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<放送前のドラマ試写を見てみた>松坂桃李が演じる全盲の弁護士はどのように働き、殺人事件の謎を解くのか?

メディアゴン / 2014年11月28日 2時32分

高橋秀樹[放送作家]

* * *

TBSの「月曜ゴールデン」(夜9時から)は、いわゆる2時間ドラマ枠である。この枠で、大胡田誠弁護士のノンフィクション『全盲の僕が弁護士になった理由』を原作としたドラマが、特別企画『全盲の僕が弁護士になった理由 ~実話に基づく 感動サスペンス!~』と題して12月1日に放送される。

筆者は特別に許可を得て試写を見た。原作は2年半前に読んでいるが、その時の自分の読書メモにはこう書いてある。

 「先駆者がこじ開ける門戸」

著者は先天性緑内障で、12歳のとき視力を失う。旧司法試験と、新司法試験という制度の狭間で、5回目のチャレンジで合格する。常に先駆者がこうして門戸を切り開いてゆくのだ。

この本から何を読み取るかは読者の自由だが、筆者は著者の姿から「強さ」を読み取った。そして、その「強さ」とは誰もが持っているものではないので、「弱さ」をも認めることが大切であることを読み取った。

自画自賛になるが、まさしくこのドラマは、筆者の読書メモの記述通りのことをテーマにしていたように思われる。このテーマ性は、今回のドラマを見続けるためのエンジンのひとつである。エンジンは他にも2つ在る。

2つ目は、全盲の弁護士(松坂桃李)が、どう仕事をしているか? である。点字になっているはずもない膨大な調書をどうやって読むのか。依頼人の風貌風体がわからなくて意志の疎通はできるのか。弁護士過剰の昨今、所属事務所はなぜ、あえて、全盲の弁護士を雇ったのか。どうやって動きまわるのか。戸田恵子が非常に重要な役として登場するが、その役どころを書くのは、このドラマにおいてはネタバレの一つとなるだろうからここでは書かない。

3つ目のエンジンは殺人事件の謎解きである。ある鉄工所で社長が殺される、殺人の被疑者として逮捕されたのは若い工員だった。工員は刑事に問い詰められて自白する。しかし、弁護を担当することになった全盲の弁護士は殺人現場の工場を訪れ、ある違和感を抱く。新たな工作機械を入れることに反対していた昔気質の職人(泉谷しげる)が見せてくれたハンマーの中に一つだけ新しい“手触り” のものがあったのだ。

以下に筆者が、このドラマを見る上で「この先を見よう」と思うきっかけになったセリフを書き抜いておきたい。なお、放送前の試写なので、作品は一度しか見ていないのでセリフは正確なものではないことを、お断りしておく。

・「目の見えない人を土下座させたら、大抵は、させたほうが悪いと思うんだよ」
・「目の見えない弁護士に同情したんじゃないでしょうね」
・「僕が目が見えないから、ごまかせると、思ったんじゃないですか」

バラエティやコントの放送作家である筆者は、ドラマについては門外漢だから、ドラマがよく出来ているかどうか点検する時には、他人が作ったいくつかのものさしを使う。

そのひとつが、「日本映画の父」とも言われる牧野省三(1878〜1929)監督の三大原則「1.スジ、2.ヌケ、3.ドウサ」である。スジはシナリオのこと、ヌケは撮影・現像(テレビドラマでは美術・照明)の技術のこと、ドウサは俳優の演技のことである。

このドラマ『全盲の僕が弁護士になった理由 ~実話に基づく 感動サスペンス!~』では、この「1.スジ、2.ヌケ、3.ドウサ」どうだったのか、点検しながら見るのも楽しいかもしれない。

「3.ドウサ」(=俳優の演技)の面では、以下の様な感想を持った。

 「セリフを言いながら、その感情を同時に芝居(動き・仕草・ドウサ)にのせるのは、学芸会であるが、学芸会ではない動作ができているか、できるまでやれる時間的な余裕、撮影環境はあるのか。それがいまどきのドラマの成否を分けているのではないか」

さて、ちょっと蛇足になるが、好対照をなす作品との比較で視聴してみるのも面白い作品だ。

例えば、アメリカのケーブルテレビ局向けチャンネル「USAネットワーク(USA Network)」が制作する『名探偵モンク』(原題: Monk)という1持間読みきりドラマがある。主人公は、強迫性障害を持つ元刑事で休職中の私立探偵エイドリアン・モンク。

彼は、事件発生地点を指し示す無数のピンが刺さった地図を壁から落としてむちゃくちゃにしても、元通りに復元する瞬間像記憶を持っていたり、公園の杭が気になると、遠回りしてでも触って行かねば気が済まないという「こだわり」を持っていたりするある種の超人である。

この超人ぶりが嵩じて刑事休職に追い込まれたのだが、その推理力は凄まじく、今は子持ちの看護婦であるシャローナ・フレミングをアシスタントに、警察に「余計で、しかも役に立つ協力」をする探偵の身分である。

こちらはサスペンス・コメディ。それとは好対照をなす『全盲の僕が弁護士になった理由』はヒューマン・サスペンスである。『名探偵モンク』はレンタルもできるので、本作と比べてみるのも楽しいかもしれない。

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