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<日本を美容医療大国に(3)>美容医療業界はレッドオーシャン?

メディアゴン / 2024年7月31日 7時0分

<日本を美容医療大国に(3)>美容医療業界はレッドオーシャン?

岡部遼太郎(IT)

***

帝国データバンクの調査によれば、近年、医療機関の倒産が増加しているという。倒産件数は2年連続で40件を超え、大型倒産も多く、負債総額も253億7200万円と過去10年で最大になっている。医療機関さえも、サービスや技術によって、厳しい競争原理にさらされているのだ。

その背後にあるのはSNSなどのインターネットによる口コミや情報共有環境の隆盛だろう。あらゆる場面で口コミサイトやSNSによる情報共有がなされ、不十分なサービスや技術では、すぐに「悪い口コミ」は広がり、客足が減少する・・・といった事態にも発展している。

筆者も例に漏れず、病院やクリニックに行く時は、ネットの口コミやSNSのレビューを必ず確認している。結果、評判の良いクリニックを選ぶことになり、常に予約は取りづらい。評判の良い病院やクリニックには、常に人が押し寄せ、悪い口コミのついている病院やクリニックからは客足が遠のき倒産に至る、という「二極化」の時代が医療現場にもいよいよ訪れていると言えよう。

一方で、特に、美容医療のような「病気や怪我を治す医療」ではなく「自己を高める医療」の分野では、病院の倒産増加とは逆行するように、日本での市場は拡大している。例えば、2019年度には4070億円ほどの市場であった美容医療は、2023年度には、5940億円にまで上昇している。これは4年で1.5倍になっていることになる。

一般に、美容医療の顧客層は流行や口コミに敏感で、良質なサービスや技術への関心も高いといわれる。これは、旧来の病院経営に対して、美容医療分野が、顧客ニーズに対して適切なサービス提供を実現させている結果であるとも考えられる。

本誌では『「美しくなる」は、人間の権利だ。』をスローガンに掲げ急成長で注目を集めている一般社団法人AND medical groupに着目し、同グループへの取材を通して、日本の医療現場の現在を紹介している。3回目となる今回は、河合成海医師とともに、AND medical groupをビジネス面で牽引する法人代表・草野正臣氏に話を聞いた。

(以下、インタビュー)

<二極化する医療業界>

インタビュアー・岡部遼太郎(以下、岡部):近年、クリニックや病院の倒産が増加しているといわれています。実際に医療法人を経営する立場から、実感はありますか?

AND medical group代表・草野正臣氏(以下、草野):そうですね、確かに病院の倒産は増えていると思います。SNSなど、誰もが情報発信できる時代なので、ちょっとしたことでも話題になり、炎上します。その意味では病院の経営も飲食店などのサービス業と同様に、慎重且つ戦略的にしなければならない時代です。

岡部:飲食店では、ちょっとした口コミでバズりもすれば、倒産もしますからね。

AND medical group代表医師・河合成海氏(以下、河合):医療機関も同じような状況になっているかもしれません。特に大きな広告は打ってはいない「隠れ家的なクリニック」なのに、人気レストランのように予約が全然取れないクリニックをいくつも知っています。

岡部:一方で、大手を含め、倒産する医療機関が急増している。

河合:医療の多様化、患者さんのニーズの高度化の結果でしょう。病気や怪我を治すだけの医療から、美容医療のような「プラスアルファ」「自己を高める」ための医療に対する患者さんたちのチェックはすごく厳しいです。医業としてだけでなく、サービス業やカウンセリング業としても高い技術が求められます。

岡部:医療機関も二極化の時代というわけですね。

河合:はい、その通りです。美容医療の医師の数は、ここ10年で倍増しています。AND medical groupでも、2023年度の1年間でドクター数は63人から104人に倍増しました。現在の日本の医療現場は、いわゆる「町のお医者さん」ではない、多様化した若い医師たちが、医療現場の技術とサービス水準をどんどんと押し上げている、という印象です。

岡部:一方で取り残されてしまう昔ながらの医療機関がどんどん倒産している・・・という状況なのでしょうね。

草野:もちろん、美容医療も例外ではありません。美容医療市場の拡大とともに、美容医療業界も、どんどんレッドオーシャン化しています。私たちAND medical groupのように、急成長しているクリニックがある一方で、苦戦を強いられているクリニックの話は尽きません。

河合:その意味では、どんなにレッドオーシャン化しても、しっかりとした技術とサービスが提供できれば、現在の状況は決してマイナスではないと考えています。結果的に技術とサービスの向上につながっているはずなので。

草野:レッドオーシャンが美容医療業界を強化している側面もあります(笑)

<良いクリニックの本質>

岡部:今は、昔ながらの個人経営の小さな診療所には厳しい時代かもしれませんね。

河合:いえ、そうとも言えません。個人経営の昔ながらの小さな診療所にも、ニーズはあります。実際に、個人経営の小さな診療所でも、ものすごく評判の良い、本当の意味でも「予約の取れないクリニック」はあります。必要な人に必要な医療を適切に届ける。それが良いクリニックの本質です。

