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<戦闘機のカメラに記録された70年目の空襲映像>佐藤浩市が願う「日本が未来永劫戦後であるために」

メディアゴン / 2015年3月7日 4時6分

高橋秀樹[放送作家]

* * *

「できる人」たちと仕事をするのは実に清々しいことである。

TBS 系で3月9日(月)よる9時~11時4分放送の「戦後70年 千の証言スペシャル『私の街も戦場だった』」の構成を筆者が仰せつかった。

チーフ演出の沈思黙考派にして行動派・山岡陽輔くん、ディレクターは、ナレーションはピカイチ・真木明さん、じろり本質をつかむ住友洋介くん 英語使いのハッキリ娘・宮本晴代さん、ムードメーカー・菅野浩志くん、粘り腰のタフネゴシエイター・高橋史子さん、大分放送から参加した若き敏腕・堀公一くん、ドラマパートの監督である竹村健太郎さん。

ディレクターより長く編集時間を取った編集マンの大生哲司くん、庄司尚慶くん、よく走るADの石角紗希さん、堀江千華さん、豪腕のスケジューラーAP・斉藤美紀さん、内容プロデューサー恋多き田代秀樹くん。

こんなに「できる人」がきちんと揃う番組というのも珍しい。

「できる人」が揃うと構成作家は非常に楽である。ナレーションの直しをしているときに「ここはちょっと」と指摘すると、ディレクターも「私もどうにかしたいと思っていた」という反応が返ってくる。

「だめなあ」と思う場所が一致するのである。「打てば響く」という言葉通りのことが実現する。「本当にダメなところと、書き手の趣味がはいっている場所が区別できているので、趣味嗜好の所は言い争ってもしょうがない、それは演出のチーフの指示に揃えればいいのだ。」ということを「できる人」はきちんと認識している。

だからナレーションの直しはあっという間に終了する。と言ってもみっちり4時間ほどかかったけれど。

「できる人」たちと一緒に作り上げた番組は、当然クォリティの高い番組に仕上がった。この労作には是非ともいい数字(視聴率)を取って欲しい。ただし、クォリティの高い番組が、必ずしも数字を取らないところがテレビの面白いところでもある。

『私の街も戦場だった』は、ナビゲーターの佐藤浩市さんが「戦後70年の節目に、日本が未来永劫、“戦後”であって欲しい」という思いを込めてできあがった番組である。放送日の3月9日は、奇しくも東京大空襲の前日。1945年3月10日の大空襲で死者数は10万人、罹災者は100万人を超えた、東京は灰燼に帰した。B-29爆撃機から、無差別に焼夷弾を投下されたのである。

空爆によって制空権を確保し、その後に地上部隊を投入する、イラク戦争も同じ。今も変わらぬアメリカ軍の戦術である。

我々はこの大空襲を歴史として認識しているが、実は、東京のような大都市以外も空爆の被害に遭った街があった。その数は、現在、米国が保存する映像と照らし合わせて特定された場所だけで139カ所。

東北大震災にも見舞われた釜石、メルトダウンした福島第一原子力発電所のある双葉街、大熊町、隣接する浪江町。千葉県鴨川市。大分県宇佐市。宮崎県都城市、日南市、串間市。鹿児島県鹿児島市、薩摩川内市、枕崎市。等々。

これらの街を襲った映像は米軍戦闘機P-51に取り付けられたガンカメラによってほとんどがカラーで収録されていた。ガンカメラとは機銃の引き金を引くと同時に回り出して、映像を記録する特殊カメラである。番組ではこの映像を現在の映像と重ね合わせて見ていただく。

戦闘機P-51が、機銃掃射によって狙ったのは軍事施設だけではなかった。特に狙われたのが鉄道である。あらゆる物資輸送を不可能にするのが狙いである。

その列車には当然民間人も乗っていた。戦争で民間人だけを打たないことは、建前だけでああって、不可能である。最大の惨劇となったのは八王子を走る中央線である。その列車に乗って長野に疎開しようとしていた10代の姉妹、姉と妹、生と死の運命を分けたものは何だったのか。

番組は、この中央線を撃ったパイロットを特定した。

俳優・佐藤浩市が大型報道番組で、初めてナビゲーターに挑戦した。チーフディレクターの山岡は佐藤さんのことをこう表現している。

 「オーラを感じる、佐藤さんを前にすると証言者たちが、自然に話し出したくなってしまう。あれは、オーラだ」

佐藤浩市が、引き出した「戦後70年目の貴重な証言」とはなんだったのか。おっと、これ以上書いてしまうとネタバレになってしまう。ぜひ番組を見て、自分の目で確かめてほしい。

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