<不祥事続きの自民党本部に電話してみた>テレビ局でさえあるコンプライアンス部署が自民党にはない?!
メディアゴン / 2014年10月28日 2時30分
藤沢隆[テレビ・プロデューサー/ディレクター]
* * *
このところの自民党閣僚の不祥事。ちょっと腑に落ちないので自民党本部に電話をしてみました。
政治家の不祥事は昔から何度も何度もくり返され、特に自民党は学ぶには充分すぎるほど辛い経験を積んでいるはずなのに、小渕さんにしろ、松島さんにしろ、宮沢さんにしろあまりにも簡単に穴に落ちているように見えるからです。
さて、本題。自民党本部の代表に電話するとまず女性のオペレーターの方が出ます。
オペレーター「どのようなご用件でございましょうか?」
筆者「あのう、一般の者なのですが、自民党のコンプライアンス対応についてちょっとお伺いしたいんですが」
オペレーター女性は「はぁー、えーと・・・」と戸惑った感じのあと、「しばらくお待ち下さい」。そして、すぐに、
自民党職員「わたくし、総務局の○○と申しますが、どのようなお話しでしょうか?」
と、ごくさわやかな感じの声の男性がでてくれました。
筆者「自民党本部には、議員や秘書さんやスタッフなどに対応するコンプライアンスの専門部署のようなものはあるのでしょうか?たとえば『お祭りでうちわを配ると公選法違反になるのかどうか』なんかを電話一本で相談できるとか・・・」
自民党職員「えーと、専門部署というのは・・・、私ども総務局の方へご相談下されば対応するんですが・・・」
不思議なもので、テレビ局でも一度不祥事が起きると、なぜか連鎖して次々と不祥事が続いたりします。それで神社にお祓いに行ったりするのですが、神頼みだけではどうにもなりません。私の知る某局では、かなり以前からコンプライアンス専門部署を立ち上げています。おそらく私の知らない各局も同様な部署があるのだと思います。
テレビ局にある「その部署」は誰でも、どんな内容でも相談することができます。望めば相談者は匿名とされ、原則的に相談があったことも秘匿されます。自分の周囲や上司に知られることなくセクハラやパワハラ、あるいは金銭処理上の問題、取材先とのトラブル、メンタルヘルスなど、あらゆる問題について安心して相談や告発ができるシステムです。
また、社内のこの部署だけでなく、第三者による相談窓口を外部に開いており、不安がある場合は直接外部の弁護士などに相談や告発ができます。この他にも、社内の別の部署が社外スタッフを含めてコンプライアンスに特化したハンドブックを配布したり、折々にハラスメント、取材マナー、メンタルヘルスなどをはじめ様々なセミナーや講習会などを開いています。テレビ局ですらこの程度のリスク管理はしています。
言うまでもなく放送業界だけが特別なのではありません。株主に対し企業価値を上げたい民間企業は、コンプライアンス上のリスク管理が経営に大きく影響することから、コンプライアンスについて厳しく対応するのが企業経営の常識です。
民間では常識で、『テレビ局ですら』やっている程度のことです。もし、この程度でも自民党がやっていたら、過去の不祥事や今回の小渕、松島、宮沢の各代議士の問題などもかなり防げたのではないか? また都議会での社会常識とあまりにかけ離れたセクハラ発言問題なども起きなかったのではないか? と思って、ちょこっと自民党本部に電話をしてみたわけです。
だって、コンプライアンス上の問題が起きた時に重大な影響を受けるのは、民間企業よりも、テレビ局よりも、場合によっては「内閣ですら吹っ飛びかねない自民党」のはずですから。ぜひその対応を聞いてみたかったのです。
自民党総務局の方のお話しは概ね以下のようでした。
筆者「うちわの配布が公選法違反かどうかなどは電話一本で相談できるような部署があれば簡単に判断できたのでは?」
自民党職員「まったくそのとおりで、先生方でもスタッフの方でも何かあったら、私どもにご相談いただけばすぐに対応しますと、常々申し上げてはいるのですが・・・。」
筆者「自民党本部としてハラスメント教育とか相談受付とかをしていないのですか?」
自民党職員「そうですね、私ども総務が・・・、とくに特別な組織的には・・・。都道府県連というのがありまして、そちらの方でも・・・。」
筆者「議員の身を守るために、政治資金規正法への対応などは利害関係のない専門家によるチェックや相談、あるいは告発ができるシステムなどをおつくりになってはいないのですか?」
