<「本来自分にあるはずだと思う才能」って何?>有能なテレビ番組ディレクターにはどうやってなるのか
メディアゴン / 2015年3月18日 2時55分
高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]
* * *
テレビ業界を目指してやってきた若者が、何の悩みもないまま有能なディレクターの育っていく、というようなことはまずない。一度は辞めようかと悩むものだ。辞めるというのは、会社を辞めてどこかに移るか、フリーになって個人でやろうか、などという選択肢も含まれる。
だからといって悩んだ人がこの業界から足を洗ってしまう、ということでもない。年月が経つうちに悩んでいられるほど暇ではない現実に追い立てられ、問いを忘れてしまうか、辞めた後の現実を知るにつれ悩むことをあきらめるというようなことがあるかもしれない。
辞めるかどうか悩む人は結構いても、結局、悩みは長続きしない。これまではそうだった。
かつて、やはり辞めるか悩んでいた人間がいた。勿論、彼は辞めなかった。だから今もこの業界にいる。今はその頃考えもしなかった音楽ものを中心に番組を作っている。だが、その頃の悩みが薄っぺらであった、というわけではないだろう。本当に悩んでみたのだろうと思う。
悩みは「もっと自分に向いている番組があるはずだ」というものだった。大体、テレビ屋は忙しい。本来自分がやるはずだと思っていることではないものをやらされる。それが続くと、自分の才能が擦り切れていくように思ってしまう。たぶんこういうことなのだろう。
だが、周りから見れば、その人が「本来、自分にあるはずだと思っている才能」とやらにお目にかかっていない。お目にかかっていないから、擦り切れるも何もない。
「何言ってるの? やりたいことがあれば企画書にでもまとめてみろよ」
ということになる。
彼はその悩みを訴えた。そして、
「辞めないほうが良いと思うよ」
と説得されてそのまま仕事を続けて十数年経った。今、ここで辞めなかった方が良いか、辞めた方が良いかという設問をしたいわけではない。「本来自分にあるはずだと思う才能」について考えているのだ。それができない「擦り切れ感」について考えたい。
今。彼は音楽番組をやっている。では自分が才能を生かす番組、本来やりたかったのが、この番組だったのだろうか? ただ、「辞めたい」と言いだした時、音楽番組の話は出なかった。ということは、「辞めてまでやりたい番組」とは音楽番組だったとも思えない。
他に何かあったのか? それは何だったのか?
テレビの業界に入った若者が一人前の制作マンになるにはどういうプロセスを経るのだろうか? はじめから有望な若者が入ってきて、その若者がスムーズに有能な制作マンになっていくというようなことは実は少ない。
運もあるだろう、関心のあるテーマを担当し興味を持ち、それが評価されるというようなこともあるだろう。性格の合う人が評価してくれてうまく行くというようなこともあるだろう。
カリキュラムがその若者向けに作られているというようなことはない。切磋琢磨し、生き残ったものが番組を作っていくのだ。そんな乱暴な方法論しかなかった。
今、そんな彼も周囲からは頼られている。音楽番組は専門職である。専門知識や専門の人間関係が必要である。たぶんもう手放すことは無いだろう。かつてより忙しい。だが「擦り切れ感」もなさそうだ。
ポイントはこの「頼られる」ということにありそうだ。「頼られる」ということが何より大事なのだ。そこに達成感がある。頼られていれば「擦り切れ感」はなくなる。
経験と自信は人を強くする。好きなことでも、文句ばかり言われ続ければ本来やりたいことになっていかない。本来やりたいこと、それは頼られる立場で番組を作ることなのだ。それが何より楽しい。経験はどんどん人を変えていく。
だからテレビ番組作りは楽しいのだ。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
「若い頃はウソばっかついてた」 仕事の相談をしなかった佐久間宣行が、“おじさん”になって相談を受けまくるようになったワケ
集英社オンライン / 2024年11月20日 11時0分
-
結局、会社員とフリーランスのどちらがいいのか。フリーになって3年半の佐久間宣行が辿り着いた結論 「衝動の解像度をあげるのが大事」
集英社オンライン / 2024年11月20日 11時0分
-
ずん飯尾 芸人引退覚悟した親友・ウド鈴木とかわした約束「今度は俺に付き合ってくれないか?って」
スポニチアネックス / 2024年11月16日 18時0分
-
「聞いてもらえるまで20年かかった」女性プロデューサーが語る、テレビでハラスメントが起きる理由
CREA WEB / 2024年11月7日 17時0分
-
Travis Japan松田元太、初の単独CM出演 個性派キャラ“DJシャンプー”に変身でドッキリ疑う「“ガチ”でした(笑)」
ORICON NEWS / 2024年10月30日 4時0分
ランキング
-
1池田エライザ「海に眠るダイヤモンド」の見惚れるキスシーンが大絶賛!好感度女優に急上昇
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月27日 9時26分
-
2【独自】「大きいサイズがない」梅宮アンナに聞く、乳がん術後の下着事情と“上がらない”右腕
週刊女性PRIME / 2024年11月27日 9時0分
-
3ドランク塚地「白内障」を公表 手術へ 数カ月前から「モヤがかかったように見えにくくなり…」
スポニチアネックス / 2024年11月27日 9時9分
-
4森且行、SMAP5人へ「僕の宝物」思い明かす!伝説の断髪式秘話も
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年11月27日 7時7分
-
5「“生首”が売ってる」アニメ専門店の大谷翔平珍グッズ、“誰が買うんだよ”とじわじわ人気に
週刊女性PRIME / 2024年11月27日 12時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください