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<生成AIをビジネスの日常に>若手事業責任者が挑む生成AIの民主化

メディアゴン / 2024年7月17日 7時30分

<生成AIをビジネスの日常に>若手事業責任者が挑む生成AIの民主化

岡部遼太郎(ITライター)

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2023年から今年にかけて、最大の話題といえば「ChatGPT」であろう。2022年11月に発表された「ChatGPT」はわずか2ヶ月で登録者数2億人を超え、以降、怒涛の勢いであらゆる場面で生成AIが広がった。テキストは言うまでもなく、画像・映像・音楽に至るまで、AIはありとあらゆるコンテンツを生成するようになっている。

生成AIが作り出したコンテンツの中には、人間のクリエイターが手間暇かけて作成したものと遜色がないレベルのものまで登場しているが、生成AIブームもひと段落した2024年は、それらが本格的にビジネスシーンへと持ち込まれる段階だろう。

ビジネス分野での生成AI利用への認知や期待は高まっているが、実際のビジネス現場で積極的に利用しているケースは多くないというのが実情だ。注目も関心も高まってはいるが、本格的なビジネス導入に対してはまだまだ慎重な企業が多い。

「AIに対する不信感」もあるかもしれないが、ビジネスシーンへの生成AI導入はこれからの日本のビジネスシーンでは急務・不可避とされる。ソフトバンク社の孫正義社長は、「これからの20年でAIの知能は人類叡智総和の1万倍になる。それは、人間対サルではなくて人間対金魚」(SoftBank World 2023より)というレベルにまでなると力説した。

世界的には、本格的なAIのビジネス活用が始まっており、今後は日本でも積極的なAIの利用ができるかどうかで、事業の生産性の違いを大きく生み出すのだ。

一方で、日本でも関心は持たれてはいるし、その認知や重要性も高まっているにも関わらず、ビジネスシーンへの浸透はまだまだ進んでいない。本稿では、日本のビジネスシーンにおいて、なぜ生成AIの浸透が進まないのか?という問題について、生成AIについての知見と課題意識を持ち、社会課題解決に向けた事業を展開しているオープン株式会社の大和田将平氏に話を聞いた。

大和田将平氏は、同社のRoboRobo事業部・事業開発責任者として辣腕を振るっている。
オープン株式会社は、最先端のAI技術を利用して企業のバックオフィス業務自動化クラウドサービス『RoboRobo』などを開発・提供しており、「ヒトの進化を共創する」をミッションに、テクノロジーで人の可能性や能力を「拡張」できる社会を作っていくことを目指している会社としても知られる。

***以下、インタビュー***

インタビュアー・岡部遼太郎(以下、岡部):現在はどのようなことに取り組まれていますか?

オープン社・大和田将平氏(以下、大和田):私たちが目指していることを一言で言ってしまえば「ビジネスシーンにおいての生成AIの民主化」です。

岡部:生成AIの民主化ですか。汎用化などとは違うのですか?

大和田:はい、あくまでも民主化です。敷居の引き下げと言い換えることができるかもしれません。例えば、現在、さまざまなSaaS(Software as a Service)がありますが、「結局、入力作業が必要」なものが多いと感じています。今後、生成AIが使いやすくなり、どんどん汎用化していき、機能拡張がされたとしても、ユーザーがやらなければならない作業は残ります。このあたりがAI導入への障壁になっていると思います。私は、このような課題の解決を実現したいと考えています。

岡部:確かに、インターフェースは便利そうでも、結局、膨大な入力作業を強要されるものは多いですね。

大和田:それはSaaSを導入した企業で働く多くの方々が持っている不満だと思います。私が意識しているのは「ヒトの意思決定をサポート」することと「コパイロット型=簡単な指示・依頼・選択で作業が完了」を主軸にすることです。

岡部:それは具体的にはどういうことでしょうか?

