<メイカーズムーブメント」って何?>ドローン(無人飛行機)も自動車も3Dプリンタで誰でもが作れる時代に。
メディアゴン / 2015年2月14日 2時17分
岩崎未都里[ブロガー]
* * *
宮崎駿監督のアニメ映画「風立ちぬ」がノーカットテレビ初放送されます。「風立ちぬ」は、実在した航空技術者・堀越二郎(1903〜1982)が少年の頃に夢で見た、空想の飛行機がエンジンをかけ、クラッチをつなげると、空中にふわりと飛翔し、自由自在に飛び回るシーンから始まります。
筆者も堀越二郎のような幼少期でした。飛行機・自動車・船など「乗り物」が大好きで、「図面さえあれば、乗り物は全て「ゼロから作れる」」と大声で宣言でしてきました。だれしも、大空を飛びたいし飛べると思ったことがあるのではないでしょうか。「できるわけが無い」と頭から否定されても「同じ人間が作ったのだから、私にも作れるはず!」と今でも思い続けています。
この「ゼロから作れる」という信念を、羽田空港整備士や自動車メーカー勤務の友人に熱く語ってみたのですが、即座に「ゼロから乗り物を自作するのが不可能に近い理由」をわかりやすく説明してくれました。要点だけ箇条書きにしますと、
・知識:技術的専門知識から法律までの幅広い知識が必要
・資金:工作機械や金型など、全てを用意し自作する莫大な資金が必要
・時間:一人で全て設計し製造するには、天文学的な時間が必要
と、なります。
確かに、今から技術と法律の知識を身につけ、莫大な資金を用意しながら設計する人生数十回分もの時間は誰にもありません。あきらめきれずに大型でなく小型では無理なのか? などまだ考えている筆者に、「不可能」と数年間言い続けてきた友人がニッコリ、
「ただし、それはこれまでの話し。世界規模で進行する<メイカーズムーブメント>ならば、たぶん作れてしまうでしょうね」
と言いなおしてきたのです。
ところで、「メイカーズムーブメント」って何? という方にちょっと説明。
雑誌『ワイアード』US版の元編集長クリス・アンダーソンが提唱し実践している、「誰もがモノ作りをすることができる仕組み」のことを指します。それが「メイカーズムーブメント」です。
ブログやSNSの普及によって扱うデータが、テキストや写真、音楽、動画に加えて、『製品データ作り』といった領域にまで広がり3Dプリンタの普及と合わさって、ソーシャルにものづくりが可能になってきました。「メイカーズムーブメント」はそのような、オープンイノベーションの一種でもあります。
このムーブメントで、以下の3つのことが実現可能になったと言われています。
1. 3Dプリンタやレーザーカッターのようなデジタル工作機械がデスクトップに置かれるようになり、専門知識を持たない人たちでもモノをデザインできるようになった。
2. デザインされたアイデアをオンラインのコミュニティで公開しながら、オープンイノベーションによって世界中の仲間と共創できるようになった。
3. 世界中にある製造ソーシング会社をネット経由で利用すれば、即座に低価格・小ロット生産することができるようになった。
これまで「専門知識・資金・時間」に縛られていた「乗り物」であっても、これらを利用すれば、個人でも製作可能となるかもしれないのです。法律や技術を含め、制作工程の全てを自分だけで検討する必要は無いわけです。
クリス・アンダーソン自身が、ラジコンのドローン(無人飛行機)を製造販売するオープンなハードウェア企業、「3Dロボティクス」を立ち上げ、数億ドル企業へと成長させています。ドローン=無人機とはいえ、飛行機には変わりがありませんよね?
そして、とうとう「乗れる自動車」が登場しています。先月の2015年1月のデトロイトモーターショーに、ついに3Dプリントによる自動車が登場し、話題を呼んでいます。
世界初の販売用3Dプリント自動車は北米のベンチャー企業「ローカルモーターズ」が製造した「ストラティ」です。「ストラティ」は二人乗りの電気自動車で車体はカーボンファイバー配合ABSプラスチック製で、3Dプリントにかかる時間は44時間。駆動用バッテリーとサスペンションはルノーから調達しているそうです。
現在のところストラティのアメリカ国内での販売価格は25,000ドルから35,000ドル(約300万円から420万円)程度になる模様ですが、更に3Dプリント時間を短縮して価格を下げるとか。
3Dプリンタでの製造工程は動画で公開されていますが、まさにストラティ(※イタリア語でレイヤー=積層を意味)な作り方で、本当に自動車が作れてしまうんですね。 もちろん、これで全てが現実化するわけではありませんが、可能性は見えてきたように思います。
筆者が夢見ていた「ゼロから作れる」は今、現実になりつつあるのです。堀越二郎少年の夢見た「鳥型飛行機」も想像通りの形で、大空を自由に舞う日が遠くない未来にくるかもしれません。
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