義家弘介氏の面白すぎる随筆読解に池澤夏樹氏まっとうな反論
メディアゴン / 2014年12月4日 1時58分
保科省吾[コラムニスト]
* * *
そのコラムは小説家池澤夏樹氏の次のような文章で始まる。
(2014年12月2日朝日新聞夕刊より引用。以下、「」部分は引用)
「前衆議院議員の義家弘介さんが産経新聞で僕の文章を論じてくださった。」
実に慇懃で不穏さを感じさせる始まりである。高校教科書に採択されていた、池澤氏の随筆「狩猟民の心」に対し、義家氏は「これは子供たちに供するにはふさわしくない」と評したのだそうである。池澤氏の随筆は以下の様なものである。
「日本人の(略)心性を最もよく表現している物語はなにか。ぼくはそれは『桃太郎』だと思う。あれは一方的な征伐の話だ。鬼は最初から鬼と規定されているのであって、桃太郎一族に害をなしたわけではない。しかも桃太郎と一緒に行くのは友人でも同志でもなくて、黍団子というあやしげな給料で雇われた傭兵なのだ。更に言えば、彼らは全て士官である桃太郎よりも劣る人間以下の兵卒として(略)、動物という限定的な身分を与えられている。彼らは鬼が島を攻撃し、征服し、略奪して戻る。この話には侵略戦争の思想以外のものは何もない」
この髄筆に対する義家氏の意見。
「わが国では思想及び良心の自由、表現の自由が保障されている。作者が作家としてどのように表現で思想を開陳しようとも、法に触れない限り自由である。」
このあと批判しますからね、思う存分。という気持ちのこもった名文である。
「しかし、」来ました。来ました。逆接。
「しかし、おそらく伝統的な日本人なら誰もが唖然とするであろう一方的な思想と見解が」
「一方的な思想と見解」が、何を指すかというと、池澤氏が前述した文章全体である。
「公教育で用いる教科書の検定を堂々と通過して、子供たちの元に届けられた、という事実に私は驚きを隠せない」
(日本人なら誰もが唖然とするであろう一方的な思想と見解かどうか)を判断するのが教科書検定で、これは義家氏にとって教科書検定を通ってはいけないシロモノだったということである。義家氏の文章は続く。
「例えばこの単元を用いて、偏向した考えを持つ教師が『日本人の心性とはどのようなものであると筆者は指摘しているか。漢字4字で書きなさい』などという問題を作成したら、生徒たちは『侵略思想』と答えるしかないだろう」
筆者はこの文を読んで声を上げて笑ってしまった。このような問題をつくる国語教師は偏向しているのではなく能力がないのだろう。
義家氏の論評とは別に、池澤氏は自分の書いた随筆にある反省をしている。
「『日本人の心性』というのは間違いだった。悲しいことながら『人間の心性は』と書くべきだった。」
義家氏の文章、大変面白いので、もう一度まとめてご覧いただこう。
「わが国では思想及び良心の自由、表現の自由が保障されている。作者が作家としてどのように表現で思想を開陳しようとも、法に触れない限り自由である。しかし、おそらく伝統的な日本人なら誰もが唖然とするであろう一方的な思想と見解が公教育で用いる教科書の検定を堂々と通過して、子供たちの元に届けられた、という事実に私は驚きを隠せない」
義家弘介氏は、元ヤンキー先生。第1次安倍内閣で教育再生会議委員、第2次安倍内閣で文部科学大臣政務官。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【著者初のベスト版刊行】試練を負い、筆を口にくわえて花を描き続けた星野富弘・累計360万部以上の「花の詩画集」&エッセイのベスト版 2冊同時発売!
PR TIMES / 2024年9月18日 13時15分
-
政権が代わると歴史が変わる?韓国で歴史教科書の偏向性が問題に=ネット「親日政権になるたびに…」
Record China / 2024年9月17日 11時0分
-
「GHQが教科書から日本人の誇りを消し去った」 竹田恒泰氏が講演 仙台「正論」懇話会
産経ニュース / 2024年9月12日 19時11分
-
唯一無二の文章を書くために注意する1つのポイント...「としたもんだ表現」のバイアス【新聞記者の文章術】
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月11日 12時5分
-
インターネット上の「黒歴史」は削除できる...デジタル時代に紙で文字を残し続ける意味とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年8月28日 11時5分
ランキング
-
1アイスクリーム店に放火未遂の疑い 従業員の21歳女を逮捕 調理場の段ボールに着火か 那覇市おもろまち
沖縄タイムス+プラス / 2024年9月23日 6時41分
-
2次期知事選で「独自候補を検討」と兵庫維新、片山代表 斎藤知事の推薦は難しいとの見方も
産経ニュース / 2024年9月22日 22時52分
-
3大阪府議補選は無所属森西氏が初当選 維新、議席死守ならず
産経ニュース / 2024年9月22日 23時45分
-
4「また全部だめになった」「心折れた」頻発する災害に焦燥の被災地、能登豪雨の現場を歩く
産経ニュース / 2024年9月22日 22時19分
-
5琵琶湖で男女2人乗る水上バイクが風波で転覆 男性1人が今も行方不明 滋賀・大津市
ABCニュース / 2024年9月23日 9時20分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください