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周星馳監督「西遊記〜はじまりのはじまり〜」は、東アジアの「スター・ウォーズ」になった?

メディアゴン / 2015年1月4日 0時5分

高橋秀樹[高橋秀樹]

* * *

快作「少林サッカー(2001)」のチャウ・シンチー(周星馳:Stephen Chow)が監督・製作・脚本を担当した映画「西遊記〜はじまりのはじまり〜」が面白い。

筆者が見たのは11月22日。場所は渋谷TOHOシネマ。客の入りは4割ほど。こういうはっきりと笑いを狙った映画の観客が少ないのは、笑いを「修行」と考える筆者のような人間からすると至極、残念である。しかし、この映画の面白さが伝播することができれば、入りも増えるのかもしれない。

若き日の三蔵法師・玄奘は、心優しきがゆえに、今ひとつ、成果の上がらない妖怪ハンターである。玄奘役のウェン・ジャン(文章:Wen Zhang)は向井理に似ている。

ある川辺の村で、道教の僧侶(土俗を意味する)が退治した妖怪は、ただの巨大な川エイであった。仏教の教えを信ずる玄奘は、その力の限りを尽くし妖怪、沙悟浄と戦うが、力は及ばない。その窮地を救ったのが女性妖怪ハンターの段(スー・チー :舒淇)であった。スー・チーは、台湾出身の人気女優。綾瀬はるかに似た幼さと色気を同時に持った美人である。

ストーリー紹介は発端だけにしておこう。

この映画、アクションは特にすごいわけではない。それなら「少林サッカー」の方がすごい。CGに頼りすぎてしまっている。筆者は「少林サッカー」のチープさの方を愛する。かくいうCGもテレビゲームやハリウッドものを見慣れた人にとっては取り立てて褒めるほどではないだろう。

では、なにがおもしろいのか? まず、元が「西遊記」だから物語の構えが大きい。どんなに物語からはずれて脱線しても、戻るべきところがあるから話が破綻しない。

『スター・ウォーズ』にはキリスト教史観の暗喩が込められているようだが、それは筆者には分からない。しかし、この映画では東洋史観による暗喩が込められているので、筆者にもそれがわかるので楽しい。

第二点目として、人物像形がすばらしい。明らかにジョン・ランディス監督、エディ・マーフィー主演『星の王子 ニューヨークへ行く』のパクリだが、妖怪ハンターのひとりとして登場する空虚王子(ショウ・ルオ:羅志祥・台湾の歌手、俳優)は、白塗りで4人の姥桜が担ぐ蓮台に乗り、つねにまわりには花びらが散らされるという設定だ。

「虚弱なために咳なのか。それとも咳ばらいなのか、はっきりしろ」と言われる設定が面白い。人物設定が良いので、ギャグが自然でわざとらしくない。

この映画で最も素晴らしいギャグは孫悟空役の中国人コメディアン、ホアン・ボー(黄渤、Huang Bo)が、猪八戒をおびき寄せるために女性妖怪ハンターの段に、女っぽい仕草の踊りを教えるシーンだ。このシーンだけは作りこみのチャウ・シンチー監督が、台本通りではなく自由にやらせたのだろう。女優スー・チー本人に戻って吹いてしまっている。

そして、ラストシーン。三蔵法師は、孫悟空、猪八戒、沙悟浄を供にして拠点を求めて天竺に旅立つ。そこに流れる音楽をばらしている解説があるが、それはギャグ映画紹介にあたってのルール違反である。

それから、周星馳監督、お願いですから第2作にも必ずスー・チーさんをキャスティングして下さい。

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