<NISA金融機関変更開始>一人にひとつのNISA口座移管のチャンスは年1回!
メディアゴン / 2024年10月30日 7時0分
時田秀一(ライター)
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10月はNISA口座を保有している人にとっては、非常に重要な月である。10月から翌年のNISA口座の金融機関変更手続きが開始するからだ。
証券口座は複数持っている、という人が多いはずなのになぜNISAになると金融機関の変更や、口座移管といった話になるのか、初心者の方は疑問に思うだろう。その理由は至極単純で、実はNISA口座は「ひとり1座」しか保有できないからだ。新NISAで投資を始めた人にとっては、今回が初めての金融機関変更のチャンスである。そもそも初心者の方にとっては、金融機関変更ができるからといって、なぜ話題になるのか、自分には必要であるのかすら、わからないという意見が大半だろう。
そこで本稿では、NISA口座の取り扱いについて、なぜ複数の口座保有ができないか、その理由を解説しつつ、そもそも金融機関変更はするべきなのか、するのであれば何に気を付けるべきか、初心者にわかりやすい形で説明をしていく。
<NISA口座は一人ひとつしか保有できない>
証券口座と聞くと、複数のアカウントを使い分けている人が多いだろうが、NISAはちょっと違う。初心者の方はまずはここに注意が必要だ。なぜなら、NISAの口座は「一人ひとつ」しか保有できないからだ。理由は単純で、NISAは投資した金額に非課税枠がある点に起因している。もし、複数のアカウントを1人の人間が保持できてしまうと、非課税枠が無限に作れることになってしまうからだ。NISAの非課税枠は、国から投資機運を高めるために与えられたサービスのようなものなので、それが無限に使えるようになってしまうのはさすがにマズいというわけだ。
さて、ここで投資初心者であれば、違和感を感じるはずだ。
一人ひとつしか保持できない貴重なNISA枠は、できるだけ良いサービスで運用したい。しかし、NISA口座を開設した時は、よく事情もわからず、何となく作成してしまった。今思えば、現在の金融機関よりも良い金融機関でNISA口座が作れたはずなのに・・・と後悔?反省?をしている人も少なくないだろうが、それは我慢しなければならないのか、と。
さらに厄介なことに、一人ひとつしか保有できないはずのNISA口座を「仮開設」という形式で複数保有している状態になってしまうケースがある、ということだ。この辺りなかなかわかりづらい。一人ひとつのはずなのに、なぜ?
その原因はといえば、よく事情を知らない状態の時に、異なる証券会社で複数のNISA口座の開設申し込みをしてしまったことを想像するとわかりやすい。いや、そうしてしまった人はすでに読者にもいるだろう。「よくわからないので、適当に申し込んで使いやすいヤツを使おうと考えていた」といったことを理由にするパターンだ。
しかし、NISAの口座はいくら申し込もうが、有効になるのは上記の理由から1つだけである。しかも「どれを自分の有効なNISA口座にするか」は自分で選べない。なぜなら、証券会社は、顧客からNISA口座開設の申請を受けると、税務署に対して重複口座がないかの確認手続きを行うことになっている。確認依頼をうけた税務署は、依頼を受け付けた順に処理を行うため、結果的に最初に口座の確認をした金融機関のNISA口座が有効なものとして開設されてしまうからだ。ようは、それ以降に開設依頼が入った(あるいは重複確認がされた)口座は有効なNISA口座としては認められないというわけだ。つまり、非課税枠のない「単なる投資口座」になってしまうのだ。
もちろん、放置しておくと、その口座で利益が出た時には、普通に課税されるので、NISA以外の投資を考えていない人は、取消手続きをとらねばならない。つまり、ひとりにひとつの貴重なNISA口座は、慎重に選ばねば想定外の損をしてしまう危険性すらあるので注意が必要だ。
<NISA口座の金融機関は変更できる>
では、間違えて複数金融機関にNISA口座の開設申込をし、意図せぬアカウントを利用させられていたり、あるいは、事情のわからぬままに口座を作り、後から変更したくなったらどうするのか?初心者であれば誰もが不安になることだろう。
まず、NISAで契約している口座の金融機関は「変更できる」ということは確実に覚えておこう。誤った口座の契約をしてしまったとしても、後から変更ができるのだ。しかし、お手軽投資のNISAとはいえ、非課税枠の設けられているれっきとした金融アカウントなので、ゲームやSNSのアカウントのように、やりたい放題・・・というわけにはいかないので、注意が必要だ。
