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<「特撮愛」は日本独特の文化>「ゴジラ」も「惑星大怪獣ネガドン」も着ぐるみに見えることが重要

メディアゴン / 2015年3月8日 1時33分

岩崎未都里[学芸員・美術教諭]

* * *

先日、筆者は新宿で突如巨大なゴジラを目の当たりにし、かなり驚かされました。

「新宿歌舞伎町で建築中『新宿東宝ビル』屋上に、地上52mに原寸大のゴジラ頭部『ゴジラヘッド』が登場!」のニュースを、その後に読んで、東宝制作の完全日本版「ゴジラ」の新作宣伝と知りました。

非常に正確で、ちょうど「ゴジラ」の設定身長と同じ高さ、靖国通りから見るとビルの向こうに本物のゴジラがいるように見えるわけです。また、報道によれば、同ビル内にオープンする「ホテルグレイスリー新宿」にはゴジラの世界を客室で体験できる「ゴジラルーム」と、「ゴジラヘッド」を目の前に見る「ゴジラビュールーム」も誕生します。

いよいよ東宝制作の完全日本版の新作『ゴジラ』が12年ぶりに復活し、2016年公開予定へ向け真剣勝負に出たと感じます。

ただ、この「原寸大ゴジラヘッド」は、昨今のリアルなCGゴジラを見慣れた筆者の眼に「造形がちょっと着ぐるみっぽくないか?」と、感じたのです。

これをゴジラマニアの友人達に話してみると、

 「日本人の特撮愛がわかってない! あえて着ぐるみに見えるのが大切なんだ。」

など、熱く語られました。日本の特撮は人形浄瑠璃や歌舞伎に通じる様式美の世界だそうです。そこで初めて筆者は「なるほど!」と、合点がいきました。

例えば、人形浄瑠璃で黒子が見えていても「存在しない」として観ます。黒子をみて「あの人たち何?」など聞くのは確かに不粋。飛行機の模型を吊った糸は見えていても「存在しない」のです。

ゴジラを観て「着ぐるみっぽくない?」「あの糸CGで消せないの?」など聞くのは「特撮愛を全くわかってないヤツ」なわけですね。職人技を感じる「精緻な模型やジオラマ」が、一瞬のうちに着ぐるみ怪獣に破壊されてしまう。これも花火にも通じる日本独自の「散華の美」。

日本独特の文化「特撮愛」の参考になると友人から一枚のDVDを渡されました。2005年に公開された自主制作怪獣映画『惑星大怪獣ネガドン』です。筆者はこの作品を観て驚きました。実写を一切使用しない、当時としては世界初の全篇フルCG怪獣映画です。監督・脚本・制作を一人で行ったのはCGクリエイターの粟津順監督。

この作品の見所は「ミニチュアを使った特撮では?」というリアル。つまり、昭和30~40年代の「昭和特撮映画」の黄金時代 をフルCGで完全に再現しているのです。第1作以来のゴジラをこよなく愛し、1999年公開の『ガメラ3』を劇場で見てCGを志したという粟津監督は、当時のフィルム質感に近づけるために、フィルムにちらばるゴミや縦すじ、フィルム一コマ一コマの汚れ具合の違いなどをフィルムに入っているグレイン粒まで再現して入れてるのです。

この「特撮愛」に溢れた『惑星大怪獣ネガドン』は怪獣映画生誕50周年を祝う形で、東京国際ファンタスティック映画祭2005で初上映。大好評となりテアトル池袋のレイトショーでは動員記録更新という快挙を成し遂げました。

筆者は「着ぐるみ的」で「飛行機を吊るすピアノ線」を敢えてみせる、本物の日本の「新作ゴジラ」のファンとなりましたので、もう一度新宿へ「ゴジラヘッド」を見に行きます。

皆様も新宿の歌舞伎町に行く機会があったら、原寸大の「本物の日本のゴジラ」を見て、その「特撮愛」という日本人独特の文化を、じっくりその目で見ていただきたいと思います。

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