<現役弁護士が「あの花」で訴状を書いたら>たいていの裁判は認識の食い違いから始まる

メディアゴン / 2014年12月19日 0時50分

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高橋維新[弁護士]

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(本記事は、8ページの「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の訴状を画像化していますので、見にくい場合は、「メディアゴン」サイトにてオリジナル画像で閲覧ください)

<解説> 本記事は、現役弁護士の著者が、現実のメディアに溢れている様々な「訴訟に発展しそうな事実関係」を拾い上げ、その一方の当事者から依頼を受けた弁護士に勝手になって、大真面目に訴状を書いてみるという連作企画である。前回の第一弾では、「ウルトラマン被告の訴状」、第二弾では「魔法少女まどか☆マギカ」、第三段は「ドラえもん」をテーマに訴状を作成した。さて第4回目の今回は、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」である。

読めば分かるが、原告の主張は作中の事実関係とはかなり異なる。

これは、イレーヌのお母さまが、妄想でこういうストーリーを自分の頭の中に作り上げて弁護士に相談に行ってしまい、弁護士もそれが妄想であることを見抜けなかった(あるいは見抜いたうえで、負け筋と分かりつつ敢えてやった)、という設定である。

訴訟に発展するような事案は、根っからの悪い奴が普通の人を騙しており、その「悪い奴」の方が全面的に悪いという場合もたまにあるが、大抵はどっちもどっちである。

「普通の人同士」のちょっとした認識の食い違いが溜まりに溜まった結果、訴訟にまでなるのである。

訴訟にまでなる場合、大抵は問題が生じてから結構な時間(半年から1年ぐらい)が経っていることも多く、その時間の経過の中でお互いに記憶が自分に都合のいいように改変されていることもままある。

弁護士は、こういうところに注意しないといけない。

依頼者の話を全面的に信じれば100%勝てるという場合でも、訴訟になるような事案はそのように素直にはいかない。いざ裁判をやってみると、相手から全然違う話が出てくるのが通常である。そして、途端にこちらの雲行きが怪しくなるのもよくあることである。

まずは、依頼者の話は話半分くらいで聞いて、冷静にどうなりそうかを見極めることである。

筆者であれば、イレーヌのお母さまが原作みたいな雰囲気で相談に来て、この訴状に書いてあるような内容のことをしゃべったら、丁重にお断りすると思う。

どう考えても話がおかしいからである。

 「あなたは、子供だけでやっていたはずの遊びの内容に何でそこまで詳しいんですか? 見ていたんですか? 見ていたんなら止められたんじゃないんですか?」

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