<斜に構えた若者たち>なぜ女子大生風俗嬢はテレビカメラの前で泣き崩れたのか
メディアゴン / 2014年12月23日 4時52分
高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]
* * *
情報番組であろうがなかろうが、「ネタを探す」というのはある意味「人を探す」ということだ。興味あるネタにするには、その人の紹介だけで終わってはいけない。
この先どうなっていくのだろう? という関心が生まれるようなものにしなければならない。紹介だけに終始すれば、関心を繋ぎとめておくためには、芸人の間断なきトークが必要になっていく。
この先どうなるだろうという関心を持つネタを探すのは確かに難しいが、それがノンフィクションの魅力である。それが見つかれば芸人に頼ることもない。
以前、学生を中心に取材して番組を作ったことがある。学生の中には社会に積極的にコミットしていこうとする人々と、社会に対してどこか斜に構えている人とがいる。
最近は積極的にコミットしていこうとする人が格段に増えたように思う。就職の内定をもらいたいがために、3年生のうちから100社以上も応募しようとする意思があるのは、積極性があるとしか言い様がない。背に腹は代えられないというが、昔も確かにそうだった。
だが、どういうわけか昔から、一定程度斜に構えてしまう学生がいるものだ。20代の若者には確かにそういう一面があるのだろう。別に拗ねているわけではないが、どうしてもまっすぐには向き合えない。
まっすぐにコミットしたいと思う人も取材したが、どこか拗ねている人々も取材した。内面を知れば知るほどそうした人が興味深くなる。
新宿界隈で取材をした時のことだ。新宿にはさまざまな仕事を斡旋する人がいる。その人から新宿で働く学生の話を聞いた。彼はどこにどんな人がいるか詳しい。本当に苦学生で生活費を稼ぐために働いている人もいた。
しかし、どこか拗ねている感じの女子大生を一人紹介してもらった。頭のよさそうな女の子だった。彼女は、風俗の店と呼ばれる所で働いていた。そんな彼女と打ち合わせをし、撮影したいということ、撮影の趣旨や考え方などを説明し、撮影の了解を得た。
撮影当日は彼女が住んでいるアパートにも行った。この年齢の女子大生にしてはこぎれいで立派なアパートだった。そして撮れる範囲で一日を追った。
夜、撮影の終わりは静かな小料理屋で軽く一杯やりながら話を聞くという設定にしていた。レポーターは今ではかなり有名になっている人である。レポーターに頼んだことは「インタビュー」ではない。インタビューはこれまで散々やっていた。頼んだことは「何故、こんな無理して仕事をしているのか? 何故、拗ねて心をすり切らしているのか?」を話し合ってほしい、ということだった。
「拗ねていると思うということ」を説明するのは難しいと思ったが、レポーターの彼には出来ると思った。そして結論が出るわけではないから、話が終わったら、そのまま一人で出て行ってほしい、ということを頼んだ。
そして、カメラマンには、彼が出て行ったらそのままカメラは動かさず、固定したままずっと撮影を続けてくれ、と頼んだ。
「仕事を続けているのには明確な理由などない。」
ただ拗ねているというのは彼女にとってはそれなりの「重さ」のあることだった。
「社会に信じられるものが見つかっていない。」
そんな風に感じられた。
彼女から説得力のある言葉は出てこない。しかし、伝わるものはあった。話が終わりレポーターがいなくなると、彼女はそのまま全く動かず、しばらく泣き続けた。それはかなり長い時間続いた。
放送が終わり、すぐに筆者は次の仕事でしばらくの間海外取材に出た。珍しくちょっと長い取材だった。当時、まだ携帯電話はなかった。
海外取材から帰ってくると、筆者のデスクにメモが残っていた。彼女が会社に訪ねてきていたようだった。彼女はどこか気になる人だった。こちらから電話をしてみたが繋がらなかった。住んでいたアパートでも店でも捕まらなかった。「その源氏名の子は辞めた」のだという。連絡はつかず、結局、彼女がどんな用事で筆者を訪ねてきたのかはわからなかった。
そして、それっきりになった。もちろん、探す手がかりはなかった。後は大学だが、それはやるべきことでもない。何を言いに来たのかわからないままだった。
ただ、撮影が終わった時の彼女を思い浮かべれば、いつものような明るさに戻っていた。テレビに出ると決心したのは何かを吹っ切ろうとしたのかもしれない。あれからずいぶん時間が経ったが、相変わらずどこか斜に構えた人生を送っているのか、まっすぐ社会に向かっているのか、どちらなのかよくわからない。
だが、今でもこの後の彼女の人生が気になっている。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「月50万円マストだから」夫が突然貯金の猛者に…ルックスで男を選んだバブル女子大生の結婚残酷物語
プレジデントオンライン / 2024年9月18日 9時15分
-
「成人式には不適切な衣装」をなぜ作り続けたのか…「北九州の恥」と呼ばれたド派手衣装を生んだ店主のプロ意識【2024上半期BEST5】
プレジデントオンライン / 2024年9月16日 8時15分
-
“顔モザイク”で個人撮影モノに出演した女子大生の末路。元彼が「一発でわかった」身バレの原因とは…
日刊SPA! / 2024年9月15日 15時51分
-
「日本は痴漢大国」「女性は男性に浮気されても許す」世界からセックスツーリズム客が大挙押しかける理由
プレジデントオンライン / 2024年9月8日 9時15分
-
2歳から3年間「キャンピングカーで車中泊生活」をした女の子の現在。お父さんを取材
女子SPA! / 2024年9月8日 8時46分
ランキング
-
1「不明の娘、見つかって」=流された住宅、祈る父親―大雨で川氾濫、石川・輪島
時事通信 / 2024年9月22日 18時27分
-
2大雨による能登4市町の通信障害続く、停電や通信回線断線で携帯大手4社の280基地局が停止
読売新聞 / 2024年9月22日 18時12分
-
3石川・輪島で6200世帯が断水 市内の6割 能登豪雨
毎日新聞 / 2024年9月22日 18時25分
-
4能登豪雨「地域や行政だけで対応できない」 被災首長ら窮状訴え
毎日新聞 / 2024年9月22日 17時9分
-
5石川県能登の豪雨 輪島市は雨量の記録をことごとく塗り替える
ウェザーニュース / 2024年9月22日 14時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください