<NHK大河ドラマ・吉田松陰の効果?>「花燃ゆ」でにわかに盛り上がりをみせる「松陰神社」
メディアゴン / 2015年1月5日 2時48分
水留章[テレビ番組制作会社 社長]
* * *
今年のNHKの大河ドラマ「花燃ゆ」が始まりました。
貴島誠一郎氏がメディアゴンの記事(佐藤浩市さんにお願いした400枚以上の日付入りサイン色紙)でも書いていたように、NHKの大河ドラマの舞台になるとその地元は結構大騒ぎになります。
筆者は松陰神社(墓所がある東京都世田谷区にある方。生まれ故郷の山口県萩市にもある)の近くに住んでいるのですが、最近「なるほどなぁ」と思わされることがあります。このあたりには20年近く住んでいますが、つい以前までは東急・世田谷線の駅名に「松陰神社前」とあるものの「世田谷区役所最寄駅」と補足で書いてある方の名称が、本来の駅名「松陰神社」よりポピュラーだったような気がしていました。
パワースポットブームの影響もあるのでしょうが、このところ松陰神社の注目度が上がっているように思います。七五三の時などがよくわかるのですが、明らかにここ最近は参拝者の数が増えています。雑誌片手やスマホ歩きで店を調べている若い女性のグループもよく見かけます。
昭和の商店街が残っている地域なので、ある惣菜屋(おでん種)さんも、テレビによく取り上げられています。数年前に紅生姜入りのかき揚げを「松陰ジンジャー」と名付け売り出したところ、ある有名な雑誌には「松陰神社に行ったらこれっ!」と紹介までされていました。
松陰神社境内も大河ドラマの準備に余念がありません。「(我らが)松陰先生が大河ドラマに登場」のポスターや限定頒布の「花まもり」の掲示を見ると嬉しいやら気恥ずかしいやら困った感じです。
もともと吉田松陰は色々な評価のある人です。悪く言う人ならば「幕末の反体制派の過激な原理主義者」「謀叛者・テロリストたちの煽動者」「自らも禁を犯して海外渡航を企てようとする突破者」「最後は幕府転覆を企図して刑死」。
良く言う人ならば「徳川幕府打倒の思想的基礎を書いた思想家」「明治維新の偉人たちを育てた教育者」「無実の罪に問われながらも従容として死を受け入れた革命家」。
いづれも評価もおそらく的を得ているとは思います。しかし、個人的には吉田松陰とは「思い込むと突き進む。うまくいかなくとも、周りがそれは無理だったといっても、『?』という顔をして、また同じことを始める」。そんな純朴な「突破者」だったのではないかとイメージしています。
吉田松陰の評伝を何冊か読めばわかりますが、満30歳前に亡くなるまでの行動力はとても凄いものがあります。移動距離は大変なものです。北は津軽の龍飛岬から西は長崎熊本まで、数回の遊学や密航企画で現在の都道府県の半分近くに足を伸ばしています。それも牢屋に入れられたり、蟄居を命じられていた時間があるにも拘らずです。
家族の目から見れば 自慢の次男「寅次郎」であったと同時に、彼の発言・行動に心配や面倒をどれほどかけられたことでしょう。こんな子供や兄弟が家にいたら普通は勘当です。いや、知らん顔して無視の方が良いかもしれせん。だからこそ、松陰の妹の「文」を主人公にするというのでどんな「迷惑かけられドラマ」になるか楽しみです。
古今東西、才ある人が事をなしていく時に、どれほど周りは大変な思いをしなければならなかったでしょう。それに耐えられるのは家族への愛情と天才の出す結果でしかありません。でも松陰さんのように生前は苦労ばかりで、「当時の凡人」から見れば結果の出なかった人の家族を描くというのは難しいけれどとても興味があります。
お墓の中の松陰自身から見れば「伊助」(伊藤博文の幼名)が死骸を刑場から隠れて運んで、こんな(江戸から離れた世田谷村の)田舎に埋めてしまい、おまけに、弟子たちが一寸偉くなったからといって「神社まで作り、祭祀して神様扱い」して、今度はテレビが妹のことをとやかく扱うとは・・・みんな色々と余計なことをしてくれるなぁ・・・。といったところではないでしょうか。
井伊家の菩提寺の豪徳寺と1kmの距離に松陰神社があるのが歴史の巡り合わせしれません。が、松陰は別に井伊直弼の事を当時も今も気にはしていないと思います。そういう人だったと思います。
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