<「ヒーロー不在」の平成>映画監督として「描きたい主人公に出会えない」絶望的状況
メディアゴン / 2014年11月20日 11時4分
原一男[ドキュメンタリー映画監督]
* * *
1968年の新宿騒乱。その渦中にいて、機動隊に投石ができなかった自分の臆病さ、軟弱さをイヤというほど思い知った私・原一男。その「臆病さ」を克服するには、どうすればいいか? 自分より圧倒的に、精神力に優れていてタフな人に鍛えてもらうしかない!と考えた。
全共闘運動はまぎれもなく私に「革命が起きるかもしれない」という幻想をインプットした。ならば、先頭でなくてもいい。お尻の方でもいいから隊列に加わりたい。そのためには、己を強くしなければ。そう、私は強くなりたかったのだ。
もうひとつ。若かった自分に言い聞かせたことがあった。
「生活者的生き方」ではなく「表現者的生き方」をすべきだと考えたのだ。「生活者的生き方」とは、自分と自分の家族の幸せのために生きる、という生き方を指す。「表現者的生き方」とは、他人と他人の家族の幸せを追求する生き方、というより、もっと大きく、世界が平和に、そして幸せに生きられる世の中を実現するために・・・という生き方だ。世間知らずの、若さ故の単純な正義感だったと思うが、そんな生き方をしたいと夢みたのだ。
もっと具体的に言うと、全共闘運動の「家族帝国主義解体」というスローガンを、けっこうストレートに信じていた。今から思うと苦笑いしてしまうしかないのだが。
二つのキーワードを実践した結果が、疾走プロ(疾走プロダクション:原一男、小林佐智子率いる制作プロダクション)の映画「4作品」である。
・1972年「さようならCP」横田弘+横塚晃一
・1974年「極私的エロス・恋歌1974」武田美由紀(※トノンレバン独立国際映画祭グランプリ受賞)
・1987年「ゆきゆきて、神軍」奥崎謙三(※日本映画監督協会新人賞、ベルリン映画祭カリガリ映画賞、シネマ・デュ・レェール・グランプリ、報知映画賞優秀監督賞、等受賞)
・1994年「全身小説家」井上光晴(※キネマ旬報ベストテン1位・日本映画監督賞、毎日映画コンクール日本映画大賞、等受賞)
各作品の主人公は私にとっては、まさにスーパーヒーローなのである。個々の作品において監督である私の目標値が如何に達成されたのか、あるいは失敗したのかの検証は別の機会に譲るとして、今、私は、新たな課題に直面している。
平成という時代の今、筆者にとってのスーパーヒーローが不在なのである。
いや、この平成という時代、ヒーローという存在を許容しなくなったと言い換えるべきだろう。したがって、私が描きたい主人公たちに出会えない、という絶望的状況のまっただ中にいる。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「第29回新藤兼人賞」カンヌで受賞した山中瑶子が金賞、『侍タイムスリッパ―』の安田淳一が銀賞
ORICON NEWS / 2024年11月26日 12時0分
-
村田沙耶香「消滅世界」が映画化 「コンビニ人間」前夜に描かれたベストセラー小説
映画.com / 2024年11月26日 10時0分
-
“おもてなし”スリラー『スピーク・ノー・イーブル 異常な家族』不幸を隠して幸せなフリ…今の家族問題を描いた理由を明かす
ガジェット通信 / 2024年11月24日 17時0分
-
ADHDの少女を演じ、史上最年少12歳で金馬奨・最優秀主演女優賞を受賞! 台湾映画「トラブル・ガール」25年1月17日公開
映画.com / 2024年11月18日 8時0分
-
全世界を虜にした「エマニエル夫人」現代版のテーマは? 新作「エマニュエル」監督が来日、湯山玲子と“女性の欲望”トーク
映画.com / 2024年11月2日 12時24分
ランキング
-
1「トイレでスマホ」が招く危険...長時間座りっぱなしの健康リスクとは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月27日 17時50分
-
2「無性にコーヒーが飲みたい…」 実は鉄分不足が原因? 疲労増&集中力低下も
オトナンサー / 2024年11月27日 8時10分
-
3「小銭入れると落ちる恐れ」 しまむらの新作財布に不具合……「申し訳ございません」 販売中止に
ねとらぼ / 2024年11月27日 19時20分
-
4ユニクロ感謝祭「最強アウターが大幅値下げ」「ヒートテックも割安」絶対に買い逃してはいけない5アイテム
日刊SPA! / 2024年11月27日 8時54分
-
5大阪府の「お米クーポン」3億円分使われず 今月末期限、子育て世帯対象に配布
産経ニュース / 2024年11月27日 21時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください