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<就活生が知っておきたいテレビ事情>なぜテレビ局員は「ずっと現場にいたい」と言いたがるのか?

メディアゴン / 2014年12月5日 3時0分

高橋秀樹[放送作家]

* * *

昔、テレビ局に入りたいというような人たちは、ドラマを作りたいか、ショウ番組をやりたいか、報道をやりたいか、とにかく現場にいたい、番組を作り続けていたいという人たちであった。

最近は編成をやりたいとか(要は権力志向。テレビ局で一番偉いのは編成だと既に知っている層)、事業局でイベントや映画を作りたいという人も増えてきた。スポーツ番組をやりたいという人は、各スポーツ団体と交渉したり契約したりするのが好きなのだろう。

そして、今も昔も、テレビ局の正社員が異口同音に言うのは、

「ずっと、現場にいたい」

である。しかし、それがムリな願いなのだ、ということがわかるのには、さほど時間は掛からない。

まず、ひとつは才能の問題。誤解を生むといけないので「向き不向き」とでも言っておこう。番組作りに向かない人というのは確かにいる。

「なんで、テレビ局なんか志望して、こんなところに来ちゃったんだろう? この人、銀行員のほうが向いているのに・・・」

と思う人は毎年いる。

銀行員に向いている人であれば、活躍の道はある。テレビ局も会社だから、営業や、経理、コンプライアンスなんていう仕事も当然ある。そういった仕事に向いている人が、そういった部署に移れば、一気に花開くこともある。なまじ番組制作の現場に居続けるよりも、むしろ出世したりする。そういう人は、「ずっと、現場にいたい」病から早めに目覚めることになる。

現場に居続けることが出来ない次の理由。それは、テレビ局の制作現場も旧来ににほんの会社の伝統に則った、ピラミッド型組織だからである。上に行けば行くほど人は少なくていい。

一人のプロデューサーを頂点に、それを支えるように組み上げられた三角形の組織、それが番組作りでも最も効率的で出来が良いという考え方だ。しかも、なぜだかテレビ番組の制作現場は、若い人が好きなので、年がいっても役職につけないなど「偉くなっていない人」はツラい。

さらに、テレビ局は、番組作りの部門だけではなく、会社全体としても、ピラミッド組織である。筆者はテレビ局員の「ずっと、現場にいたい」発言の裏には、出世競争に負けても現場にいればなんとかカッコがつく、という心根が在るのではないかと睨んでいるが、それは、穿ち過ぎた考えかもしれない。

会社組織のラインに乗らず、ずっと現場で見事な仕事を成し遂げた人も、もちろんいるので、これは一般論だと、お断りしておこう。

筆者は、筆者が居続ける奴はダメな奴、と言いたいわけでもないこともお断りしておく。むしろ、筆者が放送作家として一緒に番組を作り続けてきた仲間のディレクターに現場に残っていて欲しい。古い言葉で言えば「同じ釜の飯を食った戦友がいなくなるのが寂しい」。寂しいという以外にも理由がある。

番組にはその番組の骨格、コンセプトの支柱となっている主人がいる。その支柱がいなくなったとたん、番組がガラガラと音を立てて崩れ始めた経験を何度もしているからだ。

一人の優れた現場プロデューサーが居た。この人の企画した番組は高視聴率を取り続けていたが。それは、この人が現場に居続けたからである。コンセプトはこの人物のおかげでブレない。よく、このプロデューサーはスタッフにこう言っていた。

「きのうの番組がまたいい数字〈視聴率〉を取りました、これはいけません、緊急対策会議を開きます」

会議を本当にやるかどうかは別として、筆者は、このプロデューサーのあり方を断然支持する。プロデューサーの名は「なるほど・ザ・ワールド」の王東順氏である。

ところで、次に披露するのはあるテレビ局の人事局長と社長の会話である。

社長「人事局長、今年新卒は何人採る予定ですか」

局長「30人です」

社長「今残ってるのは何人?」

局長「32人です」

社長「コネは何人?」

局長「7人です」

社長「それ全員採用ね」

局長「はい」

社長「それから、テストの成績が一番良かった奴と、一番ダメだった奴。落として」

局長「はい」

所長「それで30人だろ、そのなかに将来会社をしょって立てそうなやつ、2人いる?」

局長「うーん。そうですねえ、一人しか居ません」

社長「そうか、それじゃ一番成績良かった奴、復活させて」

局長「ハイ、では今年は31人採用という事で」

社長「そうしましょう」

局長「分かりました」

出世させる奴は、入社の時から決まっているのである。

だから、「ずっと、現場にいたい」人は、テレビ局の正社員になんかならずに、フリーのディレクターとしてどの局とでも仕事ができるようにしておけば、テレビ局員なんかより何十倍も稼げるかもしれない。

残念ながら、そういう人を筆者はまだ、見たことないですが。

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