<TBS「ウロボロス」は禁断の場所>撮影の裏側をバラす副音声=「ウラバラス」がおもしろい
メディアゴン / 2015年3月12日 1時11分
黒田麻衣子[国語教師(専門・平安文学)]
* * *
ドラマ本編に、出演者自身が「ツッコミ」を入れたり、撮影の裏話をしたりする声を副音声で流す手法は、実は先にフジテレビが『ファーストクラス』(2014/主演・沢尻エリカ)において、やっている。
『ファーストクラス』は、イジワルキャラの女性の毒舌が話題になったことから、「副音声で一話すべてに『心の声』をお届けします」であったのだが、キャラを演じているのか、女優さんご本人の思いを話しているのか、途中でブレてしまったことで、中途半端な内容に終わってしまった。
その点、今回のTBS『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』では、完全に「撮影の裏側をバラす」という「裏バラス」に徹している点で、非常にクオリティの高い副音声に仕上がっている。
女子にとって、ある意味「永遠の憧れ」は「あの、男子のトークに交ざりたい」だ。異性のいない場所で、同性同士が他愛ないおしゃべりに興じている様は、互いに「禁断の場所」であり、「一度で良いから盗み聞きしたい」トークである。
「裏バラス」は、ドラマを見ている自分の隣で、まるで出演者の3人が「野郎トーク」を繰り広げているような錯覚に陥りそうになる。完全な「裏ネタ」「撮影中の暴露話」なので、途中で「ちょっと静かにしてよ、セリフが聞こえなくて、内容がまったく頭に入ってこないじゃない!」とツッコミたくなる。
でも、そういう「ツッコミを入れる私」がたまらなく快感で、幸せでもあるのだ。まさに、「裏バラス」は麻薬だ。当初の予定では、第5話と第6話限定の取り組みが、視聴者の熱烈なアンコールに応える形で、第8話にも帰ってきた。
第8話には、主演の小栗旬・生田斗真と進行役のムロツヨシに加えて、吉田羊も「参戦」したのだが、個人的には吉田抜きの純粋な「野郎トーク」が聞きたかった。吉田もそこは心得ていて、
「自分も『裏バラス』ファンだから、参加したくなかったのに、スタッフがどうしても出ろって言うから」
と語っている。
さて、小栗旬・生田斗真のファンには垂涎モノの「裏バラス」だが、お二人のファンでなくとも、ドラマ好きをワクワクさせる「裏ネタ」も満載だ。初めての「裏バラス」となった第5話では、序盤で足を拳銃で撃たれて負傷した竜哉(小栗旬)の芝居について、小栗本人が「この後の、姐さんに会うシーンで、どういう芝居をするかスタッフと話し合った」ことを語っている。
ヤクザが姐さんに面会する、サシで話すシーンなのだから、いつもは正座しているが、竜哉はこのとき、足を負傷しているので、正座は痛くてできないんじゃないか、では、どうするか、とかなり悩んで、相談した、と告白している。
結果、どういうシーンに仕上がったのか、その種明かしは、本編で、ということだ。数十分後の本編で、竜哉が姐さんと対峙するシーンは、ほんの1~2分なのだが、「たった1分、たった1シーンにも、これだけの思いをもって作られているのだ」と思うと、妙に感慨深く、忘れられないシーンとなってしまった。
また、イクオ(生田斗真)と竜哉(小栗旬)の二人が車内で会話をするシーンでは、このシーンの撮影秘話を語ってくれた。
画面は正面からのカット、運転席のイクオ側からの窓越しのカット、助手席の竜哉側からのカットが相互に組み合わされた映像に仕上がっている。助手席の竜哉(小栗)はタバコを吸っている。窓を閉めたまま車内でタバコを吸うのは、非常に煙かったと苦笑しながら回顧する小栗と生田。小栗が語る。
「これ、見てる皆さんはわかんないと思うんですけど、こういうのをカットバックっていうんですけどね。この時にはね、(窓は閉まってる設定なんだけど)窓を片方ずつね、開けて撮ってるんですよ。そうじゃないとね、窓to窓で撮ると画面にフィルターがかかってしまいますから。」
進行役のムロツヨシが合いの手を入れる。
「撮影の仕方まで教えてくれる!」
「うん。でもこれ、正面からのショットっていうのは、窓閉まってる。だからね、窓開いてる時はね、煙の流れがね、窓開いてるからそっちの方に行っちゃうんですよ。」
なるほど、そんなことを言われると、録画ビデオを巻き戻して、煙の流れまでチェックしたくなる。小栗が手に持っているタバコの長さまでチェックしてしまったけれど、きちんと辻褄合っていた。
さすがは「役者バカ」と呼ばれる小栗。芸が細かい。このワンシーンを撮るのにも、カメラの位置を変えて、同じ芝居を何度もするのか、と、あらためてドラマ作りの大変さを慮る。
完成披露の記者会見などで、役者の方々が「あのシーンでは、感情を持続させるのがタイヘンだった」とお話されているのを聞いても、「一つのシーンに『感情の持続』ってどういうことだろう?」と疑問に思っていたのだが、今回の二人の暴露話を聞いて腑に落ちた。
同じシーンを、カメラの位置を変えて何度も撮り直すから、「感情の持続」が必要であったのだ。何度も同じ演技をして、何度も撮って、それをつないで一つのシーンが完成する。考えてみれば、当たり前なのだけれど、ふだん視聴するだけの私たちは、制作側のその努力に思いが至らない。
「裏バラス」は、プロの仕事に迫る『プロフェッショナル~仕事の流儀~』の側面も持っていて、おもしろい。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
困窮家庭の高3女子が年上男性とホテルへ…場面カット公開 『素晴らしき哉、先生!』今夜第5話
ORICON NEWS / 2024年9月15日 17時0分
-
【素晴らしき哉、先生! 第4話】りお、生徒が迷惑動画投稿で謝罪対応に追われる
モデルプレス / 2024年9月8日 8時0分
-
『素晴らしき哉、先生!』“元ヤクザの保護者”「うまいなー誰やろう」と話題 永井大どす声→涙の大熱演
ORICON NEWS / 2024年9月2日 21時13分
-
“教師だって人間なんだよ!”理不尽な教育現場を舞台に生田絵梨花演じる新米高校教師が奮闘する「素晴らしき哉、先生!」の公式本が10月3日に発売決定!!
PR TIMES / 2024年8月30日 18時15分
-
生田絵梨花、8分間の“修羅場”が話題 「ドラマ史に残る1シーン1カット」の大熱演→OK後の姿公開
ORICON NEWS / 2024年8月28日 18時10分
ランキング
-
1「NHKの壁をマジ蹴り」黒柳徹子、ドラマ監督に言われたひと言で“怒り”も人生の教訓学ぶ
スポーツ報知 / 2024年9月21日 6時24分
-
2Number_i コンサート入場時に本人確認実施へ 転売絶えず…滝沢氏「厳格化する事を決めました」
スポニチアネックス / 2024年9月20日 23時7分
-
3「ジャングルポケット」斉藤慎二 体調不良で活動休止発表、本人が申し入れ ぜんそく悪化で入院していた
スポニチアネックス / 2024年9月20日 20時4分
-
440年目で初!「さんまのまんま」マスコットキャラがしゃべった!“正体”も明かされてネット衝撃
スポニチアネックス / 2024年9月20日 21時21分
-
5「犯罪者でも…」不倫“継続”報道の斉藤由貴が19歳で語っていた特殊な恋愛体質
週刊女性PRIME / 2024年9月21日 7時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください