<赤瀬川原平氏の死に想う「老人力」>若者層がある割合を超えると「戦争」や「革命」が起きる?
メディアゴン / 2014年10月29日 17時31分
水留章[テレビ番組制作会社 社長]
* * *
永六輔さんの『大往生』(岩波新書・1994)、赤瀬川原平さんの『老人力』(筑摩書房・1998)が発売されてそれぞれ20年と18年経っています。当時から「老人」が増えていたのでしょうか。どちらも洛陽の紙価を高めたものです。
2014年10月27日のとある新聞に「2025年になると団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者になる」と書いてあります。人口が減るのと同時に、老人の割合だけが増えると言う大変な事態です。
映画館はシニア割引の入場者ばかりで、ヒットしても興行成績は上がりにくくなるのでしょう。便利で重宝しているamazonでの書籍購入も、配達する人が足りなくなって、1500円の本に2000円の送料などと言う本末転倒の事態も起きかねません。
「時代の空気はその時代が作る」と言われています。好景気には浮かれ不景気に落ち込み、平和を享受して戦争を恐れる。政治・経済や国際情勢が時代の空気を作っているのは間違いありません。
人はその影響を真っ直ぐに受け取るというのも確かなことです。但し高齢者が増えればその高齢者の好みや生き方は大きく社会に影響与えることは大いにあるでしょう。
「小さい子どもを持つ若い夫婦は活動的で、老夫婦は盆栽前に庭で茶を飲んでいる」という図式は、もう今や当てはまらないでしょうが、前者が後者よりエネルギーに満ち溢れているのはいつの時代にも変わりません。
人がほかの生物と一緒である限りは。おまけに人間は自分たちのことがよく冷静に客観視できませんから、当然自分の生きている時代についてどんなものかは体感できていない筈です。心理学者マイケル・S・ガザニガ(カリフォルニア大学教授)が最近の著書で、次のように書いています。
「人は自分がとても大切な一人の存在だと考えているが、所詮は社会の影響受けて環境によって作られているもの」
人間活動で作られる環境だけが世の中の雰囲気を作る要素ではないようです。その社会の人口構成が重要な要因になっているという説があります。 友人がドイツの学者が唱えている「ユースバルジ(Youth Bulge)」という仮説を教えてくれました。
「ユースバルジ」とは、直訳すると「若者の膨らみ」。人口ピラミッドの若年層が大きく膨らんでいる状態を指しています。国内の人口の中で「一定の年齢の若者の層の数」がある割合を超えると(男性の人口に占める15~29歳の比率が3割を超える状態)、その国は外へ向かっては「戦争」を起こすか、内側に向かって「革命」を始めるという学説です。歴史を振り返ると、随分と当っている例もあります。
これはあくまでも仮説なので、現在の社会について全て当てはめて判断することはできません。しかし「人口構成比」が世の中の空気を決めるのに大きな力を持っている、ということは確かでしょうし、とても興味深いものです。
さて話はこの日本のことに戻りますが、老人がたくさん増えいき、人口の過半数にも届かんとする事態はどんな社会を生むのでしょうか。その世の中は「老人社会」と呼ばれるくらいですから当然老人の習性が色濃く反映されるでしょう。
では「老人」の習性とは何でしょうか。先のことはどうでも良いので、とてもとても「意固地」になっている。たくさんの人生経験を積んでいるので「穏やかに」になっている。自分を振り返ってもこの真逆の面を持っていますね。「頑固」と「寛容」この二面が現れる世の中なのでしょうか。
将来がなく自分の主張ばかりで、とてもギスギスした社会になるのか。 譲り合いの精神でゆったりとした生活があるのか。いずれにせよ人口構成比率が社会に与える影響は大きいでしょう。
ただどう暮らせばよいのかのヒントは南伸坊さんの著書『オレって老人?』(みやび出版 ・2013)に少しあると思います。
「人はみな自分を老人と思わない、それがとても始末に悪いことだ」
南さんも「オレって老人?」と自答しながら暮らしているようです。これはとても大事なことだと思います。
そういえば、この原稿を書くにあたり、『老人力』を調べようと検索したところ、がAmazonで「品切れ」になっていました。この理由はすぐにかりました。先日(10月26日)に、著者・赤瀬川原平さんが亡くなったそうです。 77歳ということです。
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