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<ベテラン相撲記者が読み解く白鵬の審判批判>前人未到の大記録を達成した平成の大横綱の大人気ない態度

メディアゴン / 2015年2月15日 3時38分

北出幸一[相撲記者・元NHK宇都宮放送局長]

* * *

大相撲初場所千秋楽の翌朝は優勝力士の記者会見が恒例となっている。大鵬の持つ32回の優勝回数を抜き去り、単独で史上最多の33回目の優勝を全勝で締めくくった白鵬の会見は2015年1月26日午前10時30分から予定されていた。

宮城野部屋の打ち上げパーティーから続く酒宴は明け方まで続いたのだろうか、白鵬は一時間以上も遅刻をした。

そして、

 「大記録を全勝で決めたというのは如何ですか」

と質問されて、いきなり、

 「疑惑の相撲がひとつあるのですよ」

と発言。13日目の大関・稀勢の里との取り直しの相撲について審判大批判を展開したのである。

 「帰ってビデオを見たけど、子どもでもわかる相撲だった。何故取り直しにしたか。ビデオ判定はなにをしたのか。悲しい思いだった。もう少し緊張感を持ってやってもらいたい。元お相撲さんでしょうビデオ判定は。こんなことは二度とないようにやってもらいたい」

と白鵬の審判批判は途切れることなく、しばらく続いたのだった。

筆者も白鵬の身近で記者会見を取材していたが白鵬はいつになく感情をあらわにしていた。代表質問のアナウンサーは、白鵬は酒臭かったと話していたことからも、日頃の不満が酔いも手伝って一気に噴出してしまったのだろうか。

現役の横綱が記者会見の席で公然と日本相撲協会審判部を批判するという異例の発言は、翌日の各紙の紙面に大きく掲載された。一面を使って白鵬批判した取組の大きな写真を載せたスポーツ新聞や、論説委員が書く朝刊一面の随筆に取り上げた一般紙もあった。

横綱審議委員会の内山斉委員長は、

 「勝負判定への不平不満はよくない。審判は厳正なもの。自分の未熟さをさらけだしている。本人の自覚を待ちたい」

と白鵬を厳しく断じ、白鵬は自身の不用意な発言で前人未到の大記録にすっかり水を差す形となってしまった。ビデオ担当の錣山親方(元関脇・寺尾)も、

 「白鵬の右足の甲が返っていた。審判のなかには白鵬の負けを主張する人もいたが、相撲の流れから同体、取り直しとなった」

と白鵬の主張に真っ向から反論した。

師匠の宮城野親方(元幕内・竹葉山)は27日に北の湖理事長(元横綱)に謝罪し、伊勢ケ濱審判部長(元横綱・旭富士)にも謝罪したという。宮城野親方は白鵬に直接注意し、白鵬も親方の話にうなずいて「すみません」とあやまったという。

宮城野親方は、

 「白鵬は日本語の言葉の“あや”が分かっていない。報道で伝わったような意味ではなかったはず」

と擁護した。当の白鵬は31日に出演した民放のバラエティー番組の中で、

 「場所後の件ですが、ご迷惑をかけ、また心配をかけたおわびします」

と発言して、批判発言から5日目で初めて謝罪の言葉を口にした。

白鵬としては、番組での発言でこの件を終息させたい思いだったのだろうが、直接、白鵬の発言を聞いて取材していない相撲記者クラブ各社の記者はこれで納まらなかった。バラエティー番組翌日に国技館で開催された白鵬主催の国際親善交流少年相撲大会「白鵬杯」の際にも記者が質問をしたが、白鵬は指を口に当てて「シーッ」の仕草を見せるだけで謝罪に関する発言をしていない。

さらに2月8日の大相撲トーナメントでは取組終了後の支度部屋では取材を避けて記者に背を向けて髷を直していた。筆者はその白鵬の背中を直接見ていたが、前人未到の大記録を達成した平成の大横綱が大人気ない態度だと思わざるをえなかった。

会場を引き上げる際に記者から「審判に謝罪はしないのか」という意味で「審判が来ていますが・・」と言われると、「なに!」と少し声を荒げるなど、審判大批判騒動は納まるどころか、一向に終息していないのである。

白鵬は北の湖理事長に対して直接謝罪するべきだった。モンゴルの習慣は知らないが、男がいったん口に出したことを取り消すのは恥という文化があるのだろうか。

白鵬には「水に流す」という日本の伝統の奥深さを知ってもらいたい。

このままでは2月23日に予定されている春場所番付発表の記者会見の席まで、この騒動が尾を引くのではないかと懸念される。審判批判の発言はともかく、今の相撲界で頂点に立つ第一人者は白鵬であることに誰も異論はない。しかし、横綱大鵬の連勝が誤審のため45で止まった際、大鵬は「横綱がああいう相撲を取ったのが悪い」と言って不満は一切もらさなかった。その大鵬の姿勢こそ白鵬は学ぶべきである。

千秋楽土俵下の優勝力士インタビューで白鵬自らが答えた、

 「大記録の数字は超えたが、精神的なものはまだまだです」

という言葉をもう一度思い出し、横綱の理想的な姿としてあげられる「心、技、体」の充実、とりわけ「心」の充実に一層精進してもらいたい。

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