大和田:分かりやすく言えば、生成AIを誰でもワンクリックで簡単に、「生成AIを使っているということを意識させず、自然な流れで使える」サービスのことです。「わかりやすさ・簡単さ・ワンクリック」で完了するサービスへのこだわりこそ、他社との圧倒的な違いです。

岡部:御社のようなサービスが登場することで生成AIのビジネス利用はどんどんわかりやすく、簡単になっていると思います。それでも、日本では生成AIのビジネスシーンへの浸透がなかなか進んでいないと聞いていますが、なぜでしょうか?

大和田:昨年来のChatGPTブームにより、日本でも生成AIが画像生成や文章要約を行えることは広く理解されるようになっています。しかしながら、実際のビジネスシーンで、どうやってそれらを活用すれば良いのかわからないことが課題になっています。

岡部:実際の業務へ導入するためには具体的な活用方法の理解が不可欠ですよね。

大和田:インターネットイニシアティブ(IIJ)社が2024年2月15日~2月22日に行った調査によれば、「生成AIの導入状況」として、「業務に本格的に取り入れている」と回答したのがわずかに9%。程度の差こそあれ、91%が本格的なビジネス導入に至っていない、ということがわかります。

岡部:そんな状況では日本の国際競争力はますます海外に差をつけられそうですね。

大和田:そうですね。そうならないためにも、まずは生成AIがビジネスシーンの業務改革に大きな貢献をできる、という事実を知っていただきたいですね。

岡部:大和田さんは具体的に、どんなサービスを作られているのでしょうか?

大和田:まずは私が管掌しているサービス、RoboRoboコンプライアンスチェックにて実装し、実証を行っています。コンプライアンスチェックという業務は一般的に、インターネットで情報を検索し、検索結果一覧を眺めて記事を確認、そのうえで記事詳細をしっかりと読み込む必要があるなど、膨大な時間がかかる作業です。それに対して、私たちは、生成AIを活用することで圧倒的な業務改革を実現させるサービスを提供しています。RoboRoboコンプライアンスチェックでは、生成AIを活用し、取引先調査時の記事の重要性を自動で選定することができるため、チェック時間も1件30秒ほどと業務時間を圧倒的に削減できます。また同種の調査を従来の方法で実施するよりも圧倒的に安いです。このようなことが生成AI導入のメリットだと思いますが、他社にはないアドバンテージを活かして、幅広くビジネスシーンに生成AIを浸透させていきたいと考えています。

岡部:それはすごいですね。最近はコンプライアンスチェックがあらゆる業種で不可欠な業務になっている一方で、膨大な人的リソースが割かれるので、困っている企業は多いと思います。

大和田:これはあくまで一例なので、日常の業務内で生成AIを活用できるシーンを増やしていくため、さらに多くの利用に向けた開発を進めています。

岡部:最後に、「生成AIの民主化」に取り組まれている大和田さんの思いについてきかせてください。

大和田:何よりも「どうやったら、お客様の本質的な業務改革になるのか」というお客様第一の視点を持つことです。流行の生成AIを使うだけではなく、業務に対してどのように活用すれば業務改革になるのかを考え、お客様が自然と生成AIを利用している社会を作りたいと常に考えています。会社は常にチャレンジを応援してくれる環境でもあるので、生成AIの民主化に本気で取り組んでいきたいと思っています。

***以上、インタビュー***

独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計によれば、2022年に6902万人だった日本の労働人口は、2030年に6556 万人、2040年には6002万人へと減少するという。20年足らずで1000万人近い労働人口がいなくなるのだ。コンプライアンスチェックのような、従来、「手間のかかる仕事」「細心の注意が必要な仕事」とされてきた業務は、高機能なAIを導入することで、作業効率を上げ、労働負荷を下げる対策をしなければ、企業としての破綻は目に見えている。

「RoboRobo」の事例を通して、今後の我が国におけるAIのビジネス導入のあり方に気付かされたように思う。ぜひ、読者各位の勤務先でも議論のきっかけにしていただきたい。

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