自民党職員「部署とかシステムとしては・・・。私どもにご相談があれば、場合によっては専門家とも相談して対応致しますし、都道府県連の方も考えていると思うのですが。」
と、終始だいたいこんな感じ。さわやかに答えてはくれるのですが、ややのらりくらりでどこか暖簾に腕押しの感じ。
明治座、ワイン、うちわ、カレンダー、SMバー、となんともレベルの低い話で国政が滞っています。これまでだって、この種のくだらない不祥事でどれほど自民党が大きなダメージを受けてきたのかを考えれば、自民党はコンプライアンス上のリスク管理について、組織として、一般企業に比べてはるかに徹底的に取り組んでいても当然と思うのです。
もちろん、一般人と名乗って聞いた電話一本で、全てを決めつけるわけには到底いきませんが、自民党をひとつの企業、都道府県連をその支社と考えれば、この会社の組織的コンプライアンス対応は「高度なモノ」とは思えず、これではまだまだスキャンダルは続きそうな印象が無きにしもあらずでした。
「不祥事」というわけではありませんが、放送業界でもシリアスなのが「メンタルヘルス」の問題です。重い症状、ましてや自殺者などが出ては大変ですからこの面でも組織としてそうとうな神経を使って対応しています。
連想ゲームのようではありますが、小渕さんの収支報告書の作成者で中之条町の折田謙一郎町長が辞職し「代議士は何も知らないし、悪くない」と言った後、行方がわからないというニュースを聞いた時は、竹下登首相の靑木伊平秘書の自殺を思い出してしまいました。
まさか折田謙一郎さんが自殺するようなことはないでしょうが、小渕さんの問題は、小渕さんが不足金を補填したのでないとすれば、誰かが大金を懐に入れたという犯罪か、裏金として収支報告書に書けないような用途に支出したのか、あるいはどこかに金をプールしているのか、のいずれかである可能性が高く、どうにも道理の通った説明のしにくい状況だからです。
でも、万が一、小渕さんの関係者から自殺者などが出たら、それこそ小渕さんの政治生命は終わりです。結果として小渕さんを守ることにはなりませんからそんな心配は無用なのでしょうが。
今回の一連の政治スキャンダルで、テレビのコメンテイターの多くが政治資金規正法の支出についての改正が必要と言っています。それはそのとおりかと思いますが、加えて、
・政党が一般企業なみの組織的コンプライアンス対応をしてきたのかどうか?
・議員やその関係者はモラルや知識において、けっして特別な人ではないのにもかかわらず、事を個人や個別の問題として、これまでコンプライアンスについて必要な組織的努力が足りなかったのは政党そのものなのではないか?
・それが不祥事がいつまでも続く要因のひとつなのでは?
という気がします。
政治資金規正法では、政治資金収支報告書について政治資金適正化委員会が行う研修を修了した登録政治資金監査人(政治資金適正化委員会の登録を受けた弁護士、公認会計士及び税理士)の監査を受けることを義務づけています。しかも、その監査人は“外部性を有する第三者が行う”とも定められています。よって、前代未聞の小渕さん関連政治資金収支報告書もこれに則り、研修を修了して登録を受け、外部性を有する第三者である税理士によって監査されています。
この税理士は群馬県税理士会の群馬中之条支部に属しています。まさに小渕優子代議士のどんぴしゃ地元です。毎日新聞によれば、この税理士は小渕恵三元首相の地元後援会の役員を務め、税理士による『小渕優子後援会』の幹事長をも務め、自民党群馬県第5選挙区支部の会計責任者の経験もあり、自民党群馬県ふるさと振興支部に寄付もしていたとのこと。そうなるとこの税理士って”外部性を有する第三者”ですかね? 地元はいろいろ勝手におやりのようです。
都道府県連が・・・などとのんきなことを言っていないで、自民党本部が早急にコンプライアンス対策を組織的かつ徹底的にやらないとまた野党になっちゃうかもしれません。
自民党総裁の安倍晋三さんは、あれほど強引に集団的自衛権なんてものを実現し、日本を戦争の出来る国に変えようっていう強引な方なんだから、その何分の一かの強引さでやれば自民党のコンプライアンス対策なんていとも簡単に実現するのではないでしょうか。
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