岡部:逆に言えば、必要な人に必要な医療を適切に届けるというクリニックの本質を見誤れば、どんなに大きな宣伝をしても、患者さんは来てくれない、という意味でしょうか。

草野:その通りです。もちろん、広告や宣伝がそのクリニックを知るきっかけにはなりますし、無駄ではありませんし、重要です。しかし、それはあくまでも1回目だけです。2回目以降来ていただけるか。あるいは、知り合いや友達に口コミで宣伝してくれるか、紹介してくれるか、という点は、派手な広告とは無関係です。

岡部:AND medical groupは、4年間で27ものクリニックを開院されています。特にここ1年での14院のオープンは驚異的です。これは、美容医療業界最大手のグループをも凌ぐ勢いであると聞いています。

草野:ありがたい話ですが、もちろん誇大広告はしていませんし、無理な規模拡大などはしていません。おかげさまで、患者様に選んでいただき、自然と今のクリニック数にまで拡大させていただきました。今、「驚異的」という言葉を聞きましたが、実は、私たち自身が驚いています。

岡部:AND medical groupでは、ジュノビューティークリニック、AND美容外科、アトムクリニックなど、クリニックによって名前を変えて展開していますよね。こういったことも、成長戦略の一環なのでしょうか。

草野:そうですね。ブランディングの観点での戦略です。各クリニックの特性や所属する先生方の得意分野などから、名前を変え、コンセプトを明確にしています。これにより、患者様方にわかりやすさを提供するだけでなく、クリニックへのアクセスが容易になっていると思います。クリニックはファミリーレストランとは違います。どこで食べても同じメニューで、同じ味・・・とはいきません。所属している先生方が違えば、得意分野も違います。そうなれば、クリニックの名前が違っていた方が自然だと思います。患者様とドクターやスタッフとの相性だってあるはずです。

河合:それぞれのクリニックが独自の魅力と技術向上を目指し、良質なサービスを提供する。これこそが良いクリニックの本質です。グループ名がどんなに有名でも、それぞれのクリニックが不十分であれば本末転倒ですからね。

<美容医療業界への展望>

岡部:お二人は今後、美容医療の業界でどのような展望を持たれていますか?

草野:私たちのような自由診療がメインとなっているクリニックでは、患者様たちの口コミや評判が何よりも重要です。そのためには、確固とした技術と最高のサービスに裏付けられたブランディングが欠かせません。「なんとなく良い」ではなく、「突き抜けて良い」と思われることです。

河合:通常、医療法人グループの場合、代表医師の先生が、現場と経営の両方を統括しているケースが多いです。しかし、私たちは、経営を草野さんが、現場を代表医師の私が勤めることで、役割分担を明確にしています。それにより、お互いの得意とする部分を最大限活かすことができます。私たち医療従事者は医者としては、一流でも、経営者としては素人ですから。

草野:AND medical groupでは、2023年1月から12月までの1年間で、来院患者数は8.3万人増加し、施術数は4.8万件増加しました。それに合わせてドクターは41人増、スタッフは総計で184人増となっています。この成長を支えてくれているのは、「『美しくなる』は、人間の権利だ。」、「日本を医療美容大国に」という私たちの取り組みと患者様たちのニーズが合致した結果だと考えています。

河合:現場で患者さんたちと接している立場から見ると、私たちの熱意とモチベーションが、患者さんたちにも伝わっているような印象です。

草野:もちろん、熱意だけではなく、確実な技術と安全性は何よりも重要です。

河合:常に新しい技術、新しい医療機器などへのアンテナは鋭く建てています。それらの研修も欠かせません。

草野:そのあたりの采配は、河合先生の力量です。新しい技術への飽くなき探究心が、高度な医療と確実な結果を生み出していると思います。陣頭指揮を取る河合先生には、全幅の信頼をおいています。

岡部:経営者としての、今後のAND medical groupの方向性を聞かせてください。

草野:こういった取材などを受けると、まず短期間での拡大について聞かれます。もちろん、それについて語ることはできますが、「クリニックの数を増やす、グループを拡大させる」ということは、必ずしも我々のグループの目的ではありません。

岡部:ここまで成功しているのに、意外ですね。

草野:やはり、数ではなく、質です。業界内外から「AND medical groupは規模が大きね」といわれるよりも、患者様たちから「AND medical groupは信頼できるよね」といわれる方がはるかに嬉しいです。そして、それを目指すことで、結果的にクリニック数は増えていきますし、経営基盤も強化されると思います。

河合:それはその通りです。私もクリニックの規模について様々な方から聞かれることは多いのですが、嬉しい反面、その度に「規模拡大がすべてじゃない」と思わされます。まずは患者さんに信頼される確実な技術とサービスです。

(以上、インタビュー)

年々増加する病院の倒産。それと逆行するように、予約のとれないクリニックや、AND medical groupのような急成長する医療法人が存在するという二極化状態にある日本の医療現場。今後ますますその二極化は進むだろうと草野氏も河合医師も口をそろえる。

本誌では美容医療を中心に多様化し、複雑化してゆく日本での医療業界の現在について、両氏へのインタビューを通して、考えていきたい。

(編集部註:写真はAND medical group様よりご提供いただき許可を得て掲載しています。無断転載を固く禁じます)

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