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<ゲイは同性婚をこう考える>妻子持ちの男性を好きになった時、彼の幸せを願う自分がいる。

メディアゴン / 2015年3月5日 2時23分

<ゲイは同性婚をこう考える>妻子持ちの男性を好きになった時、彼の幸せを願う自分がいる。

YASU-CHIN(ヤスチン)[ダンサー/六本木ビザール・ショーリーダー]

* * *

エンターテインメントの世界では、ゲイやレズと呼ばれる同性愛者たちが、他の業界よりも多く活躍しているように思う。筆者自身がそうであるし、また、一般的に見てもダンサーやパフォーマーあるいはテレビタレントとして活躍している人々に同性愛者は決して少なくない。

この3月に東京都渋谷区で、全国で初めて同性カップルを「結婚に相当する関係」として証明書を発行するという条例案が提出されるという。最近、にわかに同性同士による結婚、「同性婚」に注目が集まっている。

愛の形に性別は関係ない・・・と言えば聞こえは良いが、様々な法的扶助や公共サービスを日本の「夫婦」が受けるためには、現在のところ男性と女性という「異性婚」であることが前提となる。

もちろん、養子縁組のような形式で戸籍を同じくすることで、法的な「家族」を形成するという方法は、以前からなされてきた。しかし、それらはあくまでも、「養子縁組」であって「結婚」ではない。もちろん、「結婚に相当する関係」の証明書も同じかもしれない。同性婚への議論の盛り上がりには、同性愛者の当事者としては思うところもある。

(写真:筆者)

筆者は、これまで同性愛者として生きてきたが、ダンサーやショウビジネスの世界では、必ずしも「異性愛者でない」ということが人生の足かせにはなってこなかった。こと芸能界というフィールドで考えれば、それが有利に働くことさえある。

現在、筆者がショーリーダーを務めておるショーシアター「六本木ビザール(東京都六本木7-14-1宝祥六本木ソシアルビル6F)」は、そんなゲイやレズ、SM愛好者あるいはその他の性的異端者(ビザール)とされるダンサーやパフォーマーが数多く集まっている。おそらく、ショーシアターが多数軒を連ねる六本木界隈でも、筆者の「六本木ビザール」はどこよりも多くの「ビザール(異端者)」とされる人たちがいる店であると思う。

しかしながら、筆者ら「六本木ビザール」のゲイやレズの面々の中で、社会的に話題になっている「同性婚」について話が盛り上がることはない。

新聞やテレビの報道では、同性婚について、興味本位の扱いも含めて、様々な情報を目にするようになっている。その反面で、話題の中心にあってしかるべきである筆者たち「ビザール」のダンサー、パフォーマーたちはどうか、と言えば、世間の報道や話題性とはかなり雰囲気が異なっているように思う。

まず、筆者自身の目線で言えば、同性婚に関して、今一つピンと来ていないと言わざるを得ない。

例えば、筆者がかつて恋心を抱いていた男性は「ノンケ(異性愛者)」であり、しかも妻子持ちだった。いうまでもなく、男性同性愛者である筆者は「同性愛者が好き」なのではなく、「男性が好き」なのである。

つまり、好きになる対象が異性愛者であったとしてもおかしくない。むしろ、好きであるがゆえに、「自分のモノにしたい!」という感情よりは、「彼の見ている幸せや家族」を含めた全部が好きになってしまうのだ。

もちろん、筆者も人並みに「ゲイとの恋愛」のようなことはちょこちょことしてはいる。しかし、当然のことながら、結婚どころか付き合うまでにも至らず、一夜を共にして満足して終わり・・・ということがほとんどだ。これは異性愛でも同じことが言えるかもしれない。

さらに言えば、筆者のダンサー、パフォーマーという職業も少なからず影響はしているだろう。最近では「作品作りの為に恋愛」をしている自分がいると感じることさえある。そうなると、結婚どころか、本当に人を好きになっているのか? ということさえ疑わしくなる。

そもそもゲイである筆者は、たとえ同性婚が実現しようが、子供を持つことはできない。子供を持つことが夫婦や家庭の唯一の幸せとは限らないものの、一般的には「子供を持つ」ということが結婚への大きな原動力になっていることは間違いないだろう。

しかし、筆者にとっては、子供を持てないという現実が、お互いを「結婚で縛り合う」ということの必要性を低めているように思う。その結果かもしれないが、筆者には、同性婚か異性婚かの違いではなく、そもそも結婚願望がないのだ。

いうまでもなく、これらは全て、筆者の考えであって、同性愛者全てに当てはまることではない。もしかしたら、筆者の意見に真っ向から異を唱える人もいるだろう。それでも、メディアで同性婚がとりだたされ、その議論が盛り上がる中で、自分も含めて「置き忘れられた当事者たち」がいるように思えてならない。

何よりも、一度、六本木ビザールに来ていただければ、世間の「同性婚」談義の盛り上がりとはいささか距離を感じる「一番のリアル」を目にすることができるように思う。

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