<若者ではない「プロ若者」の是非>小4サイトねつ造事件から見る政治に関わる「プロ若者」たち
メディアゴン / 2014年11月25日 4時0分
水野ゆうき[千葉県我孫子市議]
* * *
政治に関心を持つことが若い世代の中でトレンドになっているのだろうか。
現在、多くの20、30代の若手政治家が誕生している。同時に、政治と関わる組織や団体も増えている。筆者自身、20代で初当選し、政治家となった。筆者は親の教育により「政治と生活は密着している」ということの重要性を子どもの頃から日常生活の中でしっかりと教わり、「必ず選挙に行く大人になる」ように育てられた。
社会人になって就職した報道機関では、生の政治経済に触れ、地域の大切さを「3.11東日本大震災」で身に染みて感じたことで、「地元の為」という熱意を持って、貯金をはたいて完全無所属で出馬した。そこには志と政策と確固たる強い信念しかなかった。そして筆者と同じ気持ちで出馬している若手政治家も多くいるだろう。
一方で「就職先」として選挙に挑む候補者も残念ながら少なくない。
若手政治家が世の中に輩出される背景には、NPOや起業家という位置づけで政治と関わる組織や人物が存在する場合がある。また、そういった関係者が出馬をするケースも多々見受けられるようになった。筆者もそういった関係者の中には、個人的に懇意にしている人も多い。そういった人にも、尊敬に値する方もは決して少なくはない。
「彼ら」に共通していることは、一見する「政治活動をしているようには見えない」というだけではない。SNSをはじめ、ネットによる情報発信を駆使しているということだ。
今回問題となった「小4ねつ造サイト事件」。政治に関わるNPO法人の代表を務める大学生が、小学校4年生になりすまして、政治サイトを制作・運営し、ツイッターで活動した。ツイッターのやり取りやサイトの出来具合からしてすぐにその「嘘」は見破られ、当該学生は謝罪し、代表を辞任する事態に陥った。
彼は若い世代に政治に関心を持ってもらうことを目的にNPO活動を始めたのだろう。しかしながら、「彼」の子どもになりすました手法と結末は、「若手政治家の一人」である筆者からすれば、残念な出来事であったと言える。
筆者は若手政治家の「未熟さ」や「軽いイメージ」を払しょくし、信頼を勝ち得るために、当選以降、支援者の方々と共に、日々の地味な政治活動に邁進して来た。毎日のSNSによる情報発信やブログによる情報公開は言うまでもない。選挙が数年後であろうが、日々、必ず駅や街頭に立ち続けている。
議会のたびに、自費で議会報告を作成・配布し、自分の足でポスティングをして「地域の声」を拾って議会へ届けてきた。もちろん、これは筆者だけのことではない。地盤も看板も持たない多くのがんばる「若手議員」や政治に関わる若い世代の人たちも、同じ様な努力を続けているはずだ。
しかし、今回の「小4ねつ造サイト事件」のような出来事が発生し、大きな注目を集めるようになると、若い世代で政治に関わる人間や団体への印象を大きく変えてしまう、という危険性がある。
一般市民として市民活動をしているが、その実態はプロの政治活動家であることを示す「プロ市民」という言葉がある。
当初は、政治に責任を持ち積極的に政治参画する市民を「プロ市民」と呼んでいたが、最近ではその言葉の使われ方は、前述のように変わってきている。
この「プロ市民」のプロ的な政治活動が「健全な市民活動」のイメージさえも悪くすることがある。市民活動には共感できるが、「プロ市民」の政治活動には共感できない人は多いだろう。
今回の「小4ねつ造サイト事件」で、小4に成りすました大学生は、「一般の若者」を装いつつも、プロ的に政治に関わろうとする「プロ市民」ならぬ「プロ若者」だったのではないか。今回は「プロ若者」が引き起こした出来事であるように思う。
「プロ若者」が純粋に政治を知り・取り組もうとしている大学生などの若者たちのイメージを下げてしまう危険性は否定できない。「若手議員」「SNS議員」と言われる筆者なども、例外ではない。日々街頭に立って演説し、議会報告を配布する地道な努力が疑われてしまいかねない。
若いということは実際の政治の中ではデメリットであることの方が大きい。そのデメリットを上回ることができる「唯一のメリット」と言えば、若さゆえの「純粋さ」と「まっすぐさ」である。テクニカルな部分では「ネットの駆使」だろう。資金に乏しい若手政治家にとっては、駆使できる最大の武器といえば、ネットぐらいしかないからだ。
今回の出来事は、その「唯一のメリット」を活用する手法を「間違えたやり方」で利用したことで、「若い」「ネット」というキーワードを持つ政治家(また関わる者)へ開かれつつあった道を閉ざしかねない。
我々若手に求められているのは、「まわりくどいネットの技」や「取り巻きの真似」などではない。
自分の名前で正々堂々と「おかしいモノをおかしい」と言うことである。素直な心で真摯に取り組む姿勢であることを決して忘れてはいけない。
今回の問題を契機に「若い」ということが「世間にどう見られているのか」ということを客観的に認識し、「若さが持つ武器」の使い方を間違え、一歩踏み外せば、それ相応の評価が下されるということを教訓にすべきだろう。
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