<日本を美容医療大国に(4)>これからの美容医療クリニック経営
メディアゴン / 2024年9月20日 7時0分
岡部遼太郎(ITライター)
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今、日本の美容医療業界の成長が著しい。その背景にあるのは、より自分自身に最適化された自由医療への関心の高まりである。もちろん、それらの情報が瞬時に共有されてしまうSNSや口コミサイトなどの影響も大きい。
矢野経済研究所の調査によれば、2023年の美容医療の市場規模は前年比108.8%の5,940億円にまで至っている。美容医療の2010年の市場規模が2,384億円だったことを考えると、およそ10年で2倍以上の規模に拡大していることになる。
一方で、前回の本誌記事(<日本を美容医療大国に(3)>美容医療業界はレッドオーシャン?)でも特集したように、日本では現在、病院やクリニックの倒産が増加している。保険適用されて安価に診療を受けることのできる病院やクリニックの倒産が増加し、自由診療である美容医療業界の市場が急拡大しているという不思議な状況だ。
本誌では、創業からわずか4年で26ものクリニックをオープンさせたことで注目を集める一般社団法人AND medical groupの代表理事・草野正臣氏と、医業・士業を専門とするコンサルティングファームのスタイル・エッジ社 代表取締役・島田雄左氏に、急拡大する美容医療市場について話を聞いた。
(以下、インタビュー)
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インタビュアー・岡部遼太郎(以下、岡部):AND medical groupは、島田さんが代表取締役を務めるスタイル・エッジ社と二人三脚で経営戦略を作り上げていると伺いました。
AND medical group代表・草野正臣氏(以下、草野):AND medical groupも最初は失敗の連続でした。患者さんもなかなか来てくれませんし(笑)。そういう中で医療機関の集患にも強いスタイル・エッジさんを紹介され、お付き合いが始まりました。
スタイル・エッジ社 代表取締役・島田雄左氏(以下、島田):それまでの士業支援に加え、医業支援も事業として立ち上げました。AND medical groupさんは私たちの医業支援の最初期のクライアントであり、また、最初の成功事例です。
岡部:スタイル・エッジ社との連携を決断されたきっかけは何ですか?
草野:そもそも医療業界というのはすごく遅れている業界なんです。集患をするということ自体には以前よりは積極的ではあるものの戦略的ではない。経営という点においては、他の業界と同じレベルにすらなっていないことがたくさんありました。医療現場にビジネスや経営合理主義のような視点を持ち込むこと自体に嫌悪感を持つドクターも少なくありません。私たち自身も少なからずそういった側面はあるので、そこから抜け出すために、マーケティングや組織マネジメントなどの専門的なノウハウを入れようと思ったのが最初のきっかけです。
<クリニック数の拡大と広告効果>
島田:私たちスタイル・エッジは、それまで士業のプロフェッショナルの支援に特化し、インフラ、マーケティング、システム、人材派遣といった事業を展開していました。そして、そこで培ったノウハウを今度は医療業界にも活かそうと思っていました。
岡部:具体的にはどのような施策をとりましたか?
草野:当然ですが、最初は一院しかありません。その段階で集患をしようとしても、効率がとても悪いです。費用対効果や広告効率を考えると、まずはクリニック数・カバーエリアを増やすことが先決であることに気づきました。
島田:私たちが草野さんに提案したのが「クリニックの数を増やしましょう」といったことです。草野さんも医療経営のプロフェッショナルですから、広告効率の戦略の話をしましたら、すぐに応じてくれました。
草野:クリニック数が増えると、優秀なドクターやスタッフも増やすことができ、AND medical groupのサービスクオリティも安定させることができます。AND medical groupのブランディングを鑑みても、クリニック数の拡大は単に売り上げ規模の増加にとどまらない重要なポイントであると判断しました。
岡部:具体的には、どういうことでしょうか?
