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<TBS『Nのために』は第3話からが魅力>『Nのために』の「低視聴率」の原因は第2話?

メディアゴン / 2014年11月25日 2時0分

黒田麻衣子[徳島テレビ祭スタッフ]

* * *

TBS『Nのために』(金曜日22:00~)がおもしろい。

湊かなえのミステリーが原作とあって、放送前から話題になっていた。第5話までの視聴率は10%前後を推移しており、前評判のわりには数値的な結果はともなっていない感じがする。

ミステリーは、恋愛ドラマなどに比べて、途中で「ジャマ」が入るとストーリーに集中できず、悔しい思いをすることが多いため、ドラマ好きな視聴者には、最初から録画視聴を選択する人も多い。(「ジャマ」とは、テレビを観ている最中に話しかけられたり、電話やメールがなったりして、集中をそらされること。)

特に、湊かなえ原作は、随所に「謎」をちりばめてくるので、しっかりと「集中」して視聴しないと、おもしろみが半減してしまう。だから、数字的な「結果」は出にくいのだと思う。筆者の周囲でも、けっこう多くの人が毎週楽しみに観ていると言う。

とはいえ、このドラマのおもしろさからすると、もう少しリアルタイムで観る人が増えても良さそうなものだ。「待ちきれない思い」でこの時間にチャンネルを合わせたい作品のハズだ。なぜ、この程度の視聴率なのだろう?? 

もしかすると、このドラマのおもしろさに気づかないまま、毎週視聴から「離脱」してしまった視聴者がけっこういらっしゃるのかもしれない。

実は、かく言う筆者も、初回と第2話までで「離脱」しかけた一人だ。筆者はたまたま第3話の前日に、このドラマについて人と話したことで、第3話を観た。おかげで、このドラマのおもしろさを享受できている。

そう、このドラマの「低視聴率」の原因は第2話であったと思う。

主人公の希美が現場に居合わせた2つの事件。1件目は希美がまだ瀬戸内海の小島の高校生であった頃の放火とみられる火事。2件目は2004年に東京の高層マンションで起こった殺人事件。

火事の犯人は不明のままに時効を迎え、殺人事件の「犯人」は10年後に刑を終えて出所する。そして、2014年、島での火事を捜査した警察官が定年を迎え、2つの事件がまた静かに動き出す・・・。殺人事件の犯人は、えん罪ではなかったのか? 火事の真相は?

島での高校時代、2004年の学生時代、そして現在―― 3つの時間が錯綜しながら進むこのドラマは、よほど上手く描かないと、視聴者が混乱する。1話の中で、十数年の時間差を行き来するので、演じる方にも難しかったであろう。

その点、主人公希美を演じている榮倉奈々さんはアッパレだ。高校生からアラサーキャリアウーマンまで、実に無理なく上手く演じていらっしゃる。バリキャリからいきなり「女子高生」に画面が切り替わっても、違和感なく受け入れられる。

ただ、脚本にはあと一工夫欲しかった。

ドラマで、高野(島の警察官)を演じている三浦友和さんは、TBSの宣伝誌『La Boo』のインタビューで次のように述べている。

 原作は読んでいたけれど、正直これをドラマ化するのは難しいと思っていた。4人の若者と殺される夫婦の絡み合いがそれぞれ描かれているものの、ストーリーテラーというか物語全体を俯瞰して見る人物がいないから、ドラマ的には話がまとまりにくいだろうって。

そのストーリーテラーの役割を担うのが、ドラマオリジナルキャストの高野なのだが、初回は、高野の存在がかえってストーリーを複雑にしてしまった気がする。

高野が動き出すのは2話以降にして、初回はまず、「何が起こったのか」だけに特化していれば、初回がもう少しシンプルになってわかりやすく、2話以降で高野が動き出すことによって物語がより深化し、おもしろさが増して、視聴者をうまく引きつけられたのでは、と思う。

今回の1,2話脚本では、まるで、中身がぐちゃぐちゃで整理されていないままの風呂敷を一気に広げられたような展開で、謎だらけで意味がわからなさすぎて、おもしろみを感じることができなかったり、話についていけなくなってしまったりで、「離脱」してしまった視聴者も多かったのではないかと思うと、残念でならない。

そうではなく、まずは風呂敷を一気に開かず、中身をチラ見せしながら、内部を整理し、ある程度、整理できたところで風呂敷を全開にして、パズルのピースを埋めていく・・・という形であったなら、より多くの視聴者をわしづかみにできたのではないかと思う。

実際、風呂敷の中身が整理された第3話から、だんぜん面白くなってきた。人が動き出して、パズルのピースが一つずつ埋まっていく感じは、ミステリーのおもしろさを堪能させてくれる。

今、『Nのために』は、筆者にとって今クール一押しのドラマとなっている。もし、この記事を読んでくださっている方で、初回、第2話で「離脱」してしまった方がいらしたら、ぜひ第3話に戻ってみていただきたい。

第3話で「おもしろみ」を感じられなければ仕方ないが、第3話は戻ってみる価値がある!と筆者は思う。

連ドラは、初回で「継続視聴」か「離脱」かを決めてしまうことが多いけれど、時々こんなふうに、「途中から俄然おもしろくなった」作品があったりするから、あなどれない。

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