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<今、落語は一過性のブーム?>人間国宝・柳家小三治の噺の前にイマイチの構成と残念な客入り

メディアゴン / 2015年1月31日 1時16分

高橋秀樹[放送作家]

* * *

2014年12月25日の国立劇場「落語研究会」は、トリが人間国宝・柳家小三治であった。演目は「初天神」。もともと上方の話を移植したものだから、江戸落語で演じるときに行く天神様はどこなのだろう、話には具体的な名前があがらないが、湯島天宮か、亀戸天神か。

開演が6時半で平日。しかも木曜日のせいか、開演直後は客の入りは6割。なんだか自分のことのように焦る。

心の中で「人間国宝のトリだぞ」と叫ぶ。正月にやることの多い「初天神」を、年の瀬にやることに違和感を持った人が多いのだろうか。聞けば、最初の申し込みは「鰍沢(かじかざわ)」だったそうだ。この大ネタなら、客は来る。

しかし、「鰍沢」を小三治は断ったという。昭和6年生まれの入船亭扇橋師匠を気遣ってのことだ。今は、体調がすぐれないと聞く扇橋。人間国宝は扇橋先輩から「鰍沢」を教わった。「鰍沢」をやるときは、

 「扇橋さんにことわってからにしたい。でも、今はいかにも時期が悪い」

・・・であるのだそうだ。それで「初天神」なのである。柳派は、滑稽噺の一門である。とは言え「初天神」は、面白いとはいえ、いかにも軽い。

出囃子がなって、話が始まる。俳句好きの大家と無学な男の掛け合いで「雪てん」。恋患いで死んだ者の黄泉の国の道行「朝友」。瀧川鯉昇がこの日、一番の大ネタ、伝・圓朝作「芝浜」。「よそう、また夢になるといけねえ」でお仲入り。まだ、客は8割だ。

その昔は、「ホール落語なんて邪道だ」なんて言う人がいた。

 「噺てえのは寄席で聞くもんで、風呂屋の帰りに一杯引っ掛けた勢いで入ったら、志ん生が出てきやがって『黄金餅』を演るってんだ。もうけたねえ」

そういうのが噺だなんていう説教を聞かされたけど、もう寄席なんてなかったんだから、ホールで聞くしかない。ホール落語もいいところがあって、予め決めてあるから演題が、パンフレットに書いてある。

「ああ、これが『三枚起請』って噺なんだな」とわかったものである。それに、気持よく流れで聞けるように番組の構成というのが決まっている。しかし、それにしては、今日のホール落語「落語研究会」は、構成が悪い。

食いつきが膝代わりで演ったのは、くら~い噺で「不孝者」。人間国宝の露払いに「この噺はないだろう」など思っていると、小三治が登場したら、不満は全部忘れた。

12月17日に75歳になった小三治師、ぱあっと客席を明るくする。

 「後期ってやつになりました」
 「この話はどこへ行くかって心配になったお客さん、大丈夫です、今考えてますから」
 「で、何を言いたかったというと、やめます、この話は」

全部、間(ま)で取る笑いだ、「まくらの小三治」の、面目躍如。

気持ちよさそうにまくらをしゃべっているうち突然、

 「カカア、羽織出してくれ」

「初天神」が始まった。

この人を「小さんに出来ない落語界」。今、筆者には、落語が、一過性のブームに思える。

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