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<スイス公文学園高等部の底力>総合選抜型入試で圧倒的な進学実績の秘密

メディアゴン / 2024年12月5日 7時0分

<スイス公文学園高等部の底力>総合選抜型入試で圧倒的な進学実績の秘密

岡部遼太郎(本誌ライター)

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現在、日本の大学受験は大きな過渡期にあると言われている。現在の受験生の親世代(いわゆる団塊ジュニア)が体験した受験とはまったく異なる大学受験の仕組みが一般化しているためだ。

大学入学者に占める割合は、学校推薦型入試が30.5%、総合選抜型入試が20.6%。合計すると実に51.1%が、いわゆる「一般入試以外」で入学している(株式会社リベルタス・コンサルティング調べ)。その数値は年々上昇しており、もはや大学受験の主戦場は年明けの一般入試ではなく、総合型や推薦などの「年内入試」へとシフトしていると言える。

総合選抜型とは、筆記試験一発ではなく、大学が求める学生像(アドミッションポリシー)を提示した上で、そこに合致した受験生を、多様な方式で評価して、合否を決めるという入試である。書類審査(内申書)にくわえ、面接や小論文、あるいはプレゼンテーションなどを組み合わせて、総合的に評価することから「総合選抜」と呼ばれる。

総合選抜型は、かつて「AO入試」と呼ばれていた入試方式である。旧AO入試も、アドミッションポリシー入試であるが、親世代からすると「一芸入試」などと揶揄されたこともあり、あまり良い印象はないかもしれない。しかし、今日の総合選抜はむしろ一芸入試とは最も遠い位置にある多様性入試と言えるだろう。

今後、この総合選抜型入試が占める割合はどんどん高まるといわれる。一方で、「試験のために偏差値を上げれば良い」という形式ではないため、受験に特化した養成学校のような進学校には不向きな傾向であるのかもしれない。

総合選抜型を想定して受験対策をしている予備校なども登場してはいるが、基本的には3年間の高校生活の成果がダイレクトに合否に反映される入試方式であるだけに、今後はどのような3年間を過ごせるのか?という高校の質が大きく問われる時代になってきたと言えるだろう。

さて、そんな総合選抜型入試において、圧倒的な合格実績を誇る高校がある。それが公文式の創始者公文公が設立した学校法人公文学園が、スイスに設置した在外教育施設であるスイス公文学園高等部だ。スイス公文学園高等部はひと学年45名ほどのいわば小規模校。

3年間をスイスの全寮制で過ごし、多くの国際交流体験と、高い自主性をもったリーダー教育を徹底することで、国内の高校生とは比べ物にならない多岐に渡る経験を積み重ねることができる。

それが大学側にも高く評価され、上位難関私立大学から多くの学校推薦枠を提供されている。また総合選抜型入試においてもその選考において同様に高く評価され、学校推薦枠と合わせて、ほとんどの生徒が国公立・上位難関私立大学以上に合格するという圧倒的な成果を挙げている。

本稿ではユニークな教育と高い進学率で注目を集めるスイス公文学園高等部について、学園担当者および保護者への取材をとおして、その秘密に迫ってみたい。

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スイス公文学園は、いわゆるインターナショナルスクールではないため、入学者の大部分がごく普通の日本の公立中学を卒業した生徒たちであり、帰国子女や外国籍の生徒ではない。

一方で、学校内の公用語として英語が定められ、日常的に英語を使う環境が整備されている。周辺を5カ国に囲まれている立地を最大限利用することで、ヨーロッパ各国への研修旅行や、様々な国際交流体験が充実しており、グローバルな感覚をダイレクトに身につけることができる。

スイス公文学園が総合選抜型入試において圧倒的な成果を出しているといわれる背景にあるのは、この就学環境がある。そもそも総合選抜型では英語力を重視する傾向があり、IELTSなどの実践英語のスコアなどでの足切りもあるが、実践的な英語はスイス公文学園では、最も得意とする科目となっている。

一般的なインターナショナルスクールの場合、英会話やコミュニケーションはネイティブでも、高度な英語学力や、いわゆる非英語圏向けの英語スコアが必ずしも高得点とは限らない。日本人だからといって日本語検定で高得点が取れるわけではないのと同様だ。

スイス公文学園では、生の英語力に加え最大限強化された教育になっているため、そういった総合選抜型で求められる英語力への親和性が非常に高い。

それに加え、総合選抜型では、学科科目の成績以外に高校時代で培った能力や経験などを、面接や小論文などを通して評価する。スイス公文学園の生徒は高校3年間、親元を離れスイスでの全寮制で過ごし、多岐に渡る経験と感動の数々を得ることができるため、ごく普通に日本の高校で得られる経験とは質・量ともに大きな差がある。英語力以上にこれが総合選抜型入試において大きなアドバンテージとなるのだろう。

結果、インターナショナルスクールでも、受験に特化した養成校でもない、スイス公文学園の生徒は、卒業生の約3割が海外の大学に進学し、国内進学の生徒たちも約8割が、国公立やGMARCH・関関同立以上の難関私立大学に進学している。

すなわち、国内でいえば、偏差値65から70程度の水準の高校と同レベルであることがわかる。いわば、偏差値50で入学した生徒が、偏差値70になって卒業してゆくというイメージだ。

ただ、ユニークなのは、偏差値50くらいの生徒でも入学できるのだが、スイス公文学園の場合は、あえてこの学校に行きたいという生徒が集まるので、偏差値が65~70レベルの生徒も入学してくるということだ。よって同じ学年で高校入学時点では偏差値50~70くらいの生徒たちが入り混じっていることになる。国内の高校の場合は、高校受験によりほぼ同じ偏差値レベルの子供たちが集まり、それによって画一的な環境になりがちだが、私立進学校の中学からも地方の普通の公立中学からも、いろんなタイプの子たちが集まるという、国内では考えられないユニークな環境も生徒の多様性を養う一つの要因となっている。

また、全ての生徒が学校推薦や総合選抜型を選択するわけではなく、一般受験で難関大学に進む者も一定割合はおり、ほぼ毎年数名は医学部に進学するものもいる。

2人の子供をスイス公文学園に進学させた都内で建築関係の会社を経営する鳴嶋氏は次のように語る。

 鳴嶋氏「最初にスイス公文の話を聞いた時は、すごく魅力を感じた半面、公立中学で成績もクラスの真ん中くらいだったうちの息子がそんなところで本当にやっていけるのか少し不安でした。英語も全く話せない自分の子供が中学を出たばかりで全寮制のスイスの学校に留学するなんて、想像もできなかったからです。何より、帰国後にちゃんと日本で進学ができるのかが心配でした。それで私にスイス公文を紹介してくれた保護者の方に、卒業生の進路先などについて詳しく話を聞いたのです。その保護者の方のお子さんが卒業した年は45名ほどの卒業生のうち、スイスで3年間過ごしたおかげでそのまま海外の大学に進学する生徒が3割くらいいて、7割くらいが国内の大学に進学したそうです。この海外大学と国内大学への進学割合は毎年ほぼそのくらいみたいですが、国内に進学した生徒のうち慶應大学に進学した生徒が5名、他も国公立や医学部、早稲田大や関関同立、GMARCHなど8割以上が上位有名大に進学していました。海外進学が3割もいるのも驚きでしたが、私が最も驚いたのは日本の有名大学へのこの凄い進学実績でした。」

もちろん、海外大学や国内の上位有名大学に進学するだけが高校の教育力を決めるわけではないが、重要なのはその中身であるという。鳴嶋氏は次のようにも語る。

 鳴嶋氏「進学先が海外大学や国内の上位有名大学であるということ以上に、子供を実際に行かせた後に私が感じているスイス公文の本当の魅力は、スイスでの3年間で非常に多くの価値ある経験を積める事です。模擬国連や発展途上国へのボランティアトリップの参加、長期の交換留学や近隣ヨーロッパ諸国への研修旅行プログラム、地元の人々を招いての英語ミュージカル、オープンハウス(文化祭)、コンサートや地元のイベントへの参加などの様々な国際交流体験が本当にこれでもかというくらい充実しているのです。また、それらは生徒達だけの自主運営でほぼ全て行います。全寮制での寮の運営、生徒会運営、クモリンピック(体育祭)、そして複数所属できる部活動での部長・副部長経験なども合わせると、小規模の学校だからこそ、全ての生徒が3年間を通して幾つものリーダー経験を積むことができます。海外大学や国内の上位有名大学に合格するということ以上に、自分の子供がスイス公文での経験を通して能力的にも人格的にも逞しく成長する教育を受けられたことに、スイス公文の本当の魅力と底力を感じました」

確かに一つの部活に所属したら3年間ずっとほぼその活動だけで終わってしまうことも多い国内の高校ではこれほどの国際交流体験とリーダーシップ経験を積むことは難しいだろう。ただスイス公文学園の魅力はそれだけにとどまらない。日々の授業での欧米型の教育スタイルもスイス公文学園の大きな魅力だ。ディスカッションやフィールドリサーチ、プレゼンテーション、グループワークなどインタラクティブな参加型の授業が充実しており、まさに社会に出てから必要となる様々な能力が醸成でき、大学卒業後の活躍や成長に大きな成果を生み出している。

 鳴嶋氏「そういう沢山の経験と感動を積んで、自立して自分が将来どうしたいか?ということもすごく考えるようになるので、大学進学の目的意識が非常に明確なのです。私の息子も本格的な映像を学んで将来は映像関係の仕事がしたいと立命館大学映像学部映像学科に総合選抜型入試で進学しました。そして希望通り国内の大手広告関係の企業に就職しました。国内で上位有名大学に進学していない生徒さんたちも『上位大学に合格できなかったから』ではなく、芸術とか薬学を学びたい、将来はパイロットになりたいからその専門の大学に進学するなど、自分の目指す専門のために主体的に進路選択をしている場合がほとんどです。日本の高校ではなかなかこう言った生徒たちにはお目にかかれません。」

近年、インターナショナルスクールの人気が高まり、英語環境での教育を望む保護者が増えている。しかしながら、インターナショナルスクールの場合、卒業後の進学先や日本語カリキュラムの内容に不安が残るなど、保護者を悩ませる要素は少なくなかった。

もちろん、海外の現地校にダイレクトに入学させるという選択肢もあるが、生徒自身の語学力、生活環境、安心安全、経済的問題など、ごく普通の日本人中学卒業生にとっては一般的とは言い難い。

そういう意味では、インターナショナルスクールと海外現地校、日本の進学校の「いいとこ取り」をした学校がスイス公文学園と言えるのかもしれない。あくまでも日本語ネイティブの日本人生徒を対象とした学校であり、日本の上位大学進学も念頭においたカリキュラムを保持している一方で、学内公用語として英語を設定し、授業の半分以上は英語で実施するという面ではインターだ。スイスという立地をフル活用して提供される多くの課外活動や体験学習、アクティビティでは、豊富な国際交流経験を積むことも可能だ。

ここまで見てきてわかることは、現在の日本の教育現場で足りていない、不足していると言われている多くの要素がスイス公文学園で鍛えられる教育の中心になっているということだろう。

ちなみに鳴嶋氏は次男もスイス公文学園に入学し、将来はグローバルな世界で活躍したいと国内の総合選抜型入試で見事、立命館大学国際関係学部グローバルスタディーズ専攻に合格した。

海外の小規模の学校の場合、いじめなどがあったら逃げ場がないのでは?と心配になる方もいるだろう。しかしながらスイス公文学園では、在外日本人学校や海外日本人留学生にありがちな、薬物問題やいじめ、心身不安などの報告は、在校生や卒業生からほとんど上がってこない。これは何よりも日々の学園生活で体験する刺激的な日常が、不法・不正やネット中毒になるような時間を与えていない、という実質的な要因が最も大きいだろう。

それに加え、全寮制による管理と規律が徹底しているということもあるだろう。

取材を経た印象としては、学校自体は家庭的でアットホームな雰囲気でありながらも、いじめや不正・不徳行為に関しては細かな罰則ルールにより厳正に対処していくという、イギリスの上流階級が通うパブリックスクール(寄宿学校)のように、国際リーダー教育(エリート教育)としての厳しい躾、きびしい自己意識を生徒たちに身につけさせているからであるように個人的には感じられた。

取材を通じて感じたもう一つの特徴は、スイス公文学園が保護者からの圧倒的な支持を受けているという点だ。その証拠に兄弟ともにスイス公文学園に通わせている家庭が非常に多いのである。たしかにこの事実だけでも、前述したいじめなどの問題がないことがよくわかる。実際に自分のこどもが3年間通って、もしそういった問題がある学校なら、その兄弟を同じ学校にまた通わそうとは絶対に思わないはずだからだ。

3人の息子を全員スイス公文学園に入学させた都内で大手製薬会社に勤める高橋氏に、なぜ3人全員がスイス公文学園に進学したのか、その理由を聞いた。

 高橋氏「私の息子は3人とも、都内の大学までの一貫校で小学校、中学校時代を過ごさせていただきました。そのまま大学までお世話になりたいという気持ちもありましたが、3人ともが全員、高校からスイス公文に進学しました。3人とも、中学の成績は中くらい。英語もごくごく普通で、特別に得意だったわけではありません。長男が最初にスイス公文に進学して日本では味わえない充実した高校生活を満喫していることに影響されて、次男、三男が進学したという経緯です。」

高橋氏のお子さん達が通っていた学校は全国でも屈指の人気校であった。にも関わらず、そのまま高校に進学するのではなく、他に進学するというのは、なかなかできることではない。

高橋氏がスイス公文学園を知った経緯は、小児科医をしている奥様が知り合いからスイス公文学園の話をたまたま聞いたことがきっかけで、「スイスの山の上にユニークな高校がある」というスイス公文学園について書かれた本を読み興味を持った、ということに始まるという。特に海外の学校で異国の文化も学びながらグローバルな人間になって欲しいことと日本の学校という特徴もあり日本人のアイデンティティも備え成長させてくれることに感銘を受けたようだ。そのことを長男に話して本も読ませたところ、長男もとても興味を持ち、スイス公文学園を選んだという。

長男は、2018年にスイス公文学園を卒業し、国際基督教大学(ICU)に進み、卒業後は大学院に進学。来年の4月から、国内の大手コンサル会社に就職予定である。

そして2年離れた次男もスイス公文学園に入学。2020年に卒業し、メディア関係の勉強をして、将来はメディア関係の仕事に就きたいと、メディア学で有名なブリティッシュコロンビア大学に進学した。ブリティッシュコロンビア大学と言えば、カナダ屈指の名門校で、世界ランキング38位の超難関大学である。

次男の時は、奥様と長男が「日本でこのまま大学まで過ごした場合と、スイス公文に行った場合」というチャートを作成し、次男と進路について話したという。

兄が、委員会や部活動でも活躍するなど見違えるように成長しただけでなく、英語も流暢に話せるようになるなど、充実した姿を見ることで、次男もスイス公文学園行きを決断した。

長男、次男とも中学時代の英語力は英検準2級から3級程度。英語をどうしても活用しなければならないという環境ではなかったため、ほとんど話せないと言っても良いレベルだった。しかし、2人ともスイス公文学園の卒業時にはIETTS6.5にまで成長した。このスコアは「自立した英語使用者」と定義されている。英検でいえば、準1級~1級。TOEICであれば、820~870点レベルである。

そして、現在、スイス公文学園の1年生に在籍しているのが、三男だ。長男、次男という成功パターンを見ているだけに、親子共に、スイス公文学園を選択することに何の迷いもなかった。

 高橋氏「子供たちは3人とも高校から元々お世話になっていた一貫校を離れましたが、今でも中学校時代の同級生たちと仲良く交流しています。友達と離れるのを嫌がる子は少なくありませんが、今の時代、SNSやインターネットもあるので、高校で離れた友達とも、関係の維持は容易であるみたいですね。我が家の場合、スイス公文に無理やり進学させたわけではなく、むしろ「こういう道もあるよ」と選択肢を提示し、子供たち自身に選択してもらいました。それがさまざまな面で良い結果を生んでいるように思います。特に、次男、三男は兄である長男がスイス公文で圧倒的な成長を実現していたことが、選択要因として大きかったと思います。」

高校時代の多感な時期に、スイスという場所で刺激的な寮生活を送ることで得られるメリットは非常に大きいと高橋氏は力説する。特に、「自分で考えて自分で行動する」という環境の中で、子供たちは本当にじりつ(自立、自律)できると断言する。

例えば、次男が、自らの進路を決め、世界中の大学からカナダのブリティッシュコロンビア大学を探し、受験・入学手続き、現地での一人暮らしの住まいの手配を含めて、代理店や仲介業者を一切使わずに全て自分で行なったことに対しては、親である高橋夫妻の方がその行動力に驚かされたという。

高橋氏への保護者インタビューを通して感じたことは、保護者からの評価と支持が噂となって生徒たちの入学につながっていることである。もちろん、こういった特殊な教育スタイルを持つ学校の場合、ネットなどでは悪意ある非難や根拠なき誹謗中傷も少なくないという。しかし、実際に入学している生徒たちのほぼ全てが、そういったデマや風評ではなく、実際に学園や保護者、卒業生たちからの生の話を聞いて入学を決断しているという。

いうまでもなく、高額な学費を負担し、海外にひとりで送り出すというリスクは少なくはない。そんなリスクを冒してでも、2人目、3人目の兄弟までも入学させるためには、保護者の圧倒的な理解と評価がなければ実現しないだろう。

日本の国力が急激に低下する中で、大学教育も大きな変革期にきている。学生に求められる能力や素養も変化している。親世代が体験してきた受験のあり方、大学入試のあり方とはまったく違う指標で生徒たちが評価されるようになっている。しかしそれはこれからの不透明なグローバル社会を生き抜いていくためには、詰め込み式の受験勉強ではなくて、総合選抜型入試で総合的に評価される能力こそが本当に必要なのだと、世の中がわかってきたからではないだろうか?

「大学から偏差値がなくなる」と言われる今日、我が子をどのような学校に行かせるのか。どのような教育を受けさせて、どのような人間に育てたいか。本稿を参考に是非考えてほしい。

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