<「伝わる文章を書く技術」の著者に聞いた>「きちんと読んでもらえれば大丈夫」という考え方に注意
メディアゴン / 2014年12月2日 13時0分
尾藤克之[経営コンサルタント]
* * *
ビジネスにおいて話の得意な人は多いと思います。ところが文章を書くことを得意にしている人は少ないのではないでしょうか。
今回は、「プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術」(KADOKAWA/中経出版)の著者であり、「ライフハッカー」の書評コーナーを担当している印南敦史氏(以下、印南)に、伝わる文章の書き方について聞いてみました。
●伝わる文章とは?
—「伝わる文章を書く」ことは多くのビジネスパーソンにとっての悩みだと思います。
印南:ビジネスパーソンが文章を書く際に気をつけてほしいのは「それを読んだ人がどう感じるか」「伝えたいことが本当に伝わるか」という視点です。そのなかのひとつが「簡潔さ」です。伝わる文章を書くにあたり、もっとも意識すべきポイントだといっても過言ではないと思います。
—色々な知識や経験があると、どうしても文章が難解になりがちですからね。
印南:難しい言い回しをしてみたり、あまり使われない漢字や熟語を使ってみたり、人はつい難しそうな文章を書いてしまいがちです。ここで気をつけたいのは、難しそうに見える文章というのは、意外に簡単に書けてしまうということ。逆にいえば、本当に難しいのは、簡潔に、わかりやすく書くこと。頭がよさそうに見せることよりも、柔らかな文体でわかりやすく書くことのほうがずっと難しいのです。
伝えることが第一目的なのだから、簡潔な文章を心がけるべきだということ。その際に必要なのは「平易な表現」と「わかりやすさ」。当たり前すぎるといわれそうですが、当たり前だからこそ奥が深く、簡単ではありません。
●文章の肉をそぎ落として「刺す」ことが秘訣
—文章を書くには慎重に時間をかけなければということですね?
印南:その逆です。私は書評を1時間前後で書き上げ、なるべく時間をかけないように努力しています。作業全体を俯瞰して無駄を削ぎ落としていきます。文章も同じで「時間短縮=手抜き」では決してなく、ダラダラと書き続けた原稿のほうが、クオリティの面では劣ります。文章を書く際の最大の無駄は「必要以上の時間をかけること」だと思います。無駄な時間をかければかけるほど、鮮度が失われ表現もお粗末になるものです。
まずは勢いで書いてみる。とりあえず、書き上げることだけに神経を集中させる。できあがったら読んでみて、おかしな部分をひとつずつ修正していく作業が必要だと思います。
—文章の書き方は分かりましたが、伝わる(伝える)コツはありますか?
印南:私は「ユーザーに期待させる」ことを意識して文章を書き上げます。期待とは「面白そう」「魅力的だな」と思ってもらえるヒントを散りばめることです。ヒントを散りばめれば全部を読む必要はありません。斜め読みで伝えることを意識することが大切です。
最も良くないのは「きちんと読んでもらえれば伝わるし大丈夫」という考え方です。これをビジネスに当てはめれば「上司にきちんと読んでもらえれば伝わるし大丈夫」という部下の身勝手さでしょう。上司は忙しくて時間がありませんから、そこを大前提としなければいけません。
—読む相手の立場にたつという考え方は大切ですね。
印南:「忙しくて時間のとれない相手が効率的に理解できる」ことを意識すれば良いのです。効率的に理解させる場合、自分が何を考えているかという視点は不要です。例えばニュースサイトが書き手の自己主張に満ちていたらどう思いますか。上司への報告書が自己主張に満てていたら上司はどのように思うでしょうか。必要なことは事実の積み重ねであって「役立ちそうな情報」であることです。「簡潔」に「事実を積上げ」て「役立つ情報」であればおのずと「刺さる」わけです。
—有難うございました。
本書に載っているメソッドは「読むこと」「まとめること」「書くこと」、そして「伝えること」を考える際のヒントとして役立つのではないかと思います。なお表紙の装画は、印南氏の30年来の友人でもある漫画家/イラストレーターの江口寿史さんの描き下ろしです。
[参考]「プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術」中経の文庫(http://amzn.to/1rIfudi)
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