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<テレビドラマADの仕事[1/2]>「半沢直樹」の福澤克雄監督は「ロケ弁当発注の仕事は演出だ」と言った。

メディアゴン / 2014年12月11日 2時0分

貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]

* * *

「ロケ弁当発注」は演出だ。

そう語るのは「半沢直樹」や「ルーズベルト・ゲーム」、来年1月スタートの西島秀俊主演「流星ワゴン」を演出をする福澤克雄監督。厳しい制作現場にいい空気を作り出し、激務で目標を失いがちな下っ端AD(アシスタントディレクター)のモチベーションを鼓舞する、優しい叱咤激励の言葉です。

しかし、これは、ドラマ制作に関わるどんな仕事でも、演出の一部なんだという事実でもあります。

十数年前までは、ロケ弁当の発注は下っ端ADの仕事でしたが、スケジュール変動があるロケ先での弁当受け渡しをやってると、撮影現場に集中できなくなり、コストコントロールの面からも、ロケ交渉をする制作部で一括してやるようになりました。

制作部では新人が担当します。制作費厳しき昨今、撮影中のロケ弁当はスタッフ・キャストのささやかな楽しみの一つです。地方ロケで初めて発注する仕出し屋さんと、メニュー内容まで確認したにもかかわらず、悲惨な弁当になった場合などは、「センスないね~」「人を喜ばせることできないんじゃ、演出は無理だよね~」とゴチャゴチャ言われます。

たかが弁当、されど弁当、なのです。

テレビ業界で最もキツいと言われるドラマのAD(助監督)の仕事は、基本4人で分担して監督の演出を補助をするので、演出部とも言います。大雑把にいうと、チーフ助監督は撮影の全体を把握し、監督の演技指示を俳優に伝えたり、監督同行のロケハン(ロケーション・ハンティング)でロケ場所が決まると、様々な撮影の段取りをスタッフに指示し、スケジュール管理をします。

セカンド(2nd)助監督は大勢のエキストラを動かしたり、俳優の動きの「キュー出し」をしたり、スムーズに撮影ができるような現場作りの担当です。

サード(3rd)助監督は美術担当で、「パソコン画面」から「架空の○○銀行のロゴや名刺」に至るまで、作りものの作成や納期の管理、俳優の衣装替えやメイクのロケ準備のために前乗り手配をします。

いちばん下っ端のフォース(4th)助監督・・・というより「4thAD」は、カット割台本の制作など全ての雑用を引き受け、現場のいじられ役として、初々しくキビキビ走り回り、雰囲気作りにも貢献します。

下っ端の4thADは、ちょっと前まで学生だったり、居酒屋でバイトしてた素人さんだったりしますが、ドラマスタジオの厚い鉄の扉を開けたとたん、出演俳優とスタッフとの初顔合わせの場となる「衣装合わせ」で、佐藤浩市さんや木村拓哉さん、柴咲コウさんや綾瀬はるかさんを前に、いきなり自己紹介をさせられます。

素人の時はテレビでしか見たことがなかった、呼び捨てしていたスターさんから「よろしくお願いします」と挨拶をされるわけです。何故いま自分がこの場にいるのか、現実感が湧かないままのカルチャーショックで血管が切れそうになります。

筆者はテレビ局でも芸能界とは縁遠い営業からドラマ制作現場に来たので、会社で芸能人とすれ違っても「あっ!田村正和だっ」などと心の中で呼び捨てにしてました。しかし、制作に来てからカメラや美術スタッフが「正和さん」とか呼んでいるのを見て、「オレたちは素人とは違うんだよ」という優越感と違和感を感じたものでした。

いわゆる芸能人と汗まみれの夏のロケや、震えあがる寒さのナイトロケなどで時間を共有し、崎陽軒の焼売弁当を「今日はアタリだね!」と言いながら一緒に食べ、インスタントコーヒーを持っていったら「ありがとう!」などと言われる・・・。いかにスターさんであっても職場仲間の先輩後輩の絆が生まれるというものです。これは、自分が素人の時には考え及ばなかったことでした。

(その②に続く)

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