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<気になる公共「標語」>「いつもトイレをきれいに使ってくれてありがとうございます」は慇懃無礼?

メディアゴン / 2014年10月27日 16時55分

水留章[テレビ番組制作会社 社長]

* * *

「何かをしよう」というのは、それをしていない時の言葉だと思います。「何かをするな」という言葉は、その行為が行われているときの言葉で、しかも「特にやって欲しくない場合」が多いのではないでしょうか。

当たり前のことだと笑われてしまうかもしれませんが、これはとても面白いことだと思います。特に「標語」の言葉はとても興味深い。

小学校の時に学校内によく書いてあった次の様な言葉。誰でも同じような「標語」が記憶に残っていると思います。

・「クラスの仲間は仲良くしよう」
・「廊下を走るな」
・「授業中はおしゃべりするな」

最近、ファミレスや公共のトイレにも小学校の頃のような「標語」が貼られていることが気になる人も多いはずです。最近目にして記憶に残っている「トイレの標語」には次のようなものがありました。

・「見れば分かる トイレのレベルが 職場のレベル」
・「一歩前へ なぜなら そんなに長くない」
・「急ぐとも 心静かに 手を添えて 外にこばすな 松茸のつゆ」

トイレとは、みんなで使うものですから「汚してはいけない」のは当たり前です。そんなことは幼稚園児でも知っています。このような「標語」をストレートに言ってしまえば「トイレを汚すな!」ということでしょう。もちろん、ちょっと昔であれば、ストレートにそう書いてあったと思います。

もっと強烈な場合もあります。これはトイレではなく路地に貼ってあった「立ち小便」の警告なのですが、

・「立小便無用!(鳥居の絵)」

というものを覚えています。「立ち小便なんかしたら、神様のバチがあたるぞ」という意味でしょう。「禁止注意」だけでなく、その人に天罰という「攻撃」まで加わることを示唆しているわけです。これはさすがに幼稚園児には分からないでしょうが、ある程度大きくなると、案外怖いものです。

しかし、最近の「トイレの標語」は昔ほど厳しい口調ではないでしょうから、「トイレはきれいに使って下さい」といったものが普通だろう、と思っていましたが、それ以上に、記憶に残してもらうため、理解してもらうための様々なアイデアを凝らしているようです。

「トイレ」以外でも同様なこととしては、

・「ゴミ箱」を「護美箱」

と当て字にして使い、イメージを高める方法がありました。

また、先日「トイレ(便所)」を

・「音入」(おといれ)

と書いているものを見たことがありますが、こちらも同じ様な趣旨なのだと思います。

ところがコンビニのトイレで最近、「気になる標語」があります。

・「いつもトイレをきれいに使ってくれてありがとうございます」

という「標語」です。上記の一文とともに、工事現場のような格好で、ペコリと頭を下げている人の絵まで書いてあります。これはどう見ても「やり過ぎ」だと思います。「慇懃無礼」とは、こういう時に使う言葉なのだ、と改めて勉強になりました。

皆さんの気になる標語教えて下さい。先日、筆者は銀行の窓口で、

 「NISA(少額投資非課税制度)は危なくない」

という標語を見かけました。

NISAは危なくない は NISAは安心です だったかもしれません。正確に言えば 皆さんのNISAに対する不安は杞憂ですよ という意味でしょう。

なぜ杞憂かを コピーの中に組み込まなければ 小さい字で書いてあっても 捻くれた考えだと危険性を糊塗しているとしか思えません。

しかしNISAをやろうと思って意気込んで店に来た人にとって 、

NISAは安心です の言葉は 心のブレーキにこそなれ アクセルにはならないのではないでしょうか。

危なくなければ、「危なくない」なんて書かないでしょう?

[メディアゴン主筆・高橋のコメント]トイレの標語も落書きも優れたメディアに違いありません。いわゆるメディアの最初の目標は、これらを内容で越えることです。ところで水留氏の主張に触発されたのか、私はこう思います。「団結」の鉢巻を占めている人たちは「団結」していないからだし、「絆」のTシャツを着ている人たちは「絆」がないからだ。これらはひねくれすぎた見方でしょうか?

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