草野:地方にクリニックが増えることで、AND medical groupで、地方のドクターやナースも働くことができます。都市部にしかなければ、どんなにAND medical groupが魅力的な職場でも、地方にいる優秀なドクターは働くことができません。それはAND medical groupにとって大きな損失です。医療機関は結局、ドクターやナースの専門性や技量によってはかられますから、優秀な医療人材を全国から集めることが何よりも重要なブランディング、ひいては患者様へのサービスの向上につながるのです。
島田:ですから、草野さんは今でも全国飛び回って、地域の先生方と話をしています。
草野:人材が増えなければ、クリニックの数は増やせませんから。
島田:草野さんはAND medical groupに限らず医療経営の実績があるので、話には説得力があります。優秀な地方の人材をどんどんスカウトしてくれるので、それに私たちの戦略で店舗を増やし、相乗効果で今に至る・・・という感じですね。数字的なことで言えば、2020年に最初のクリニックを開院してから、今日までの4年間で、26院のクリニックをオープンできたことは、明確な成果と言えます。しかし、それは私たちの支援だけでできることではありません。AND medical groupの場合は、美容医療のクリニックとしてのコンセプトが確立していて、クリニックとしての狙いや立ち位置も明確だったことで、短期間で眼に見える成果をあげることができたのだと思います。
<スピーディーな医療経営>
岡部:士業・医業専門コンサルティングのプロの目から見て、急成長の要因はどこにあると思われますか?
島田:経営の観点で見ると、リーダーシップ、そしてスピードといった点があげられるかと思います。ブランディングを実現させるための草野さんを中心としたスピード感は他には類をみません。それはおそらく、代表医師である河合先生と経営代表である草野さんが役割を明確に分けた運営をしているからだと思います。
岡部:経営と医師のトップが同一人物だと意思決定は遅くなるものでしょうか?
島田:一概には言えませんが。ただ、役割の問題だと思うのですが、優秀なドクターが優秀な経営者とは限りませんよね。ドクターが経営トップを兼ねる場合は多いのですが、医師としては優秀でも経営の観点では意思決定は概して遅くなりがちだったりします。
草野:私たちは経営的視点とスタッフにとって働きやすい職場環境を作るために、客観的かつスピーディーな意思決定をしています。新しいサービス、新しい機器、新しいシステムの導入にも迅速に反映されるので、結果的にAND medical groupには常に最新の機器と最新の技術、サービスが用意されていると思います。
島田:そういったスピーディーな感性が結果的には、迅速な顧客ファーストのオペレーションにも繋がっていますね。
岡部:医療グループの経営トップとして意識していることは何ですか?
草野:私は代表理事ですが、ドクターではありません。ですから、クリニック現場と法人本部の役割分担を明確に分けることを常に意識しています。クリニックは、いうまでもなく先生方と、看護師たち、そしてそれを支えるスタッフで成り立っている業界です。その人たちが、働きやすい職場環境を作ること、維持することにすごく気を使っています。
島田:草野さんのスタッフへの気の使い方、ドクターへのフォローはすごいです。
草野:医者とか看護師という職業は、資格があればわりとすぐに全国どこででも働けてしまいます。職場環境が悪くなれば、当然、すぐに退職されてしまいます。風通しが良さそうにも感じますが、いつもドクターやナースが入れ替わっている状態だと、安定した医療レベルを保つことはできません。そうならないように、スタッフにとっての働きやすい環境づくりこそ、クリニックの経営トップとしての私の最大の任務だと思っています。
<医療経営の成功に求められる実績>
草野:医療機関経営というのは、最終的にはドクターの技術と実績に裏付けられていますから、表面的な広告や宣伝文句ではすぐに化けの皮が剥がれてしまいます。
島田:代表医師である河合成海先生の手術実績は2万件で、これは国内でもトップクラスです。
草野:AND medical group統括医師を勤めておられる林鍾学先生は、韓国の美容医療の第一人者です。韓国の美容医療の名医32人に選出されているだけでなく、日中韓のトリプルライセンスを持っていますので、韓国で美容医療を受けようと思っている方であれば、AND medical groupのクリニックで対応できてしまうレベルです。
島田:もちろん、AND medical group以外にも素晴らしいクリニックはたくさんあります。立派で驚くような実績を持っているクリニックも少なくありません。しかし、そういったことをうまく引き出し、広告として打ち出すことを必ずしも全てのクリニックが得意としているわけではありません。
AND medical groupの成功は、クリニックの実績と私たちの戦略がうまく合致した、本当の成功事例だと思います。
草野: 4年間で26のクリニックの開業に協力してくれた、スタイル・エッジさんには感謝です。おかげさまで多くの方からお褒めのお言葉をいただいています。しかし、私たち医療業界は、そこがゴールではありません。何よりも患者さんのニーズと要望をかなえ、安心安全に「患者様のお悩みを1つでも取り除き、自分をより高める」ことのできる医療の提供こそが、美容医療の最大の目的です。数値的な成功にあぐらをかくことなく、これからも謙虚に、そしてアグレッシブに美容医療の経営改革にチャレンジしたいと思います。
(以上、インタビュー)
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引き続き本誌では、専門家への取材・インタビューを通して、さまざまな側面から美容医療について考えていきたい。
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