<役者・西田敏行はこう言った>客を度外視したドラマを作る乱暴者、出でよ。
メディアゴン / 2015年2月11日 2時27分
貴島誠一郎[TBSテレビ制作局担当局長/ドラマプロデューサー]
* * *
毎週土曜のあさ7時30分からの「サワコの朝」(TBS系)は、「聞く力」の達人・阿川佐和子さんが各界の著名人にインタビューする番組です。トーク番組は数あれど、インタビュー番組と呼べるのは「徹子の部屋」(テレビ朝日系)があるくらいでしょうか。
筆者は「サワコの朝」の収録に立ち合ったことがあります。30分番組ですが事前調査してあるので、収録のメドは45分。盛り上がったり、逆に盛り上がらなかったりすれば60分、それ以上の収録時間になると、話の噛み合いが悪く、達人・阿川さんもかなり苦戦したことになるようです。
本年1月末の放送は名優・西田敏行さんがゲストでした。ベテラン俳優の俳優論・演技論はなかなか興味深かったので、ここに一部を再録したいと思います。
西田敏行さんを紹介する時は、普通、「俳優」とされることが多いですが、西田さんご本人は「自分では『役者』だと思っている」のだという。「俳優」とは、自分自身に役を近づけて演じるタイプで、高倉健さんのような主演のスター映画俳優に多い。「役者」とは、役に自分自身を近づけて演じるタイプで、映画「釣りバカ日誌」の故・三國連太郎さんなどが同じ匂いを感じるそうです。
昔は映画人やテレビマンも客を度外視した「作品」作りに熱い人が多かったものの、最近は「コンテンツ」というか、客やお金を意識した匂いを感じることが多いのだとか。
西田さんの言を借りると、
「最近の映画やテレビドラマは、どこか予定調和的になってきていないか? 常識はずれの『型破り』なものを作るパワーを失っていないか? 客を意識し過ぎると、客は離れていくぞ! 演者も作る人も『型破り』じゃないと、記憶に残る存在にならないよ! 演ずることや作ることを本当に楽しめないと、客を楽しませることはできないよ!」
そんなことを言ってるような気がしました。
映像ビジネスの潮流を大きく変えるのは至難の技です。コンプライアンスやコンテンツビジネスなどの横文字は、日本のグローバル化に欠かせないものなのでしょう。しかし、大衆演芸に端を発した日本の芸能や舞台、それを映像化した日本映画やテレビドラマは、ハリウッド映画やアメリカテレビ映画とは異質な日本独自の文化です。
ジブリのアニメーションのように、日本の映像グローバル化もいずれ達成されるでしょうが、日本ローカルの映像文化の原点に、もっと自信を持って良いのではないかと、西田敏行さんは、そう言ってるような気がしました。
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