」とは、例えば鼻を高くするなど、自分自身を前向きにするための美容整形を含む医療のことを指します。私たちのクリニックでは、「治す」と「高める」の二軸により、患者さんが明るいマインドになれる医療を目指しています。
岡部:AND medical groupは、4年間で27ものクリニックを開院していますが、その勢いの背景にも、患者さんたちの高クオリティニーズは影響していますか?
河合:それは間違いありません。私たちは、患者さんのニーズや永続的なウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)も医療の一部としてとらえ、「『美しくなる』は、人間の権利だ。」をコンセプトに、医師・スタッフが一丸となってクオリティ向上を徹底してきました。それがクリニックの成長に大きな影響を与えていると思います。
岡部:クリニックのホームページに書かれている「『美しくなる』は、人間の権利だ。」という言葉、インパクトがありますね。
河合:美容医療は特別なことではありませんが、日本では、まだまだ敷居が高いことも事実です。美容医療が人間の権利の一つになることが、私たち美容医療に携わる者のこれからの挑戦だと思います。
<良質なクリニックの条件>
岡部:クリニックのクオリティを見極めるための基準などはあるのですか?
河合:もちろん、あります。最近は、インターネットやSNSなどで、すぐに情報が拡散され、共有されます。患者さんにとっては、自由診療で大きな負担があるわけですから、必死に情報を集めています。そしてその情報性はかなり鋭いです。
岡部:医療機関に限らず、あらゆるサービスが、「やすかろう、まずかろう」ではすぐに消えてしまう時代ですしね。
河合:高いクオリティを持つクリニックには患者さんが集中し、予約に何ヶ月もかかるようなケースも少なくありません。いわば病院や医師の格差が大きいのが、今日の美容医療の特徴でしょう。
岡部:確かに、自由診療であるからこそ受診する側としては、徹底的なリサーチをしますよね。
河合:その通りです。美容医療を受診される方の知識や認識は、こちらが驚くほど高いです。誇大広告やごまかしはすぐにバレてしまいます。
岡部:口コミサイトなどでも、患者からの辛辣な書き込みをよく目にします。
河合:口コミはクリニックとの相性や患者さん自身の主観も多分に影響しますし、そもそもステマもありますから、全て鵜呑みにしてしまうことは危険ですが、一定の参考にはなるでしょう。ただし、少し専門的に言わせてもらえば、医療技術の信頼性は、やはり手術実績の数に完全に比例します。クリニック選びには、まず、手術の実績数を確認することをお勧めします。
岡部:Web広告などでひたすら安さばかり強調されていて、医師やクリニックとしての実績数が見えてこないものも多いですよね。
河合:医療は価格だけでは判断が難しいです。確かな技術や経験のある医師による医療行為は、そもそも人件費が高いからです。価格以外の面でも判断基準を持つことが大切です。例えば、AND medical groupの手術実績は年間67,000件[註]を超え、これは国内でもトップクラスだと自負しています。そしてこの数値こそが、信頼性の基準になっていると思っていますし、クリニック成長の要因になっているはずです。[註]施術カルテの記録数より
(次回6月に続く)
* * *
自由診療で高額な医療費負担を伴う美容医療であるからこそ、患者が求める要求水準は高い。美容医療に関する情報はSNSなどで溢れており、少しでも悪い評判は瞬時に共有されてしまう。河合医師のいう「美容医療の格差」という言葉は、今後の我が国の医療ビジネスを考える上でも、重要なキーワードになるだろう。
引き続き本誌では、安心安全な美容医療を知るための河合医師のインタビューを掲載する。
※写真は河合成海医師より許諾を受けて提供していただいております。無断での転載は固く禁じます。
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