NISA 口座の金融機関変更には、2つの注意点(制約)がある。
(1)金融機関の変更は年1回まで
意外に思う人は多いと思うが、NISA口座の金融期間変更は年1回という制約がある。変更後に「また変えたいな・・・」と思っても、一回変更した後は、来年までは変更ができない。
(2)金融機関変更できる時期が決まっている
年1ルール以上に意外に感じるのは、金融機関の変更には時期が定められている、ということだ。多くの金融機関では、変更したい年の前年10月1日から当年9月末までに手続きを完了させなければならないとなっている。しかも、変更予定の年の1月1日以降にNISA口座での買付を一回でもしてしまうと、その年は金融機関変更ができなくなってしまう。素人にはまったく理解できないルールであるが、そういう決まりになっている。
さて、本誌では前回記事において、ネット5大証券のサービス比較、投資初心者向けの比較(https://mediagong.jp/?p=33894)を行ったが、その際、初心者にはSBI証券が一択ではないか、という結論に至った。ではこの「金融機関変更」についてはどうか。SBI証券を例に見てみたいと思う。
先ほども書いた通り、この10月から2025年度に向けた金融機関変更の受付が開始する。では、顧客満足度1位のSBI証券はどのような移管サービスを展開しているのか。
<顧客満足度1位のSBI証券のケース>
ネット証券各社は、10月からの次年度に向けた金融機関変更手続きの開始に際し、さまざまな情報発信を展開している。顧客満足度1位のSBI証券を見てみると、(1)移管手続きの完全WEB化、(2)景品総額1億円キャンペーン、(3)金融機関移管Q&Aセミナー開催、の3つが目をひく。もちろん、金融機関変更の積極的な告知はSBI証券に限った話ではないが、ここまで大規模にキャンペーンを打っているSBI証券はさすが頭ひとつ以上飛び抜けている。
(1)移管手続きの完全WEB化
従来、NISAの移管には、個人情報を含めたさまざまな書類を郵送などで提出する必要があったが、SBI証券ではそれが完全にWEB化している。現在の金融機関で廃止通知をとりよせ、その情報をSBI証券にWEBから入力すれば、移行申し込みは完了するという簡便さである。もちろん、他社でもWEBサービスはあるが、ここまで簡略化されているのはさすがSBIと思わざるを得ない。
(2)景品総額1億円キャンペーン
ちょっと驚くべきキャンペーンだが、SBI証券では、NISA口座開設に対して、景品総額1億円という、いわゆる「お金配り系」の企画を展開している。キャンペーンSNSのフォローやリポストしただけでギフト券がもらえたり、口座の新設・移管のいずれかで、もれなく2,000円がもらえたり、投信積立のデビューもしくは増額をすると最大10万円があたる抽選に参加できるなど、とにかく、大盤振る舞いを展開している。そもそもキャンペーンのWEBサイト自体が、年末ジャンボ宝くじのような勢いで作られているあたりもさすがだ。
(3)金融機関移管のQ&Aセミナー開催
「お金配り」に目が行きがちだが、ネット証券ではない既存の証券会社なみに丁寧で地道なサービスも抜かりなくやっている点もさすがSBIと感心させられる。オンラインセミナー企画「SBI証券Q&Aセミナー(テーマ)NISAの金融機関変更」は、事前申し込み制でYouTube Liveを使ってNISAの解説セミナーをするというものだ。解説セミナーといえば、従来の窓口型の証券会社の専売特許であるような印象だが、それをオンラインで、しかもQ&A方式で行うというわけだ。
国内最大ユーザー数1,300万件を誇るSBIグループだけに、さすがのラインナップだが、特筆すべきでは、ネット証券ならではの勢いあるキャンペーンを打ちつつも、既存の窓口型証券会社の得意分野すらもカバーしている点であろう。
SBI証券は、2024年に入り、新NISAの開始に合わせて顧客拡大の大規模なキャンペーンを展開してきたが、この10月の金融機関変更シーズンの到来にあわせて、「NISA口座はひとり1つしか持てないけど、移管できます」という周知を切り口に、顧客拡大キャンペーンの第二弾を展開しているようだ。
そのかいもあってか、SBIの決算資料によれば、他社からSBI証券の金融機関変更は、ネット証券2強のライバルである、楽天証券からの移管が大きな割合を占めている。
ネット証券2強がいよいよお互いの食い合い、奪い合いを始めているようだが、私たち消費者の側からしてみれば、それは結果的にサービスの向上やキャンペーンの多様化につながるので、悪いことではない。
どんどんしのぎを削り、サービス向上を進めてほしいと思う。
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